家業のミニスーパーが止むを得ず閉店……

(沢田オーナー)「強みであるパンがおいしくなかったら、やっぱり業界一位のセブンイレブンさんにお客さんを取られちゃいますからね。『お弁当や肉まんがおいしいからセブンイレブンに行く』というのと同じように、『パンがおいしいからデイリーに行く』。そんな風に言われるようになるのが夢なんですよね」
そう語るのは、2009年にデイリーヤマザキのフランチャイズに加盟し、現在は「デイリーヤマザキ所沢下富店」と「デイリーヤマザキ西所沢駅前店」の2店舗を展開するオーナーの沢田。前職ではベーカリーカフェの店長を務めていましたが、もともとは実家の家業に従事していたといいます。
(沢田オーナー)「両親が八百屋を営んでたんですよ。中学2年生のときから長期休みのときなんかは一緒に市場に行くなどして仕事を手伝っていました。高校卒業後は、実家を出て3年間スーパーに住み込みで働かせてもらって修行の日々。長男ではなく次男なんですけど、父親も私が継ぐもんだと思ってたみたいですし、そういう運命だったんですかね(笑)」
そうして、3年間住み込みで働いた経験をもとに、家業の八百屋で店長として働きはじめた沢田。家業を野菜中心の八百屋からミニスーパー形式に改装します。
(沢田オーナー)「いまから38年前のことですかね。それで、肉と魚、野菜の生鮮3品を取り揃えるミニスーパーに業容を拡大させました」
しかし、改装から12年が経った34歳のときに家業を畳むことになるのです。
(沢田オーナー)「時代の流れですよね。まわりはほとんど一軒家だったんですが、どんどんワンルームマンションに変わっていって住民の層も変化していったんですよ。そうなると、店が開いている時間は働きに外に出ているのでお客さんが全然こない。結局、ミニスーパーとして経営していくのは難しくなってしまいました」
そうして、場所を変えて同じような商売を展開しようとしていたときに、「ベーカリーをやらないか?」と声をかけてきたのが、他でもない山崎製パンの開発担当者だったのです。
デイリーヤマザキ本部担当者の説明に、商売人として共感

(沢田オーナー)「実際にお店を見にいったらすごく流行ってたので、ベーカリーカフェ業態でやってみるのもありかなって思ったんですよ。ただ、そのときはたまたま縁もあって、結局は全然違うベーカリーカフェを営む会社に店長(社員)として入社させてもらいました」
心機一転、ベーカリーカフェの店長としての人生をスタートさせた沢田オーナー。早朝からパンの仕込むなど、大変な生活にもかかわらずパンの魅力に惹き込まれていくのです。気づけば、オープン当初は日商20万円ほどを見込んでいたにもかかわらず、日商60万円を叩き出すほど順調そのもの。しかし、会社の方針により10年ほどで辞めることに……。
ベーカリーカフェが儲かることを肌で感じていた沢田オーナーは、その後、自身でベーカリーカフェを経営しようと考えます。しかし、そのタイミングでデイリーヤマザキへの加盟の話が舞い込んでくるのです。2009年、彼が50歳のときでした。
(沢田オーナー)「自分でベーカリーカフェの物件を探したりしていたんですが、なかなか見つからなくて……。そんな時に、『コンビニ(デイリーヤマザキ)をやってみないか?』って話をいただいたんです。詳しく聞いてみたら、ベーカリーもあって、スーパーとは違いますが物販もあるので、これまでの経験が両方活かせるな、と。集大成としてぜひ加盟したいって返事をさせていただいたんです」
とはいえ、コンビニという未知の領域に対し、一切の不安がなかったといえばそういうわけではありません。そんな沢田オーナーが加盟を決意できたのは、加盟前に担当者がコンビニ経営についてのリスクなどを包み隠さず話してくれたから——そう彼は当時を振り返ります。
(沢田オーナー )「収益シミュレーションが絶対ではない。同じ条件で経営しても、シミュレーション通りにいくオーナーもいれば、上回ったり下回ったりするオーナーもいるなど、リスクも包み隠さず話してくれたので、信頼して加盟できました。今まで自分で商売をやってきたなかで、売れるか売れないかはオーナーや店長の腕前。または、やる気次第だなって思っています。なので、収益シミュレーションの数字通りにいかないのは商売では当然のことですね」
コンビニは基本的に夫婦などで加盟するのが一般的。例に漏れず、沢田オーナーも加盟の際に妻に相談したものの、元銀行員である彼女がコンビニに難色を示すなか出した答えは「デイリーヤマザキであれば……」というものでした。なぜ、デイリーヤマザキ限定でGOサインが出たのでしょうか?
(沢田オーナー)「最初は『コンビニ経営なんて休みがなくなるからイヤだ』って反対されましたね。それまでは土日祝休みの銀行員だったので、日曜日は毎週ソフトボールをやってたりしていましたし、当たり前かもしれないですけど(笑)。でも、最終的に休みの部分は妥協してもらって、デイリーヤマザキであれば『ベーカリー』があるので、ほかと差別化できるということで一緒に頑張ろうって応援してくれました」
パンは生きもの。ベーカリーカフェ時代の経験を活かして売上アップ

そうして2009年11月にオープンした「デイリーヤマザキ所沢下富店」。最初の3ヶ月こそ苦戦し、不安にさいなまれたものの、次第に売上を伸ばしていきます。
(沢田オーナー )「最初は不安でしたが、コンビニの売上が落ちる1月とか2月だったのでしょうがないかな、と。春になり暖かくなるにつれ売上が上がってきて、加盟前に提示された収益シミュレーションの日販も、夏ころには到達していました」
売上が伸びた背景には、店舗の認知度が上がってきたことはもちろんのこと、ベーカリーカフェ出身であることを強みにしたパンへのこだわりがあったのです。


(沢田オーナー )「最初からベーカリーには力を入れてました。発酵しすぎていたり、焼きが足りなかったり、焦げたり、うちでは廃棄にするようなパンでも、ほかの店舗では店頭に並べていたりしますからね……。家族に食べさせるならそれでもいいかもしれませんが、お金を出して買ってもらうものですから。ダメなものは売らない。それがわたしの信念なんですよ」
そんな沢田オーナーのこだわりに触れたスタッフは、同じデイリーヤマザキの他の店舗と比べてもクオリティの違いがわかるほど。そうしたベーカリーへの取り組みがスタッフにも浸透した結果、ベーカリーが全体の売上を引っ張っているのです。
その甲斐もあり、本部から提示されていた「全体に対するベーカリーの売上」を4パーセントほど上回っていたデイリーヤマザキ所沢下富店。その後は、月によっては変動はあるものの、ほぼ右肩上がりの売上をキープしているといいます。
(沢田オーナー )「店内調理しているベーカリーのクオリティを求めればロスが増えてコストも余計にかかってしまうんですが、妥協せずおいしいパンを提供し続ければお客さんがお客さんを連れてきてくれるんですよ。この間も3人で来店されたお客さんの1人が、『この店のパンおいしいんだよ〜』って一緒にきた2人に説明してくれていました。確かに嬉しかったんですが、本来は『この店のパン』ではなく、『デイリーヤマザキのパンがおいしい』って思ってもらえるのが理想です。同じ生地を使っているので、本来同じパンが作れるはずなんです。そうなれば競合のコンビニとも十分戦えますからね」
息子の加入で自身の夢から親子の夢へ

1号店のオープンから4年後の2013年には、沢田にとって2号店となる「デイリーヤマザキ西所沢駅前店」をオープンさせます。このタイミングで、現在は所沢下富店の店長を務める息子の槙悟が経営に加わります。
(槙悟店長)「それまで接客が好きで居酒屋やパチンコ屋で働いていたんですが、母から2号店とその立地の話を聞いて、すぐに会社を辞めてきました(笑)。2号店は駅前ということで、駅から出てきた人全員の目につくところにある。いかにその人たちを店に取り込めるか、腕前や品揃えによってまったく変わってくるので、やりがいがあるかなと思って店長をやるって手を挙げました」
そうして、2号店は息子の槙悟が舵を取る形で複数店経営に踏み切った沢田オーナー 。
(沢田オーナー )「じつは、2号店の話は息子のほうがオーナーの私よりも先に知っていて……。私が知ったころには、すでに息子が前職を辞めてましたね(笑)。2号店は駅前という好立地なこともあり、大きさは1号店の半分ほどなのに売上は1号店と同じくらいです」


(槙悟店長)「現在は2号店の店長を母親にバトンタッチし、1号店の店長を任せてもらっています。コンビニは商品がどんどん入れ替わるなど、ニーズもどんどん変化していってる。なので、売る方も新しいアイデアを出していかないといけない。その1つとして、夏休みに向けてパンの学割を取り入れようと考えています。そうしたアイデアを出していくことでさらに売上を伸ばし、オーナーを少しでもラクにしてあげたいんですよね。そのためにも、自分だけでなくスタッフにも自発的に動いてもらわないといけない。いまは、どう自発的に動いてもらえるか試行錯誤中です」
(沢田オーナー)「30も年が離れていると発想も全然違うんですよ。息子は新しいアイデアをどんどん取り入れていってますね。私は昔ながらの商売のやり方なので……」
とはいえ、2号店の開店後もデイリーヤマザキの強みでもあるベーカリーと、沢田オーナーのパンの品質へのこだわりによって順調に売上を伸ばし続けている1号店の「デイリーヤマザキ所沢下富店」。じつは、全国約900店舗もあるデイリーヤマザキにおいて、メロンパンの販売個数を競う「メロンパンコンクール」で第一位を獲得したこともあります。
そうしたベーカリーの貢献もあり、ひと月あたり売上が加盟前に本部が提示した収益シミュレーションのおよそ2倍に迫るなど、オープンから9年が経過した現在でも、昨対比を上回り続けているのです。
2009年に山崎製パン株式会社が展開する「デイリーヤマザキ」に加盟したことで始まった沢田オーナーの挑戦。2店舗目の出店を機に息子が加わり、現在は3店舗目の出店に向けて奔走中です。親子のさらなる活躍から目が離せません。
※掲載情報は取材当時のものです。