飲食とは無縁の会社が加盟したのは、過去に飲食店経営をした経験があるから
サクサクのパン粉のなかに、ミディアムレアに仕上がったジューシーな牛肉が絶品な牛カツ。老若男女を問わず誰もがおいしく食べられる料理として、近年、大きな注目を集めています。
そんな牛カツブームをけん引しているのが、京都発の牛カツ専門店「京都勝牛」。パン粉を最小限まで細かく仕上げることで脂っこくなるのを防ぎ、わさび醤油であっさり食べるのが京都勝牛のスタイルです。
“揚げる→切る→盛り付ける→提供する”といった簡略なオペレーションなので、定食を提供するのに要する時間は3分以内。しかも客単価は平均1200〜1400円と高単価。坪月商で100万円を超える収益率のため、居抜き物件なら1年半、スケルトン物件でも2年半で初期投資をスピーディーに回収できるビジネスモデルで、FC展開を開始してから3年半で国内外に60店舗以上を数えるまで拡大しました。
そのフランチャイズ1号店として2015年12月に誕生したのが、大阪の観光名所・道頓堀のほど近くに位置する「京都勝牛 なんば千日前店」。この店舗を運営する「ADK株式会社」は、岐阜県に本社を構える不動産事業がメインの会社です。
「岐阜県と愛知県を中心に、不動産の買取り、リノベーション住宅の販売をメイン業務とする会社です」(安東)
飲食と関係のないADK株式会社が、なぜ「京都勝牛」に加盟したのでしょうか。そのきっかけは、代表を務める安東の過去の経歴まで遡ります。
「もう24年も前の話なんですけど、じつは、同級生とともに宮城県仙台市に韓国料理店を立ち上げた経験があるんです。当時は韓国料理をメインとする飲食店がほとんどなかったので、それなりに手応えを感じてスタートさせました」(安東)
とはいえ、当時はまだ20代そこそこで経験も浅く、はじめての飲食店経営ということもありあえなく4年で閉店せざるを得ない状況に……。
「深夜まで営業していたので、飲んだあとに訪れる方などもたくさんいて繁盛していたんですけど、オーナー業はもちろん、マネジメント、従業員管理、調理まですべてやっていたので労働力がついていかなかったんです。体力の限界を感じたので、閉めたほうがいいという判断を下しました」(安東)
不動産事業で起業を果たすも、うちに秘めていた「いずれは飲食に」という思い
飲食店経営者という肩書きを脱ぎ捨て、新たなキャリアで歩みはじめることを決意した安東。次なるフィールドに選んだのは、飲食関係ではなく、まったく異業種の不動産関係でした。
「当時はまだ30歳ということで、いろいろなことを経験したいと思っていました。それで、今のADKの業務と同じく、マンションをリフォームして再販する事業をメインにする会社に就職しました。時代背景もあって、当時は割安な物件が多かったんですよ。それを買い取ってお客さんが満足するようにリフォームすれば売れるっていうことが分かって。いずれは飲食業に戻りたいって思いもありながら、10年間勤めましたね」(安東)
そうして一人前の不動産営業パーソンとして成長した安東は、不動産会社を退職し、個人事業主として独立。会社員時代と同様の業務を個人でまっとうする道を選択します。そして3年の間に事業規模を拡大、社会的信用を得るという目的で2014年に「ADK株式会社」を立ち上げるのです。
その後もADK株式会社の代表取締役として不動産事業に専念してきた安東でしたが、「いずれは飲食店を経営したい」という思いが消えることはありませんでした。そんな彼に、最大の転機が訪れます。
「たまたま京都勝牛を展開する株式会社ゴリップの社長を知る知り合いがいて、飲食経営に興味があるという話をしたら『いいフランチャイズがあるよ』って紹介してもらいました。それが、京都勝牛だったんです。ただ、その時は京都勝牛どころか、フランチャイズの仕組みも詳しくは知らない状態でした」(安東)
実際に京都勝牛に連れていってもらった安東は、そこで大きな衝撃を受けることになるのです。
「まず何よりも、カツがおいしかったですね。妻も一緒に連れていったんですが、あっさりしているので女性でも食べやすいって喜んでいました。また、行列がものすごくって。お客さんの数はもちろんですが、回転率の速さにも圧倒されました。店の規模などから利益率などを自分で調べたところ、加盟したらおもしろいことになるんじゃないかなって思ったのが、京都勝牛に興味を持った最初のきっかけでした」(安東)
本部に魅力を感じて加盟を決意! 立地に不安を感じつつFC1号店を開業
そういった経緯もあり、より京都勝牛のことを知りたくなった安東は、2015年の夏頃フランチャイズ本部を構える株式会社ゴリップの京都本社を訪れます。
「いずれは飲食店を経営したいと思っていたものの、飲食店経営の経験があるからこそ、飲食店経営が簡単なものではないことを熟知していました。なので、揚げて、切って、盛り付けて、提供するといった京都勝牛のシンプルな業態がとても魅力的でしたね」(安東)
しかし、それ以上に魅力を感じたのは、ゴリップの自由な社風や、何かを期待せずにはいられない経営陣でした。
「自由にレイアウトされたオフィスで、足を踏み入れた瞬間になにかワクワクするような感覚がありましたね。また、成田さんをはじめ、ゴリップの役員や社長など、私よりも若くて柔軟なのか発想がおもしろいんですよ。フランチャイズオーナーという形で、京都勝牛のパートナーになったらなにかやってくれるんじゃないかな。賭けてみようかなってワクワクするような感じになったんですよね」(安東)
そうして2015年12月、フランチャイズ1号店としてオープンしたのが「京都勝牛 なんば千日前店」なのです。周辺には観光スポットとして有名な「道頓堀」や、グリコの看板で有名な「戎橋(えびすばし)」などが徒歩3分圏内。また、なにわ情緒の漂う「法善寺横丁」や、吉本新喜劇でおなじみの「なんばグランド花月」が徒歩5分の場所に位置するなど、観光スポットが満載の立地です。
「フランチャイズ1号店ということで、前例がなかったので少なからず不安もありましたが、場所の選定さえ間違わなければ絶対にうまくいく自信はありました。ただ、地場のお店が多く、新規でオープンした飲食店が次々に閉店していく激戦区だったので、周辺の方からは『1年も持たないんじゃないか』って言われてましたね。大阪の方は直接言ってくるので、萎縮しながらも頑張ろうって思ってました(笑)」(安東)
オープン当初から「京都勝牛 なんば千日前店」を見てきた株式会社ゴリップのFC事業部・店舗開発課課長の成田も、「立地に関しては、100%自信があったわけではなかった」と、当時を振り返ります。
「メインの通りではなく、1本奥まった通りにあるので、本部としても少なからず不安はありました。坪数もそこまで大きいところではなく、当時はそういった条件のなかでの成功事例がゴリップでも少なかったので……。ただ、周辺の相場よりも家賃を低くできたので、その辺のリスクは抑えられたとは思います」(成田)
オープンから3ヶ月目にして月商1600万円の快挙を成し遂げた理由とは?
そんな本部の不安も残るなかオープンした「京都勝牛 なんば千日前店」ですが、蓋を開けてみたら、そんな不安もなんのその。あまりの繁盛ぶりに、当初は想定していなかったある自体が発生するのです。
「オープン前はわたしが現場に入る想定はしていませんでした。でも、そうでもしないと追いつかないくらいにお客さんが殺到したんです。スタッフも全員総出だったんですが、みんな右も左も分からない状態。毎日、どうお店を回していけばいいかを無我夢中で考えてました。店長と一緒に夜も徹して仕込みをしたのも、今となってはいい思い出です(笑)」(安東)
当時は現在と仕入れのシステムが異なり、かたまりで届く肉を店舗側が捌くシステム。よって、仕込みの工程が多く、安東は店長とともに不眠不休で肉を捌いていたのです。もちろん、今は捌かれた肉が店舗に届くので、店舗側の負担も大幅に軽減されています。
無我夢中でおいしい牛カツを提供し続けた結果、本部の不安を尻目にオープンから3ヶ月目にして1600万円の売上を叩き出すのです。フランチャイズ本部の成田いわく、これは快挙ともいえる記録とのこと。
「京都駅前の一等立地にある『京都勝牛 京都駅前店(直営店)』は、オープンから7〜8ヶ月目でようやく1600万円という数字を出しました。正直、立地やキャパから考えて1200〜1300万円くらいを想定していたので、たった3ヶ月目にして超えてきたのは、純粋にすごいな、と。」(成田)
この「なんば千日前店」の成功理由を分析した成田は、フランチャイズ1号店であり、大阪1号店であったことも一因だといいます。
「現在は大阪にも10店舗ほどあるんですが、なんば千日前店が1号店ということで多くのお客さんにご来店いただけました。今はだいぶ分散してきていますね」(成田)
しかし、その後も昨対比を上回る売上を常にキープする「京都勝牛 なんば千日前店」。その留まることを知らない快進撃の一番の要因を成田はこう解説します。
「平均すると昨対比で105%〜110%くらい。京都勝牛の傾向としては、牛カツという商品自体が珍しいので、通常、オープンからしばらくは好調が続きます。その後、想定しているくらいの売上に落ち着いたのち、安定期に入る店舗もあれば、微増・微減する店舗もあります。それは店舗の努力次第で変わってきます。なんば千日前店に関しては、お客さんの層に合わせて貪欲に新しいメニューを導入しているのが功を奏しているとみています」(成田)
オーナーである安東自身、お客さんが殺到しているなかで機会損失をしたくないという思いが強く、フランチャイズ店舗のなかでもいち早く新メニューを導入しようとしているといいます。加盟店の経営に対する思いがこの快進撃を支えているのです。
「いずれは飲食店を経営したい」という思いを京都勝牛で叶えた現在、人員と立地的な部分でタイミングが合えば多店舗展開も見据えているという安東。今後は、牛カツが日常食の仲間入りを果たすことを目標に奔走し続けます。
※掲載情報は取材当時のものです。