ローリスクの事業を求めて47歳のときに独立を決意
浅井が「トータルリペア」に加盟したのは2012年11月。当時、47歳だった彼がフランチャイズでの独立を意識しはじめた理由——それは、ハードワークだった前職のハイウェイパトロール時代まで遡ります。
自動車関係の専門学校を卒業後、整備士として社会人の門戸を叩いた浅井。そこで4年勤めたのち、とある自動車教習所に転職。教官として4年勤め、30歳のときに「ハイウェイパトロール」としてのキャリアを歩むことになるのです。これが浅井の人生を180度変える選択になるとは、当時の彼は知る由もありません。
「主な業務内容は、高速道路上にある落下物の撤去作業。廃材を運ぶトラックから落下した角材はもちろん、冷蔵庫などの引越し荷物、自転車などが落ちていることもありました」(浅井)
高速道路上で事故が起きれば真っ先に駆けつけるのもハイウェイパトロールの役目。事故現場を保持するために交通規制を張るだけでなく、事故聴取から調書の作成、事故処理まで、まるで警察のような業務内容です。
「365日24時間パトロールをしないといけないので、2交代制の勤務体制。雨天時は事故が10倍にも増えるんですが、その場合は休憩をとることもできないくらい多忙を強いられていましたね。人様の命を守るというやりがいのある仕事とはいえ、二次災害に巻き込まれることも珍しくない危険な現場なので、常に命懸けでした」(浅井)
危険と隣り合わせの業務内容でありながら、時にはぶっ続けで任務を遂行しなければならない過酷な労働環境から、次なるキャリアを模索しはじめた浅井。その時に背中を押してくれたのは他でもない奥さんでした。
「奥さんに退職したいと伝えたら『その方がいいかもね』と。2級整備士の資格を持っているので、資格を活かせるカタチで独立したいと考えていました。中古車の販売店なども漠然と検討しましたが、在庫を持つことでリスクが伴います。業界的に車は生もの扱いなので、売れ残って長期在庫になれば損をする可能性が高くなるんです。なので、在庫を持たず失敗しにくい事業をしたいな、と」(浅井)
まるでマジックのよう!? トータルリペアの実際の作業に衝撃を受けて加盟
次なる活躍の場を求めて、インターネットで「独立」や「開業」などの検索結果を眺める日々。しかし、いくら情報を調べても「これだ!」と思える事業アイデアは出てきません……。
そんな彼が次に目をつけたのがフランチャイズでの独立。そこで、東京都内で開催されていた「フランチャイズフェア」に足を運ぶことにしたのです。塾や飲食など、情報収集としてあらゆる業種の話を聞きまわっていた浅井に転機が訪れます。
「現在加盟しているトータルリペアも出展していたんですが、レザーシートをカッターで切った後、元通りにくっつける修理のデモンストレーションを目の当たりにしたんです。素人目で見ると、まるでマジックのような出来事に衝撃を受けました。詳しく話を聞いてみると、トータルリペア自体は資格不要とのことですが整備士の資格も活かせるし、何より、エコが叫ばれているこの時代に需要がある仕事だな、と」(浅井)
とはいえ、決して手先が器用とは言えない彼にとって、デモンストレーションで目にした技術を習得できるか一抹の不安がよぎります。
「小中学生のころは図工の成績が中の下で平均以下。絵を描くのも得意ではないので、あれだけの技術を自分で習得できるか不安でした。でも、手に職とは言え不器用な方でも大丈夫。実際に加盟しているのは異業種かつ未経験の方ばかりで、中には主婦の方もいるということでした。それなら自分にもできるかもしれないと思ったんです」(浅井)
未経験でもリペア技術を習得できる技術研修がある。フランチャイズで独立するのであればトータルリペアがいいんじゃないか——そう考えて帰路についた浅井。その後、トータルリペアを超える独立の選択肢を模索しましたが、トータルリペア以上の独立アイデアは見つかりませんでした。
「正直、フェアに行く前はフランチャイズ自体にあまりポジティブな印象はありませんでした。稼げばその分だけ本部に搾取されるんだろう、ブラックなんだろう、と。でも話を聞いたらそんなことはなく、研修や講習が充実しているだけでなく、加盟金やロイヤリティが安い。しかも、自動車のリペア事業が盛んなアメリカで生まれて40年以上の実績を誇るだけでなく、世界48カ国で事業展開している確かな技術であることから、安心して独立できると感じて加盟させていただきました」(浅井)
未経験の飛び込み営業にも半年で慣れ、開業から1年で目標の売上を達成
2012年11月、神奈川県相模原市内に「トータルリペア」をオープンさせた浅井。本来、事務所などのいわゆる特定の箱を構えることなく車1台で開業できるのがトータルリペアのメリットのひとつ。しかし、車が2台も置けるシャッター完備のガレージ兼作業場を構えての開業でした。
開業当初から、無店舗開業というメリットを捨ててこの選択をしたのにはある理由がありました。
「車関係の事業をしている友人から『車などを預かった時に保管できる場所があれば強みになる』というアドバイスをもらったんです。固定費がかかるのでリスクになりかねませんが、お客さまからお預かりする車やホイールなどを雨ざらしにせずに済む。しかも、365日24時間同じ環境下で作業ができるのはメリットにつながるな、と」(浅井)
こうして作業場を構えて意気揚々と開業を迎えた浅井に大きな壁が立ちはだかります。そう、新規の顧客開拓です。これまでハイウェイパトロールをはじめ3社を渡り歩いてきた彼でしたが、営業は未知の分野。トータルリペアの本部が開催した開業前研修で営業研修を受講したものの、営業マンとしてのマインドが不足し、開業当初は苦戦を強いられることになるのです。
「中古車ショップを中心に飛び込み営業をスタートさせました。開業前研修で『パンフレットだけおいてくればOK。2〜3回足を運べばそのうち話を聞いてくれる』と教わっていたのでその通りにやったんですが、営業に慣れていないので足がなかなか進まないんですよ。お店の中の様子を遠目に伺いながら何度も素通りし、気持ちを整えてからようやく中に入っていける、みたいな(笑)。ヘタしたら2〜3回素通りすることもしばしばでしたね」(浅井)
それでも、開業から1〜2ヶ月間は1日およそ20件の飛び込み営業をし、少しずつ新規の顧客を増やしていった浅井。3ヶ月目からは納品のついでに数件の営業をして帰ってくる程度まで減りました。
「半年くらいしてようやく営業にも慣れ、リピートしてくれるお客さまが増えていきました。そして、開業から1年後には目標にしていた売上を安定して超えるなど、軌道に乗ったという感じでした。前職と違って時間配分も自分で決められて、頑張れば頑張った分だけ売上につながるのも、トータルリペアのリペア事業の魅力なんですよね」(浅井)
新人加盟者と切磋琢磨することで、お互いに技術を磨いていく
開業から3年後には前職の年収を超え、5年が経過した現在、大手自動車ディーラーをはじめ50〜60件の顧客と取引をしています。最近では、そんな浅井を頼って新人加盟者が毎日のように彼のもとを訪れるまでになりました。
「近隣で開業する加盟者がごあいさつに来てくれるんです。その後、だいたい2ヶ月くらいはリペア技術を覚えるためにうちで一緒に働いていきますよ。半日はそれぞれ自分のエリアの営業活動をし、半日はOJTのような感じで教えてますね」(浅井)
浅井も一加盟者でありながら、新人加盟者の研修をする日々——これは決してトータルリペアのフランチャイズ本部から依頼されていることではありません。では一体、なぜ彼は新人加盟者の面倒を見ているような状態になっているのでしょうか?
「自分自身、開業当初は技術力で苦労をした経験があります。慣れない営業をしてせっかくご依頼いただいた仕事も、お客さまにご満足いただかなければリピートはない。過去に何件もそれでお客さまを逃した経験があって……。自分もそうですが、開業当初は近隣の先輩加盟者さんに教えてもらって技術を磨いていったんです。今度は自分が教える番かな、と」(浅井)
その結果、新人加盟者たちも早い段階でリピートにつながっているだけでなく、浅井自身も自分の技術をアウトプットすることで常に気づきを得るなど、相乗効果につながっているのです。
トータルリペアのフランチャイズ加盟のメリットのひとつである1人で独立開業を果たした浅井。しかし、将来的には今よりも広い店舗を構えて従業員を雇うなど、事業を大きくしていくことを目標にしているといいます。そのモチベーションの原動力は日々お客さまからいただく「ありがとう」のひと言——前職の過酷な労働環境から抜け出した浅井は、これからもお客さまの満足のため、そして、修理してリユースするエコをけん引するために技術を磨き続けます。
※掲載情報は取材当時のものです。