飲食店での独立を目指し、10年以上居酒屋で修行
「今でこそ、こうやって『鳥こまち』の加盟店開発を請け負っていますが、もともとは群馬県前橋市で『鳥こまち』を運営する加盟店としてはじめました。たくさんの居酒屋が軒を連ねる激戦区ですが、18坪28席の小ぢんまりとしたお店で月間320~330万円ほどの売り上げをキープしてますよ」(宮原代表)
そう話すのは、有限会社シャイニングの宮原代表。鳥こまちののれん分け開発担当者でもあり、加盟店のオーナーとしても活躍する人物です。そんな彼は「鳥こまち」に加盟する前から、独立を目指して飲食店に勤務してきました。
「母親が地元の群馬で小料理屋を営んでいたこともあり、ずっと飲食で独立したいと考えていたので、大学卒業後は、個人の方が営む居酒屋に就職しました。鶏肉も海鮮も扱っていたので、魚の三枚おろしなどもそこで覚えましたね。10年以上修行をし、最終的に店長も務め、独立するために退職しました」(宮原代表)
いつかは自分のお店を持ちたい——飲食店で働く人のなかには、将来的に独立することを夢見る人も少なくありません。その際に挙げられる方法は大きく分けてふたつ。ひとつは、オリジナルの店舗で独立。そしてもうひとつは、フランチャイズやのれん分けなどのチェーンに加盟して独立する方法です。
フランチャイズやのれん分けで独立する場合、運営本部からノウハウなどを享受できるので、未経験でも比較的容易に独立できるのがメリットのひとつです。しかし、10年以上の経験があったにもかかわらず、宮原代表がのれん分けでの独立を選択したのには理由がありました。
オリジナルの店舗ではなく、鳥こまちののれん分けを選んだ理由
「まず前提として、結婚もして子どももいたので失敗できないな、と。当時は、安くておいしい大手飲食チェーンがたくさんあったので、仕入れの面などはオリジナルの店舗を構えて勝負しても、勝ち目はない。そんなときに鳥こまちがのれん分けを募集していることを知ったんです。焼き鳥店っぽくないおしゃれなイメージだし、備長炭で焼いてるので差別化もできるな、と。社長にお会いして人柄に惚れたのもありますが、加盟店の方々がのびのびと働いていることに魅力を感じ、加盟することにしたんです」(宮原代表)
そうして1999年、宮原代表が34歳のときに「鳥こまち群馬前橋店」をオープン。現在でこそ、来店者のうち9割が常連客という安定経営を実現しているものの、ここまでの道のりは決して平坦ではありませんでした。
「最初の1~2ヶ月はオープン景気もあってお客さんがたくさん来るんです。でも、3ヶ月くらいしたらすぐに売上が落ち込んで……。失敗したくない一心でオリジナルではなくのれん分けで独立したものの、おんぶに抱っこではダメ。自分で努力しないといいお店なんて作れないと思ったんですよね」(宮原代表)
そう改心した宮原代表は、鳥こまちの本店がある東京へ足しげく通うようになるのです。その理由はもちろん、焼き方や接客などの技術を向上させるため——。
「1ヶ月に1回、自分から頼み込んで東京にある本店で修行をさせてもらいました。本店に行くことで普段は見えないようなことが見えて、常に何かを得られるんですよ。とくに焼き鳥の焼き方は簡単に覚えられるものではないので、常に技術と知識を吸収しないといけない。最初は覚えることが多くて視野が狭くなるので、本店で修行をさせてもらったことでいろいろ勉強になりましたね。やっぱり、常に初心を忘れないようにしないと技術なんて向上しないんです」(宮原代表)
修行の甲斐もあり、激戦区でも戦っていける人気店へと成長
そうして技術を上げていった宮原代表ですが、それだけでは物足りず、ある大胆な作戦を決行することになるのです。この向上心こそが、現在の売り上げを築いているといっても過言ではありません。
「関東や関西の有名な焼き鳥店に直談判し、仕込みや一品料理を教えてもらったり、鳥こまちでは吸収できない肉の解体方法などを鶏肉屋に行って直接教えていただいたりしました。のれん分けでノウハウを享受できるとはいえ、『肉を切って、刺して、焼く』といった基本的なことしか教わらなかったんです。もちろん、備長炭で焼いてるので、普通に焼いてもおいしいんですけど、部位や切り方によって焼き方を変えると味がまったく違うんですよ」(宮原代表)
産地直送の新鮮な鶏肉が鳥こまちの強みの一つ。この味を最大限に引き出すためには、こういった一つひとつの積み重ねが重要になってくるのです。
「沖縄と北海道を除きますが、産地直送なので処理した次の日には店舗に届きます。問屋を通さずに仕入れられるので新鮮でおいしいのはもちろん、値段が安く、賞味期限も長くなるので廃棄を出しにくいんです。鶏肉の取引先は加盟店にお任せしていて、私が食べて問題なければゴーサインを出しますが、本部で取り扱っている鶏肉のほうが安価なことが多いので、本部からの仕入れをおすすめしています。こういった点も鳥こまちに加盟するメリットの一つですね。」(宮原代表)
類まれなる向上心で、焼き鳥や店舗経営に関する知識を吸収していった宮原代表。その結果、売り上げは少しずつ回復し、激戦区でも十分に戦っていける人気店へと成長を遂げるのです。
「あくまでも地方の例ですが、18坪28席なら25日営業して200万円くらいの売り上げになれば家族で生活していける計算です。オープン当初は200万円を切る時期もありましたが、今では320~330万円くらいをキープしていて、最高で370万円くらいまでいったこともありました。9割がリピーターなだけでなく、週末も平日も売り上げはほぼ変わらず安定しているので、一番いい店舗運営ができていると実感しています」(宮原代表)
すべてのノウハウを加盟店に落とし込み、共に成長していく
一加盟店のオーナーである宮原代表が「鳥こまち」ののれん分け開発業務も請け負うようになったのは、今からさかのぼること3年前。もともと運営本部で開発を担当していた社長が高齢ということで、加盟店でありながら、3年ほど前から開発部分も担当するようになったのです
「それまでも、私が開拓した肉の取引先を本部に紹介したり、加盟希望者の研修をしたり、一品メニューの開発を担ったりと本部業務に近いことをしていました。加盟店という立場でしたが、鳥こまち全体が良くなるのであればと、本部と二人三脚で歩みを進めてきましたが、社長も無理をできない年齢なので、今はわたし1人で行なっています」(宮原代表)
じつは、宮原代表が担当しているのは開発業務だけではなく、スーパーバイザーとしても大きな役割を担っています。これまで彼が習得した技術を加盟店に落とし込むことで、数多あるライバルのなかから選んでもらえるような店舗作りができるのです。
「今、鳥こまちは全国に40店舗くらいあるんですが、少なくとも年に2回は直接行こうと思っています。私がオーナーを務める前橋店だけではなく、全国の店舗が良くならないといけませんから。この間行った店舗では、お客さんの『すいません』という声が聞こえなかったらしく、スタッフが通り過ぎちゃったので、改善するために呼び出しベルを設置するようになりました。技術面はもちろん、接客についても一つひとつ改善していかないといけないんです」(宮原代表)
メニューや仕入先など、本部がこれまで培ってきたノウハウを享受できるので、これまで包丁を持ったことのないような飲食未経験者でも開業できるのが「鳥こまち」のメリットのひとつ。それでいて、のれん分けなのでオリジナルメニューを商品化できるなど、自由度も高いのが特徴です。
今後は100店舗まで拡大していくことを見据えている宮原代表。これまで習得した技術を加盟店に落とし込むのはもちろん、加盟オーナーの個性や手腕を十分に活かせるようなチェーンを作っていきたいと考えています。
※掲載情報は取材当時のものです。