日常生活において必需品となったスマートフォン
「スマホ修理店は、接客カウンターと作業スペースさえあれば開業できるので、新たに店舗を設ける必要はありません。現在は、もともと美容室やネイルサロン、飲食店、リサイクルショップなどを運営している方に、サイドビジネス(副業)として加盟していただいているケースが多いですね。競合の多い都心部ではなく、むしろ、市場が熟成されていない郊外でこういった店舗を運営されているなら、スマホ修理はとても相性のいいビジネスだと思います」(松村社長)
そう語るのは、爽やかな白いシャツが印象的な松村一秀社長。「iPhone修理のぐんぐん」を運営するぐんぐん株式会社の代表取締役を務める人物です。
2008年に日本でiPhoneが発売されて以降、日常生活では欠かせない存在となったスマホ。総務省が発表した「平成29年通信利用動向調査」によると、日本においてスマホを保有している世帯の割合は75パーセントを超えています。
また、2018年1月に「NTTドコモ モバイル社会研究所」が関東1都6県の60歳~79歳の男女を対象とした調査によると、60代以上のスマホ所有率は56パーセントを記録。2015年の調査では33パーセントであったことと比較すると、20パーセント以上の伸び率を見せているなど、いまや老若男女を問わずにスマホを使用していることがデータでも実証されているのです。
急増する格安修理店が人気を得ている理由
スマホの普及とともに増えているのが、スマホの格安修理店です。Appleをはじめとした正規の修理店があるにもかかわらず、こういった格安のスマホ修理店を利用するユーザーが増えているのはいったいなぜなのでしょうか。
まず考えられるのは、店舗に持っていった当日に修理できる点。正規の修理店の場合、何時間も待たされた挙句、当日には修理してもらえないケースもあります。さらに、正規の修理店よりも安価で修理してもらえるのも、格安修理店が人気を得ている理由のひとつ。
「早い」「安い」だけではありません。正規の修理店は主要都市を中心に展開されているため、近所にない場合は格安修理店に駆け込むなど、スマホの普及とともに格安修理店の需要は増えていくのです。
この成長市場を舞台に、2年前に産声をあげた「iPhone修理のぐんぐん」。現在では愛知県を中心に12店舗を展開するまでに拡大しました。スマホビジネスは初めてだった松村社長ですが、この2年を通してあることを痛感したといいます。
「正直、この事業を軌道に乗せるのは決して難しいことではない。確かにこの2年間で競合も増えてきていますが、集客用のWebサイトやリスティング広告などをきちんと運用できれば十分に戦えるんです。開業時にお支払いいただく費用にサイト制作費なども含まれていますし、そのサイトの運用も本部がサポートさせていただきますので安心して開業いただけます」(松村)
しかし、とくに東京の都心部などでは競合が多く肩を並べ、いわゆる飽和状態に陥っています。ゆえに、「人口が20~30万人くらいの郊外で、競合が10店舗もないエリアでの開業が望ましい」――そう松村社長はいいます。
「20~30万人いなくても、それくらいの商圏の都市がいいですよね。こういうエリアは競合が少なく、iPhoneの保有者数、そして画面割れなどのトラブルの多さに対して修理できる店舗が少ないんです。実際、高速バスで3時間もかけて名古屋にある栄店に駆けつけたお客さんもいらっしゃいました。そういった意味でも非常に早く立ち上がり、長い間、安定して運営していける。もし従業員を雇う場合でも、短期間で教育できるので、マネジメントも含めてしっかりできるのであれば、そう難しい商売ではありません」(松村社長)
iPhone修理は「サイドビジネス」に最適
「愛知県の岡崎市にある直営店は、店舗面積が5坪の路面店で家賃が5万7000円。1人の従業員にすべて任せてるので、わたしが店舗に出向くことなんてほとんどありませんが、従業員の給料など諸々の経費を差し引いても、月に30万円くらいの利益が出ています。なので、従業員を雇わずにオーナー兼店長という形で運営すれば、週に1回休んでも毎月50~60万円は安定して得られると思います」(松村社長)
現在、直営店はこの岡崎店と名古屋市内に位置する栄店の計2店舗。2017年の3月にフランチャイズ展開がスタートし、現在は12店舗で展開しています。
「本当は、直営店がもう2店舗あったんですが、1店舗は人手不足でやむなく閉店。もう1店舗は人手不足でしたが、加盟を希望する方から『ここで開業したい』というお話をいただいたので、直営店から引き継ぐ形で運営してもらっています。こういった失敗経験もありますが、それを踏まえて加盟を希望する方にいろいろ提案できるので、本部としてもメリットのある閉店だったと思います」(松村社長)
とはいえ、松村社長が提案するのは、既存のビジネスありきのサイドビジネスです。
「今ある店舗の空いたスペースで最低1坪あれば開業できるのはもちろん、修理自体も簡単なものばかり。もっとも依頼の多い画面修理の場合、細かい作業が得意な方であれば1日でできるようになります。バッテリー交換はもっと簡単なので、だいたいの方は3日もあればすべての修理技術を習得できるほど。しかも、開業のための登録申請などはありません」(松村社長)
しかし、スマホ修理は技術を習得するだけでいいというわけではありません。それと同等に、もしくはそれ以上に必要なことがあると松村社長は続けます。それはいったい何なのでしょうか?
スマホ修理は技術だけでなく接客が重要
「店舗を運営していく上で重要なのが接客です。マニュアル通りの『いらっしゃいませ』『どうされましたか?』だけではダメなんです。例えば画面が割れた理由がさまざまあると思いますので、その理由を聞くなど日常会話からいろいろ聞き出していく。その上で、画面割れだけでなく、実際は損傷がひどくてカメラも交換する必要があるなどのアップセールスをするのが望ましいですね。年配の方はご自身では不具合の箇所などよく分からないんですよ。なので、むしろアップセールスをしてあげることで満足して帰られますね」(松村社長)
だからこそ、美容室などのサイドビジネスとして相性がいい——そう松村社長は断言するのです。
「商売をやっている方であれば、こういう接客は自然とできるはず。しかも、ある程度信頼関係のできている方から『画面割れすぐに直せますよ?』『バッテリー交換したほうが良くないですか?』などと言われたほうが『じゃあ、お願いしてみようかな』ってなるじゃないですか。美容室やネイルサロンなどであれば、髪を切ったり爪を綺麗にしたりしている間に終わるので待たせる必要もないですからね。普段からシャンプーを売るなどのアップセールスもしてるはずなので、とても相性がいいと思います」(松村社長)
iPhone修理の需要が落ち着くことは当分ないはずですが、今後はAppleの製品自体が壊れないように改良されていくだろうと予測している松村社長。そのため、加盟店に対してスマホ修理だけではなく、直営店ではすでに提供しているiPad修理やパソコンの高速化サービスなども展開していく予定。
さらにそれだけでなく、金やプラチナの出張買取など複数商材を積極的に横展開し、変化しても新しい形を追求していくことで、加盟店が安心して事業を継続できるように努めていきます。
※掲載情報は取材当時のものです。