焼肉店で10年修行した後、独立支援制度を利用して居酒屋をオープン
「自分には飲食業しか向いていない」
高校時代、近所の飲食店でアルバイトをスタートさせるやいなや、接客のおもしろさに魅了された隅内。のちに「エックスモバイル 浅草店」を開業する彼が選んだ最初のキャリアは、東京都内に2店舗展開する個人経営の焼肉店でした。
入社後は、まわりの友人たちが楽しそうに遊んでいる姿を横目に馬車馬のように働く日々……。「企業の働き方」が問題視されている現代とは違い、週末勤務はもちろん、長時間労働も当たり前。それは、高校を卒業したばかりの隅内にとって、あまりにも厳しい現実でした。そして社会人としての門を叩いて2年が過ぎたころ、隅内にある考えが芽生えはじめます。
「当時は、決して良くはない労働環境だったことから、ずっと雇われの身で働き続けることに不安を感じていました。とはいえ、飲食店で働くことに大きなやりがいを感じていたので、いつか地元に自分の店を持ちたいと思うようになったんです」(隅内)
その後はキッチン業務を経て、ホール業務やアルバイトの指導なども担当するまでに成長。最終的には2店舗のマネジメントをする統括店長に抜てきされるなど、会社の中核を担う人材として活躍しました。そして、入社から10年が経ったころ、隅内に最初の転機が訪れます。
「30歳を目前にして、『独立』について本格的に考えるようになりました。しかし、そのための資金を計画的に貯めていたわけではありません。しかも、18歳から社会人になって10年間、焼肉店でしか働いたことがなかったので、ほかの業種でも働いてみたいと思うようになったんです」(隅内)
そんな隅内の考えに合致したのが、独立を支援している居酒屋でした。一般的に飲食店で開業をするためには、莫大な初期費用を必要とします。しかし、隅内が第2のキャリアとして選んだのは、初期費用を3年に分けて支払うことで、初期投資を少額で抑えられるだけでなく、一オーナーとして経営できるスタイルの居酒屋です。当時、開業資金をたくわえていない隅内にとって、ベストなシステムでした。
初期費用をすべて支払えば晴れて自分の店に——。そんな思いで意気揚々と居酒屋をオープンさせた隅内でしたが、大きな壁にぶつかることになります。
最大で7000万円の赤字収支から一転、メディアも飛びつく人気店に成長
居酒屋のオーナーとして、独立という夢を果たした隅内。しかし、オープン特需さえそこそこに、その後は利益どころか、初期費用を返済するだけで精一杯な経営状態が続きます。そんな現状を打破するため、オープンから半年後、同じく独立支援制度を利用して、地元に2号店となる居酒屋をオープンさせました。
これで、20歳のころに抱いた「地元に自分の店を持つ」という夢をとりあえず叶えた状況です。しかし、一念発起してオープンさせた2号店も虚しく、火だるま経営を加担させる結果に……。
「当時は、毎月の返済も厳しい状況で、最大で7000万円の赤字収支をたたき出したこともありました。そのため、入金を遅らせてもらえるよう社長に直談判したこともあります。もともとポジティブな性格なので、内心では『どうにかなるだろう』くらいの気持ちでしたが、もちろんそうもいかず……。毎日、胃がキリキリしていましたね(笑)」(隅内)
そして、2号店をオープンさせて数年が経過したある日、隅内にとって2度目の転機が訪れます。
「いよいよ経営が厳しくなってきたタイミングで、『婚活応援系の居酒屋にコンセプトを変えて、再スタートを切ってみないか?』と経営母体である会社の社長から提案があったんです。今となっては全国に70店舗以上も展開する居酒屋ですが、当時は斬新なコンセプトだったので、はじめて聞いたときは戸惑いました。ただ、挑戦する価値は大いにあると感じたので、2号店の半分のスペースをそのコンセプトに改装してオープンさせることにしました」(隅内)
すると、オープンから間もなく、想定外の反響を呼ぶことになったのです。「婚活応援系の居酒屋」という斬新なコンセプトがメディアの目に留まり、ニュース番組で紹介されると、テレビや雑誌をはじめとしたメディアからの取材依頼が殺到。リニューアルから3ヶ月目には損益分岐点に到達すると、その数ヶ月後には1号店も婚活応援系の居酒屋にリニューアル。2店舗とも右肩上がりに利益を生み出し、滞納分をまとめて返済できるほどの人気店にまで成長を遂げました。
あのとき、社長の提案を素直に聞き入れたからこそ手に入れた成功への道標……。とはいえ、すべてがうまくいくほど人生が甘いものではないことも痛感することになるのです。
9店舗のオーナーになってはじめて見えた飲食以外の選択肢
婚活応援系の居酒屋が話題を呼び、瞬く間に黒字経営にシフト。その後は、持ち前のチャレンジ精神を武器にオリジナルブランドとなる「もんじゃ焼き店」をオープンさせました。さらに、新たに婚活応援系の居酒屋を2店舗オープンさせて、合計5店舗のオーナーとなった隅内。
もちろん、この当時も1号店や2号店の初期費用を払い続けている状況ですが、彼のチャレンジはまだまだ始まったばかりです。5店舗だけでは飽き足らず、2016年には怒涛の出店ラッシュを迎えることに……。なんと(!)、パンケーキ店や牛カツ店など、2016年の1年間だけで業態の違う4店舗の飲食店をオープンさせたのです。
もちろん、順調に売上を確保しているお店もあれば、そうでないお店もありました。そんな中オープンに踏み切った隅内に、ある誤算が襲いかかります。
「キャッシュ・フローでまわしていたつもりが、実際は全然まわっていなかったんです。結果、オープンに必要な2000〜3000万円という資金を準備できないだけでなく、銀行からの借り入れもできない状態が続きました。最終的には融資がおりたことで事なきを得ましたが、それまでの間、仕事はもちろんプライベートの時間も楽しめませんでした」(隅内)
そのときに改めて感じた、飲食店を経営することの難しさ……。それまで、10年以上にわたり飲食1本で勝負をしてきた隅内ですが、2016年に出店ラッシュを経験したことで、考えに変化が生じます。
「現在、さまざまな業態で合計9店舗を経営していますが、赤字収支のお店があるのも事実。実際は、売上のいいお店で悪いお店の赤字分を補っている状態です。今までは店舗数を増やそうと躍起になってきましたが、重要なのは“数”ではなく、何十年後も続いているお店を作ること。そのためには飲食店にこだわる必要もないと、このときにはじめて気づかされました」(隅内)
格安スマホビジネスの将来性や可能性に魅せられて加盟を即断即決!
飲食以外にも目を向けてみよう——。そう考えをシフトしたときに偶然出会ったのが、ほかでもない「エックスモバイル」です。
「飲食店はお客さんが来店すれば売上を確保できますが、極端な話、お客さんが来店しなければ売上はありません。一方、エックスモバイルが手掛ける携帯ビジネス(格安スマホ/MVNO)は、ご契約いただいたお客さんの月々の通信費用から得る手数料が収入源になるります。そのため、継続して収入を得ることができるので、飲食業では考えられないこのビジネスモデルに魅力を感じました」(隅内)
後日、エックスモバイルが開催する事業説明会に足を運ぶと、その場で加盟を決意。2016年8月のことでした。
「将来性はもちろん、事業の可能性や地方の成功例をお聞きした上で、今後は東京都内でも展開していく計画ということで、加盟させていただくことにしました。婚活応援系の居酒屋もそうですが、都内の1号店という称号も魅力的でした」(隅内)
その後は物件を決めて11月にオープン……の予定でしたが、候補地が商業施設内ということもあり、管理会社との交渉を続けること約半年。ようやく出店の許可がおりて、「エックスモバイル浅草店」をオープンさせたのは、2017年3月31日のこと。
「開業までに不安だったことといえば、物件くらいですね。とはいえ、5坪くらいのスペースでもオープンできるのは、初期費用の面でとても助かりました。飲食業以外ははじめての試みですが、格安スマホビジネスの基礎的な知識は、研修でみっちり教えていただいたので、現状、不安に感じていることはありません。まずは地域の方々に格安スマホの魅力、そしてエックスモバイルを知ってもらうために、地道な宣伝活動をしていきたいと考えています」(隅内)
「契約したら終わり」ではなく、細やかなアフターサービスも行うことで、お客さんとより一層の信頼関係を築けるのも、格安スマホビジネスの魅力のひとつ。お客さんと長期的なパートナーであり続けるために、彼の挑戦はまだまだはじまったばかりです。
※掲載情報は取材当時のものです。