フランチャイズを知り尽くした男がフランチャイズ加盟で大失敗
「実は『おたからや』に加盟する前に飲食と整体のふたつのフランチャイズに加盟していて。1年も経たないうちに飲食は損切りで閉店し、フランチャイズ契約を解除。もうひとつの整体は運営本部が倒産してしまったんです」(大畑オーナー)
壮絶な過去を平然と語るのは、現在、岐阜県と愛知県で4店舗の買取専門店「おたからや」を運営している大畑オーナー。東洋企業株式会社の代表取締役を務める人物でもあります。
「東洋企業は祖父の代から続く会社で、わたしで3代目になります。もともとは不動産事業を展開していた会社ですが、2代目の父が亡くなり、数年前からわたしが本格的に経営に加わりました。代替わりした当時は従業員もいない会社だったので、リスタートという意味で、新たな事業を検討しはじめたんです」(大畑オーナー)
そんな大畑オーナーの前職は、レンタル事業などを手掛ける大手フランチャイズ本部の社員。現場での店長経験はもちろん、SV(スーパーバイザー)として10年以上も勤め上げた、いわばフランチャイズのプロ。フランチャイズのメリットもデメリットも知り尽くした人物です。
「フランチャイズのメリットはノウハウを提供してもらえるので未経験でもスタートできる点。あと、看板を借りられるので、開業してすぐに集客が見込めるなどもメリットのひとつです。一方、デメリットは対価としてロイヤリティを支払うところ。あとは、あくまでもフランチャイズなので、本部が決めたルール内で営業しないといけないのもデメリットかもしれませんね」(大畑オーナー)
これらを踏まえ、「新たに事業をはじめるほどの特筆したスキルがない」という理由で、フランチャイズ加盟を検討した大畑オーナー。そこでまずターゲットとなったのが「飲食」と「整体」のふたつのフランチャイズでした。
「飲食は話題性のあるブランドだったのもあり、なんとなく『いけるんじゃないか』って思って加盟することにしました。同時に、整体のフランチャイズにも加盟し、この2事業で継いだ会社をリスタートする形になりました」(大畑オーナー)
総額6000万円ほどの初期投資をかけ、2019年の夏前ごろに新たなスタートを切った大畑オーナー。しかし、行く手を阻む大きな困難が彼の前に次々と立ちはだかるのです。
現状の市場の盛り上がりはもちろん、将来性を踏まえて買取専門店を検討
「飲食はコロナ前から売上が落ちていたこともあり、損切りという意味でコロナが長引くと分かった時点で早めにフランチャイズ契約を解除しました。整体のほうも同じくらいのタイミングで本部が倒産してしまって……。そのまま自分たちでノウハウを確立させて営業を続けることもできましたが、こちらも損切りしたほうが良いと判断し、お店を畳むことにしました」(大畑オーナー)
意気揚々とリスタートさせた大畑オーナーでしたが、コロナなどを理由に万事休す……。加盟から1年も経たずにふたつの事業が撤退に追いやられてしまったのです。
そこで再度、新たな気持ちでフランチャイズビジネスをリサーチ。そこで出会ったのが買取専門店「おたからや」でした。
「失敗を踏まえ、リスクを抑えるために出店コストの安さは重要視しました。また、わたし一人でやっていくなら別ですが、すでに社員を雇っていたので、複数店舗展開することを前提に、小さい規模でどんどん出店できるような業態で探しました」(大畑オーナー)
ハウスクリーニングや学習塾など、この条件に当てはまるフランチャイズの業態は少なくありません。しかし、そのなかでも買取専門店に的を絞ったのには理由がありました。
「買取専門店はすでにある程度のマーケットがあって、さらには現在進行形で成長しているのが大きかったです。あと一番は今後の成長性ですね。買取専門店のメインターゲットは高齢者で、今後、ますます高齢化が進むということは、よりマーケットが拡大するはずだと思ったんです。今だけでなく、将来性も踏まえて買取専門店に焦点を絞りました」(大畑オーナー)
大畑オーナーが言うように、リユース市場は右肩上がりで成長中です。リサイクル通信が2019年に発表した推計によると、2010年には1.1兆円だったリユース市場の規模は、2018年には2兆円を突破。2022年には3兆円を超える規模にまで拡大すると予想されています。
2020年頃からは新型コロナウイルスによる将来への不安から、不用品を現金化したいというニーズが急増。過去最高益の利益を叩き出している買取専門店も多く、大きな注目を浴びているビジネスなのです。
しかし、「おたからや」のように20年近く続く老舗から、ここ何年かで立ち上がった新興店まで、多くのブランドがひしめき合う買取専門店。フランチャイズの酸いも甘いも知り尽くした彼は、なぜ「おたからや」を選び、加盟したのでしょうか。
フランチャイズ加盟から9ヶ月で4店舗の「おたからや」をオープン
「ほかの買取専門店のフランチャイズもいろいろと比較しました。なかでも『おたからや』は、出店コストの安さはもちろんですが、出店ペースがほかよりも圧倒的に早いんです。加盟する前からスピード感のある多店舗展開を見据えていたので、スピード感が合わないと計画が崩れてしまう。なかにはスピード感が合わずに候補から外した本部もあった一方で、『おたからや』なら計画通りに出店できそうだったので加盟することにしました」(大畑オーナー)
そうして2020年3月に買取専門店「おたからや」のフランチャイズに加盟。3ヶ月後の6月には、「おたからやイオンモール大垣店」と「おたからやヨシヅヤ平和店」の2店舗を同時にオープンさせるのです。
「私と、もともと採用していた社員を含めて5名でのスタートだったので、1店舗だと人件費の割合が多くなってしまう。ちょうど本部からこのふたつの物件をご紹介いただいたので、『どちらもやらせてください』とお願いし、2店舗を同時にオープンさせました。本来は2020年4月にオープンする予定だったんですが、緊急事態宣言が発令されてしまって……。なので、6月のオープンになってしまいました」(大畑オーナー)
コロナ禍ということもあり、少々の不安があるなかオープンすると、予想以上の来客数を記録。「おたからやイオンモール大垣店」に至っては、月450万円の粗利目標に対し、2021年3月以外は目標を達成。なかには、1000万円の粗利を叩き出す月もあったと言います。
「イオンモール大垣店では、平均すると月700~800万円くらいの粗利が出ています。目標が月450万円なので1.5倍以上です」(大畑オーナー)
大畑オーナーの勢いは衰えることなく、2020年12月には3号店の「おたからやザ・ビッグエクストラ池田店」を、2021年2月には「おたからやヨシヅヤJR蟹江駅前店」を立て続けにオープン。当初から多店舗展開を見据えていたとはいえ、2020年6月に「おたからや」のフランチャイズに加盟してから、わずか9ヶ月で4店舗の「おたからや」をオープンさせました。
勘のいい人はすでにお気付きかもしれませんが、オープンしている物件はすべて商業施設内。実は、ここに大畑オーナーのあるこだわりがありました。
競合対策は「立地選定」と「日々の接客」にあり
「一等立地にある商業施設にしか出店しないと決めているんです。というのも、近くに競合がオープンしたら、少なからず売上に影響があります。でも、立地さえ良ければ選んでいただける確率が上がりますよね。もし、同じエリアに複数の商業施設があるなら、その地域で年商が一番高い商業施設にオープンしようと考えて動いています」(大畑オーナー)
市場の盛り上がりを受け、次々と買取専門店が出店している状況です。現時点で競合店が近くになくても、繁盛ぶりを聞きつけて近隣に出店されてしまう可能性はゼロではありません。それを踏まえ、一等立地の商業施設に絞って出店しているのです。
競合を見据えた戦略は立地選びだけではありません。日々の接客もまた、競合対策のひとつなのです。
「仮に立地が良くても、接客でご満足いただけなければ少しぐらい遠くても接客がいい店舗に行きますよね。なので弊社は、スタッフ同士で接客のロールプレイングをするなどし、日頃から接客力を高めるようにしています。また、店舗で働く営業スタッフには接客に専念してスキルを高めてもらえるように役割分担をきちんと行ない、経理作業などはすべて経理スタッフに任せているんです」(大畑オーナー)
たとえ会社として接客に力を入れていても、それを全スタッフが理解していないと実現できません。しかし、普段からスタッフの幸せを何よりも重要視し、経営している大畑オーナーだからこそスタッフが彼の思いを理解して付いてきてくれているのでしょう。
まだ成熟しきっていないリユース市場ゆえ、いまが好調でも今後どうなるか分からないのが難しいところ。しかし、立地選定はもちろん日頃の接客などを通じ、来たるべき日に備えているという大畑オーナー。さらに、今後は「おたからや」以外の事業も展開することで、どんな状況になっても太刀打ちできる組織体制を目指していく予定です。
※掲載情報は取材当時のものです。