コロナの影響で飲食事業の売上が前年と比べて5割以上ダウン
「これ以上コロナが続いたら会社が潰れてしまう──。」
連日、メディアでは飲食店の悲痛な声が報道されています。東京商工リサーチは、居酒屋を運営する大手13社の1年間の店舗数が、2020年12月末で前年同期から12.5パーセント減少したと発表しました。新型コロナウイルスの感染拡大から1年以上が経ちますが、なかでも酒類を提供する居酒屋業態は予断を許さない状況が続いています。
神奈川県で2店舗の和食居酒屋を運営する「有限会社ライスアイランド」もまた、新型コロナウイルスの影響を受けている飲食企業のひとつです。
「コロナ前は3店舗ありましたが、コロナの影響で1店舗は2020年で閉めたんです。駅近にあるもう1店舗も、緊急事態宣言が発令された2020年4月、前年に比べて8割ほど売上が落ちました。宣言が解除されて少しは戻りましたが、もともと売上のほとんどが宴会で、その需要がまるっとなくなったので、2021年3月現在も前年より5~6割は売上が減っている状況ですね」(飯嶋オーナー)
こう悲痛な声を上げるのは、ライスアイランドの代表を務める飯嶋オーナー。20年以上も飲食事業を経営してきた彼ですが、コロナ禍の悲惨な状況を打破するため、まったくの異業種である「買取専門店おたからや」のフランチャイズに加盟しました。
コロナ禍真っ只中の2020年9月に1号店となる「買取専門店おたからや中原店」をオープンさせ、2021年4月には2号店をオープン予定。異業種での参入にもかかわらず、苦戦にあえぐ飲食事業とは対照的すぎるほどに好調をキープしています。
明暗がくっきり分かれる結果となった飲食店と買取専門店、両者にはどんな違いがあるのでしょうか。
「これ以上はリスクを背負えない」とフランチャイズでの事業多角化を決意
遡ること2020年6月。新型コロナウイルスの影響で売上が回復しない状況に危機を感じていた飯嶋オーナー。このままだと会社が潰れてしまう──そう考え、新たな事業を検討しているときに出会ったのが「買取専門店おたからや」でした。
「携帯をイジっているときにたまたま見つけたのが『おたからや』のフランチャイズ募集の広告でした。コロナの影響で飲食事業の売上が大幅に落ちているので、オリジナルの事業を立ち上げるなんて冒険的なことはできない。それならリスクを抑えるためにフランチャイズに加盟するのがベストかな、と思いました」(飯嶋オーナー)
これまで20年以上にもわたり飲食事業を展開してきた飯嶋オーナーですが、最初から飲食以外の事業を検討していたと語ります。
「飲食業は人件費や原価の割合が大きいのがネックでした。また、飲食は専門職種でもあるので、どの業界でも人手不足が叫ばれるなか、人材を確保するのは簡単なことではありません。一方、買取専門店は1人でも運営できますし、飲食と違って仕入れる必要もありません。まったくの異業種ですが、おたからやは研修などのシステムもしっかりしているので、経験がなくともなんとかなると思って加盟しました」(飯嶋オーナー)
飯嶋オーナーが「買取専門店おたからや」に加盟した理由はこれだけではありません。開業資金の低さもまた、魅力を感じたポイントの1つです。
「飲食店だと1店舗オープンするのに、厨房機器から給排水、エアコン工事などで何千万円という資金が必要です。でも、おたからやならとくに大きな工事を必要とすることなく開業できる。たとえば、不動産屋さんとか塾などの教室の跡地とかでしたら、ちょっと工事するだけでオープンできますからね。とはいえ、この中原店はもともとラーメン店だった物件で、かなり大きな工事をしたので、開業資金としては1200~1300万円ほどかかりました」(飯嶋オーナー)
2ヶ月目の粗利は700万円!継続的に損益分岐点を優に超える粗利を確保
そうして2020年9月にオープンしたのが、「買取専門店おたからや中原店」です。コロナ禍まっただ中、かつまったくの異業種でのチャレンジ。収益は順調に上げることができたのでしょうか。
「9月28日にオープンして、最初の3日間で粗利は60万円ほど。それ以降も、10月は700万円、11月は450万円くらい、12月は570万円でした。損益分岐点が200万円なので、十分な収益を確保できています」(飯嶋オーナー)
苦戦を強いられている飲食事業とは違い、順調すぎるほどの滑り出しを見せている「買取専門店おたからや中原店」。ですが、オープン当初は失敗も少なくなかったと振り返ります。
「どこの店舗もそうだと思いますが、最初はまだノウハウが身についてないので買い逃しも多かったですね。オープンしてすぐのころに金貨をお持ちいただいたお客さまがいらっしゃって、その方は『自宅にまだいっぱい金貨があるんだ』とおっしゃっていたんです。こちらとしては安く買い取りたくて値段を提示したら、そのときは買い取らせていただけましたが、2回目以降来店されることはありませんでした。どこの店舗なら高く買い取ってくれるか見極めていたんでしょうね。何事も経験なので、こういったことも失敗を繰り返しながら成長していけたらと思います」(飯嶋オーナー)
そして「買取専門店おたからや」のフランチャイズ本部では、開業前研修はもちろん、オープン後も接客中に分からないことがあれば、オンラインや電話での相談も受け付けています。
「今日も高級ブランドの腕時計をお持ちいただいたお客さまがいらっしゃったんです。査定額とお客さまの希望の額に差があったので、本部に電話して相談しました。お客さまの希望額よりかなり下がりましたが、本部に相談した甲斐もあり、最終的には買い取らせていただきました」(飯嶋オーナー)
飲食事業とは比べものにならないほどの利益率が魅力の1つ
「買取専門店おたからや中原店」がオープンしてからおよそ半年。十分な手応えはもちろん、大きなやりがいを感じているといいます。
「飲食業の場合はおいしい料理を提供し、お客さまから『おいしかったよ』と言っていただくのがやりがいです。これが嬉しくて20年以上も飲食事業を続けてこれました。買取専門店の場合は、モノを売ってもらう側なんですよね。こちらが買い取らせていただき、それに対して『ありがとう』『こんな金額で買い取ってもらえて嬉しい』などと納得して帰っていただけます。接客トークもまったく違うので日々勉強ですが、喜んでいただけるという点では飲食店も買取専門店も同じですね」(飯嶋オーナー)
一方、利益率については、飲食事業と買取専門店では大きく異なると話します。
「飲食店の場合は原価率がだいたい決まってますよね。人件費や家賃、光熱費を差し引いたら利益は10パーセントにも満たないぐらい。なので、1万円の売上でも利益は1000円いくかいかないか程度です。ですが、買取専門店の場合は切手やテレホンカードだけでも1500円の利益になったりします。飲食店とは比べものにならないくらい、買取専門店の利益率は高いですね」(飯嶋オーナー)
1号店のオープンからまだ1年も経っていませんが、2021年4月には3キロほど離れた大型スーパーの一角に2号店をオープンする予定です。
「他社も含め、最近は買取専門店が増えてますよね。なので、ほかの買取ブランドに出店されないように近隣はある程度確保しておきたいなって。1号店と商圏が被るので2号店にも分散するのは承知のうえですが、2店舗それぞれで成長していければと考えています」(飯嶋オーナー)
飲食事業は現状をキープしつつ、おたからや事業は積極的に多店舗展開を進める飯嶋オーナー。飲食事業に続く収益の柱を育て、これからも会社を発展させていきます。
※掲載情報は取材当時のものです。