脱毛サロンの利用者減少を見越してストックビジネスを選択
大分県津久見市——ここは、県庁所在地の大分市から30キロ以上も離れた場所にあり、人口はわずか1万8000人ほどの小さな市。そんな津久見市内にある住宅街の一角に、看板を大きく掲げるわけでもなくひっそりすぎるほど細々と「エックスモバイル」がオープンしました。
(軸丸)「もともと、ここは私が個人で鍼灸院をやっていたころに使っていた場所です。エックスモバイルには『公式ショップ出店型』『既存店舗活用出店型』『無店舗型』の3つの加盟タイプがあって、そのなかでも津久見店は、のぼりを掲げ、玄関に机と椅子を置いてあるだけなので、『無店舗型』に該当します」
運営するのは、大分県を中心に美肌脱毛専門店「パールプラス」を10店舗展開するフランチャイズ本部でもある株式会社MEコーポレーション。このストーリーの主役でもある軸丸真衣 代表が2014年8月に立ち上げた会社です。そんなMEコーポレーションがエックスモバイルに加盟したのは2018年1月のこと。
(軸丸)「美容関係に限定せず、事業を多角化したいとずっと考えてました。これからは従業員の人手不足はもちろん、脱毛サロンの利用者も減っていくと見込んでいます。なので、多角化するならストック型のビジネルモデルを探していて、そこで目をつけたのが格安スマホ事業でした。スマホなら今や誰もが持っていますし、格安スマホは急成長している業界ですからね。とはいっても私自身、格安スマホ自体は知ってましたが、世間一般が抱くのと同じように、電波が入らないとか、なんか怪しいみたいなイメージで(笑)」
一度の契約で継続的に収益をあげられるストックビジネスを理想としていた軸丸にとって、通信費の15%が継続手数料として入ってくるエックスモバイルのビジネスモデルはドンピシャでハマりました。さらに、既存事業の脱毛サロンとの相性も申し分なしだったといいます。
(軸丸)「女性は誰でもきれいになりたいんですよ。でも、お金がかかるので脱毛サロンに行けない人がいるのも事実。利用者もスマホ代が5000円くらい安くなれば、その浮いた分で脱毛サロンに通えるじゃないですか。加盟店も利用者もWin-Winだなって思いました」
格安スマホの認知度が低い地方都市だからこそチャンス
エックスモバイルの場合、大手キャリアと比較して月々のスマホ利用料金を3分の1程度まで節約できることも珍しくありません。今でこそ無店舗型で「エックスモバイル」を運営しているMEコーポレーションですが、将来的には脱毛サロンを利用した「既存店舗活用出店型」での出店も見据えています。
とはいえ、気になるのは出店するエリア。人口が1万8000人ほどしかいないだけでなく、格安スマホの認知度が決して高いとはいえない津久見市でスタートすることに不安はなかったのでしょうか?
(軸丸)「不安なんて一切ありませんでした。むしろ、都心部と違って格安スマホの認知度が低いので、それが逆にチャンスだ、と。一方で、脱毛サロンは店舗も多く認知度が高い。でも、それもチャンスなんですよ。認知度が高くても低くても、目の前にある話をチャンスに変えていくことが大事。エックスモバイルは通信料の1パーセントを発展途上国に寄付しているなど、社会貢献にもなる事業ということで、加盟を即決しました」
じつは、軸丸が加盟を決めた背景には、2017年9月に津久見市内を襲った大型の台風18号も関係しているといいます。
(軸丸)「本当にすごい台風で、津久見駅前にあるパールプラスも浸水の被害にあったんです。脱毛機器がすべてダメになってしまいましたが、スタッフの家族とかがみんな復旧作業を手伝いに来てくれて本当にありがたかったですね。津久見市内には大手3キャリアも含めて携帯ショップが1件もないので、エックスモバイルに加盟して格安スマホの普及をお手伝いすることで、地域の方々へ恩返しができればとも考えています」
そうして2018年1月にオープンした「エックスモバイル津久見店」。立地も決していい条件とは言えないながら、オープンからわずか半年足らずで月間の新規契約回線数は、エックスモバイルの300ほどある代理店(未稼働の代理店も含める)のなかで5本の指に入る成績をキープ。この快進撃は、軸丸と高校時代からの親友でもあり、エックスモバイル津久見店の店長でもある岩崎の存在なくして語れません。
親友を信じて脱毛サロンではなく、格安スマホの担当者に任命
そんな岩崎がMEコーポレーションに入社したのは2017年11月。エックスモバイル津久見店がオープンするわずか2ヶ月前のことでした。
(岩崎)「それまではずっと介護の仕事をしていました。軸丸が頑張っている姿をいつも近くで見てきたので、それに惹かれて一緒に働きたいなって思ったのが入社のきっかけですね」
入社した当初は、新しくオープンするパールプラスに配属される予定だった岩崎。しかし、エックスモバイルへの加盟が決定したことで、急きょエックスモバイルの担当者に抜てきされるのです。
(軸丸)「人手不足が加速するなかで、今後はAIなどの新しい技術で業務効率化が図られるようになるじゃないですか。そうなったときに求められるのが、人間らしいサービスだと思うんですよね。岩崎はこれまで介護の仕事をしてきたので、人の心を掴むコミュニケーションにはとても長けている。基本的にWeb販売が中心の格安スマホ業界において、エックスモバイルは対面販売にこだわっているので、彼女の得意な面を活かすことでより成長させられるかな、と」
今でこそ全国の代理店のなかでもトップ5を誇る月間契約数を記録していますが、オープン当初は分からないことの連続だったと岩崎は振り返ります。
(岩崎)「そもそも脱毛サロンのスタッフとして入社したつもりだったので、『スマホの販売なんてやりたくない! できない!』って言ったんですよ(笑)。でも、岩崎ならできる、分からないことがあったらそのときに考えればいいって言われて。本部の方に大分まで来ていただいて2日間ほど研修を受けたんですが、普段からあまりスマホを触る習慣がなかったので分からないことだらけでした。最初のころは毎日のように本部に連絡してサポートしていただいたのに、何回連絡しても丁寧に教えてくれて本当に助かりましたね」
格安スマホ×脱毛サロンで生まれる相乗効果
そうして、本部との二人三脚でようやくスタートラインに立ったエックスモバイル津久見店。普段は、ここの店舗での接客はもちろん、既存事業である脱毛サロンでエックスモバイルの紹介をしたり、地元スーパーの一角を借りてチラシを配ったり。複数からアプローチすることでエックスモバイルの認知度アップに向けて取り組んでいます。
その結果、少しずつ認知度が上がっていることを実感しているだけでなく、既存事業である脱毛サロンとの相乗効果も少なからず生じているといいます。
(岩崎)「パールプラスの場合、リピートして来ていただくことが多いので、お客さんとの間に信頼関係が生まれるんですよ。うちのスタッフはみんなエックスモバイルを利用しているので、信頼しているスタッフから『私たちもみんなエックスモバイルなので安心ですよ』って話をされると、『みんな変えてるなら……』ってなりますよね。そうなると契約にもつながりやすい。逆に、津久見店に来ていただいたお客さんに『うち、脱毛サロンもやってるんです』って話をしてパールプラスに来ていただくこともありますね」
担当者に抜てきされた当初こそモチベーションが上がらなかった岩崎ですが、現在は大きなやりがいを持って取り組んでいます。
(岩崎)「介護もそうですが、人と話をするのが好きなんですよね。そのなかで、スマホ代がこんなに安くなるんだって言ってもらえたり、ガラケーだった方がお孫さんとLINEできるようになって喜んでくれたり。あとは、古い携帯を使っていた方だと写真のきれいさに驚いてくれたり。『エックスモバイルに変えて良かった〜』って言ってもらえると嬉しいですね」
多くの人が行き交う都市部ではなく、人口わずか1万8000人しかいない津久見市においても不利に感じるどころか、トップ5の成績をキープできているのは、いったいどんな秘密があるのでしょうか?
(岩崎)「逆に、都市部だと人口が多い一方で、競合も多いですよね。そのなかでエックスモバイルを選んでもらわないといけない。津久見をはじめ地方都市は競合が少ないので、大手キャリアとの差額などを説明して納得していただければ変えてくれるんですよ。なので、最初は慣れてなくて苦戦した部分ももちろんありますが、慣れてくれば不利に感じるどころか、むしろ、地方のほうが有利なんじゃないですかね」
パールプラスでの販売も増やし、急速に契約数を増やすことで、津久見市内でのシェアを独占することを目標としているエックスモバイル津久見店。軸丸と岩崎の名コンビであれば、必ず現実のものとしてくれることでしょう。
※掲載情報は取材当時のものです。