BBQケータリングビジネスの原点
「バーベキューはアメリカでは食文化としての地位を確立していますが、日本では焼肉よりも遥かに地位が下なんです。我々は、バーベキューをビジネスとしてはもちろん、サービスを質の高い焼肉屋レベルまで持っていくために日々挑戦し続けています」(高鶴社長)
そう語るのはBBQのケータリングサービス「BBQ王」を、FC・直営合わせて全国に15拠点展開している株式会社HF、そしてBBQ王GROUPの代表を務める高鶴。全国的にはまだまだ認知度の低いBBQケータリングサービスを次のように語ります。
「BBQケータリングサービスって簡単に言うと、我々が買い出しから準備・片付けなど、バーベキューの手間を代行することで、バーベキューをやりたいけど自分達でできない法人様や団体様、学生・家族の方などに『手ぶらでバーベキューを楽しんでもらえる』サービスです」(高鶴社長)
そんなBBQ王のルーツは、1998年に高鶴の友人が北九州で創業した「ホットポイント」。
自衛隊や病院をはじめ、大企業の工場が点在する北九州では、当時から企業の敷地内で親睦会やレクリエーションとして『焼肉大会』が開催されることは少なくありませんでした。そこに目をつけ、そうした現場に焼肉の食材や器材を運んでいたのがホットポイントだったのです。
「数百人規模の団体客を受け入れられるような飲食店は多くありません。そうなると必然的に屋外で、そして老若男女が楽しめる焼肉となるんですよ。1998年当時は、バーベキューという言葉がほとんど使われておらず『焼肉配達業』としてやっていましたね。世の中的にも類似サービスを提供している企業もなかったので、焼肉ケータリングビジネスのパイオニアと言っても過言ではないでしょうね」(高鶴社長)
その後、コミュニケーションの重要性が社会的に取り沙汰されるような時代になると、福利厚生に力を入れる事業者が増加。そんなコミュニケーションツールとしての関心の高まりや、ニーズの変化に合わせ、出張焼肉をより洗練されたイメージのある『出張バーベキュー』と打ち出す形にブランドを再構築。そうして2009年に誕生したのが『BBQ王』だったのです。
『ごちそうさま』ではなく『ありがとう』と言われる仕事
BBQ王として展開するようになって以降、単なる食事だけではなく“コミュニケーションのツール”としてバーベキューが広く受け入れられるようになってきたという高鶴。
企業のレクリエーションや親睦会、地域のイベントなど、飲食店ではキャパシティに限界のある大規模なイベントも受け入れ可能なことから、事業者はもちろん個人のお客さまを始めとする、今まで想定していなかった層からの認知・支持を集め、リピートにも繋がっていると言います。
「私自身、飲食店を15年ほど経営していましたが、減点方式というか、サービスに対して『感謝される』っていう感覚があまりないんですよね。その一方で、バーベキューケータリングの場合は、あくまでケータリングなので過度なサービスを期待されていない分、やればやる分だけ感謝される言わば加点方式なんです。イベントとして『楽しかった』『盛り上がった』『親睦が深まった』という体験の部分が大事なんです。だからリピートや紹介に繋がりやすいんです」(高鶴社長)
そんな盛り上がりをみせるBBQケータリングビジネスの市場にビジネスチャンスを感じて、現在新興の出張バーベキューブランドが参入するなど、各社しのぎを削っています。
そのなかで、BBQ王が競合バーベキューブランドと一線を画す最大の特徴とも言えるのが、日本バーベキュー協会のインストラクターの資格を持ったスタッフによる、プロフェッショナルなサービスの提供。高鶴自身も難関中の難関である上級のライセンスを取得しており、FCオーナーにもライセンス取得を推奨するなど、出張焼肉から培った楽しんでもらうという体験に重きを置くBBQ王のDNAとも言えるこだわりの1つです。
こうしたこだわりは資格取得によるサービス力の向上だけでなく、食材にもおよびます。初めてBBQケータリングサービスの利用を検討する団体の幹事さんの不安を払拭してもらうために、食材のサンプルを提供したり、プランの緻密な事前打ち合わせをするなど、安心して利用してもらうための工夫も細かく行なっています。
「正直、安くするだけならなんとでもなるんですよ。しかし、それだと安かろう悪かろうで満足度は高まりません。BBQ王ではスケールメリットを活かして、質の高いお肉をコストパフォーマンスよく提供しています。また、焼肉のタレと調味料に関しては、構想5年・開発1年の歳月をかけたBBQ王オリジナルが3種類あります。そうした部分を見て判断してもらえると嬉しいですね」(高鶴社長)
そんなBBQ王のフランチャイズ本部がある福岡は、安くてうまい飲食店がひしめき合う超激戦区。故に飲食店同士の消耗戦は避けられず、都心部で月商1,000万円が一つの壁だと高鶴は言います。そうしたなかで改革を積み重ねた結果、BBQ王は花見シーズンのイベント時で、最高日商300万円以上を記録するまでに成長を続けています。
「どんなに良いサービスでも3回目には飽きられてしまうので、サービスも食材なども常にアップデートしていかなければなりません。直営店でみれば、ビジネスとして焼肉屋に引けを取らないという自信があるので、あとはこれをFCの加盟店レベルで実現させていく事だと思っています」(高鶴社長)
未経験でもチャレンジできるスキームが完成、47都道府県制覇を目指して
ニーズを読み解くことで、順調に事業を成長させていったBBQ王がフランチャイズを本格的に募集し始めたのは2018年。飲食業や接客業の未経験者でもオペレーション可能なスキームが完成したことから、BBQケータリングを全国へ拡げるために動き始めます。
「我々が直営店だけで全国47都道府県をカバーするのは現実的ではありません。直営店を8エリア展開していくなかで、飲食業界未経験の方でも活躍してもらえるようなスキームを構築できました。ここから先はフランチャイズで全国に広げていきたいと考えています」(高鶴社長)
そんなフランチャイズ募集にあたって、高鶴が意識したという初期投資の早期回収。加盟店が地に足をつけて成長していけるように、シミュレーションなどは現実と乖離のない数字を提示するなど、FC本部として食材やノウハウを提供するだけでなく、可能な限り加盟者のリスクを最小限に抑えているといいます。
「もちろんビジネスなので、うまくいかないケースはゼロではありません。そこは、オーナーの熱意にも左右される部分なので、鹿児島のオーナーのように一年目からスタートダッシュに成功したパターンもあれば、いまは持ち直しつつありますが、千葉の前オーナーのように本部の指示をした従わなくて契約解除手前までいった、失敗といえるような事例もあります」(高鶴社長)
2019年7月現在、フランチャイズ加盟店が5店まで拡大したBBQ王。そのフランチャイズオーナーのほとんどが、飲食業界未経験からの参入なのです。
「飲食未経験のほうが変な癖がでないんですよね。インドアに慣れた飲食出身の方だと、感覚が全く違います。また加盟店オーナーのなかには、バーベキューが好きという方もいますが、どちらかというとビジネスや収益性に興味を持たれた方が多いですね。既に既存事業とのシナジーを生んでいるオーナーもいますね」(高鶴社長)
そして全国展開に向けて、地域性や文化の違いといった課題について次のように語ります。
「北海道のジンギスカンなどのように、肉とか食べ方に違いがあったり、バーベキューやケータリング文化の成熟度が低いところはまだまだあります。そういったところは定着に多少時間がかかるところもあると思いますが、逆に言えばブルーオーシャンで狙い目でもありますね」(高鶴社長)
リーディングカンパニーとして考えるバーベキュー業界
バーベキューは花見シーズンや夏、秋といった季節のいいタイミングでの需要が高く、アウトドア故に季節や気候に左右されやすいという課題を抱えています。しかし、BBQ王は繁忙期や閑散期といった概念を捨て、常に仕事を安定させるよう努めてきたといいます。
「ビジネスなので、自分達で閑散期をつくらないようにする営業努力ですね。今までの予約リストを活用するなど、自分でコントロールすることは可能です。営業活動の基本は当然のことながら、当たり前のことを当たり前以上にやり続けることが成功の秘訣でしょうね」(高鶴社長)
またその一方で、次のようにも高鶴は語ります。
「極端な話ですが、ハイシーズンにオフシーズンの分もしっかり稼げばいい、というのも一つの視点ですよね。とは言っても、加盟店は不安だと思いますので、11月までに売上を立てて、冬場も乗り越えられるようなスキームを強化していくというのは、BBQ王のFC本部としての課題だと捉えています」(高鶴社長)
そして本部の使命は、アイスクリームが夏だけでなく冬も高い売上を誇っているように「世の中のバーベキューに対する季節的イメージを変えること」だと高鶴は語ります。冬にバーベキューをするイメージがないことが問題と捉え、バーベキュー業界全体で冬のバーベキューの楽しみ方などの提案を仕掛けることで、シーズンに関係なくバーベキュー需要を高められる可能性を秘めているのです。
「社長がいまだに現場に入ってるなんて、この規模では同業の中で私だけなんじゃないですかね。良し悪しはありますが、背中でスタッフを引っ張ってどんどん記録を作っていき、冬場もそうですが、日商の爆発力といった魅力を加盟店オーナーに見せてあげる、これも本部の仕事だと思っています」(高鶴社長)
現在BBQ王では「メガ予約・メガ売上(100人・100万円/1組)」「ギガ予約(1,000人/1組)」がベースとなっていますが、今後は「ギガ売上(1,000万円/1日)」を目標として掲げているといいます。その実現のためにも、BBQケータリングをさらに全国に浸透させていくことが必要不可欠です。
「どんな会社が展開しているサービスなのか、そんな部分でも安心感を提供できればと思って、本来必要はないですが、大通りに面している目立つ場所に本部の拠点となる自社ビルを構えたりしています。安心して選んでもらえるブランドを目指して、プロモーションの一環で高田延彦さんや吉田沙保里さんといった全国的に認知度のある著名人を起用するなど、積極的な投資してきました」(高鶴社長)
こうしたBBQ王のリーディングカンパニーとしての尽力や、競合サービスも増加してきたことで、現在BBQケータリングサービスは今までにないほどの盛り上がりを見せています。その一方で、業界全体のイメージを悪化させるような問題も起こっていると高鶴はいいます。
「ニュースでもBBQ業者のゴミ問題などモラルの低さが取り上げられているように、マナーの悪い業者が問題になっています。BBQ王GROUPは、BBQケータリングのリーディングカンパニーとして、こういった業界全体への批判にも真摯に向き合って、健全なバーベキュー文化の成長と普及へ貢献していきたいと考えています」(高鶴社長)
1を10にするのは簡単でも、0から1を作り上げるのは難しいもの。しかし、基本となる積み重ねを大切にすることで拡大を続けてきたBBQ王。だからこそフランチャイズオーナーも日々の積み重ねを大切にしてほしい。そう語る高鶴社長の熱い眼差しは、業界の明るい未来を見据えています。
※掲載情報は取材当時のものです。