子育てに対する不安から、夫の独立に猛反対!
「毎月25日に給料が支払われる安心感は手放したくないし、夫の『事業をやりたい』という思いもすごく理解していました。それならどっちも叶えちゃえって(笑)。
夫は会社を辞めず、彼の仕事がある平日は私が店舗に立つことで、夫婦でなんとか事業をスタートできました。私は代表取締役という立場ですが、あくまでもサポートするだけ。事業のことはすべて夫に任せています」(亜希子オーナー)
そう話すのは、エコカーレンタカーのフランチャイズに加盟し、2019年8月に「エコカーレンタカー東京多摩店」をオープンした亜希子オーナー。小学5年生と3年生の2人のお子さんを持つママさんオーナーです。
「オープンするまでは、10年以上ずっと飲食店で接客業のパートをしていました」(亜希子オーナー)
そんな彼女に転機が訪れたのは、今から遡ること6年。子どもがまだ小さく、子育てに悪戦苦闘しているころでした。
「夫から『独立したい』って相談されました。夫は車関係のサラリーマンとして25年以上働いているんですが、カーシェアリングのフランチャイズに加盟したい、と。でも、子どもをまだ保育園に預けてるくらいの時期で、子育てに対する不安もあって……。生活のイメージが湧かなかったのと、言っちゃうと、独立なんかしないでサラリーマンのままでいいじゃんって思ったんです。なので、『お願いだから今はやめて』って全力で反対しました(笑)」(亜希子オーナー)
子育て真っただ中の亜希子オーナーゆえ、子育てとの両立はもちろん、金銭的な不安を感じるのは当然のこと……。そんな彼女の思いを覆したのは、夫の独立への強い意志でした。
「聞いたら10年以上も前から独立したいって考えていたみたいで。夫いわく、ずっとレンタカー事業に興味があったらしいんです。というのも、夫がやっている車関係の仕事では、人が動くことでしか収益につながりませんが、レンタカーなら人が動くのは貸すときと返してもらうときだけで、あとは車が稼いでくれる。整備や洗車などは、普段からやっている業務なので、『これで稼げるんだ』って思って、ずっと独立したいと考えていたみたいです」(亜希子オーナー)
そんな亜希子オーナーに2回目の転機が訪れます。2019年の1月のころでした。
ある理由から格安レンタカーFCへの加盟を見送り
「4年くらい前にマイホームを買ったんです。そのときばかりは、夫も気が紛れていたんでしょうね(笑)。『独立したい』って話は全然してこなくって。ただ、2019年になってすぐくらいに、格安レンタカー事業を展開しているフランチャイズ本部に話を聞きにいったらしいんです。正直、『まだ言ってるんだ』って思ったのと同時に、独立に対してすごく真剣に考えてるのが伝わってきました」(亜希子オーナー)
そうして、夫とともに格安レンタカーのフランチャイズ本部の話を聞きにいった亜希子オーナー。しかし、あることを理由に加盟までは至らなかったといいます。
「その日、私は話を聞いていただけなんですが、後日、夫がひとりで近所にある店舗を訪れたみたいなんです。そこでオーナーさんからもお話を聞けたみたいなんですが、説明会で本部の担当者から聞いていた話とネガティブな意味でギャップを感じたようで……。店舗数も多く成長中のフランチャイズとはいえ、成功している店舗と失敗している店舗は分かれますから。25年も車関連の会社で働いていて、いろいろな店舗を経験しているので、雰囲気で良い店か悪い店か感じ取れるみたいなんです」(亜希子オーナー)
加盟に至らなかった理由はそれだけではありません。もし、夫がポジティブな印象を抱いて加盟に前向きだったとしても、亜希子オーナーの子育てへの不安が払拭されないままでは、独立への第一歩を踏むことはできないのです。
「やっぱり子どものことなどを考えると、毎月決まった日に給料をもらえるサラリーマンは辞めてほしくないなって。その不安を払拭しないまま独立するのだけは辞めてほしいと思ってました」(亜希子オーナー)
夫の落胆する気持ちとは反し、安堵の気持ちさえ覚えた亜希子オーナーでしたが、その後、すぐに新たな不安の種が植えつけられるのです。
「格安レンタカーを諦めたあとにすぐにエコカーレンタカーの話を聞いてきたみたいなんです。そうしたら、レンタカーだけでなく、レンタカーを足掛かりにして車の売買や駐車場のレンタルなど、事業を横展開ができるところにすごく興味を持ったみたいで。加盟が決まっているわけでもないのにフランチャイズ本部の森田社長自ら、本社のある仙台から東京に来てくれたことにも感動していましたね」(亜希子オーナー)
夫と妻。両者の思いを叶える形でエコカーマーケットに加盟
通常、カービジネスを展開しているフランチャイズといえば、「レンタカー」や「中古車販売」など、それぞれ事業を独立して展開するのが一般的。しかしエコカーレンタカーは、レンタカー事業や中古車販売事業、買取事業など、トータルで展開できることから、1台の車を最大収益化できるのが特徴です。
「夫もレンタカーだけでなく、買取や車検の整備などクルマの『ゆりかごから墓場まで』といったイメージの事業をやりたかったようで、『これだ!』みたいな感じで興奮してて(笑)。説明を聞いた次の日には、本部の森田社長と一緒に早速エコカーレンタカー小田原店に行ったらしいんですよ。そのときに、オーナーさんに『楽しいですか?』と聞いたら、『めちゃめちゃ楽しいですよ。一緒にやりましょう』と言われたそうで、すごく感動して帰ってきましたね」(亜希子オーナー)
しかし、気になるのは生活面の不安です。夫の思いとは反し、妻である亜希子オーナーは冷静に考えて決断に至ります。
「会社を辞めてエコカーレンタカーに加盟したいと相談されました。でも、やっぱり会社員を辞めてまで独立するのは譲れなくて……。これから子どものこととかでお金が必要になるので、毎月25日に会社から給料が振り込まれるっていう安心感はなくしたくないなって。そういった悩みを本部に打ち明けたら、夫は会社員のままで、私がオーナーとして加盟したらどうですか、と」(亜希子オーナー)
そうして、亜希子オーナーを代表取締役とする法人を立ち上げることで、晴れて(?)加盟へと至ったのが2019年3月のことでした。
「夫が楽しそうに話をするのと反し、私は不安でいっぱいでした(笑)。事業の決定権はすべて夫で、私はあくまでも夫のサポート受けながら実際に店舗を運営するという立場なのですが、そもそも私は車の知識なんてこれっぽっちもない素人なので、『そんなんで本当にやっていけるの?』って」(亜希子オーナー)
車の知識はないながらも、売り上げは右肩上がり 夫はサラリーマンと、妻は主婦業と、エコカーマーケットを複業
亜希子オーナーの不安が入り混じるなか、レンタカー事業を中心に展開する店舗として2019年8月にオープンを迎えた「エコカーレンタカー東京多摩店」。彼女の“不安”はみごとに的中し、最悪のスタートを切ることになったのです。
「代表取締役とはいえ、夫やエコカーレンタカーのFC本部に分からないところは聞けるので、業務的な不安はそこまでありませんでした。ただ、Googleマイビジネスにうまく登録できてなくて……。要は、ネットで検索しても東京多摩店のページが表示されないような状態です。Webからの集客は見込めないので、集客は店舗に来店いただいたお客さまのみ。そういうのもあって、オープン1ヶ月目は本部からいただいた収益シミュレーションの1%くらいしか売上がありませんでした」(亜希子オーナー)
しかし、2週間後ぶじにGoogleマイビジネスへの登録に成功すると、そこからは右肩上がりに売上が増え、2ヶ月目にはシミュレーションの50%くらいにまで回復。このときのことを亜希子オーナーはこう振り返ります。
「本部からは『Webにさえ登録できれば売上が伸びる』ってずっと言われてました。ただ、はじめてのことなので『本当に?』って疑問だったんです。でも、一回失敗したあとに売上が上がって、『本当だったんだ』って(笑)。1ヶ月目がどん底だったので手応えまではいかなくても、『これを積み重ねていけば大丈夫なんだ』ってすごくホッとしましたね。
ただ、夫とも『事業は前年度比が重要』という話をしているので、まずはベースとなる1年間の売上をつくるために、これからもずっと右肩上がりに売上を上げられるようにしよう、と」(亜希子オーナー)
続く3ヶ月目も売上アップに成功し、順調に成長を遂げている「エコカーレンタカー東京多摩店」。現在は、平日は亜希子オーナーが朝9時から20時まで店舗に立って運営しています。
「ただ、子どももいるので途中で抜けて自宅に戻り、夕飯を作って食べさせたりしています。自宅から10分の場所にあるので、お客様が来店してからでもすぐに店舗に向かうことができますし、予約の入り具合によっては抜けても大丈夫な時間帯があって。今のところは主婦業との両立もできているので、女性オーナーでも簡単に運営できると思います」(亜希子オーナー)
2020年内には夫が会社を辞め、エコカーレンタカー1本で生計を立てていくことを目標としています。
「そのためにも、車の知識はないながら、夫にいろいろと聞いて店舗の売上を伸ばしていきたいですね。分からないことがあっても、本部に聞けばすぐに教えてもらえますし、なにより夫が車についてはプロなので、その辺は未経験でも安心して運営していけてます。
それに、飲食店のパートとしてずっと接客はやってきたので、その辺の経験を活かせてる実感はあります。従業員はほぼ女性なので、生活の足としてクルマを借りたい女性が来店しやすい店舗作りを目指しています」(亜希子オーナー)
乗用車8台でオープンしたエコカーレンタカー東京多摩店ですが、4ヶ月目ですでに15台まで増やし、順調にレンタカー事業を拡大。今後は夫もエコカーレンタカーの事業に加わることで、さらなる事業展開も考えているといいます。
「今はレンタカー事業のみですが、売買も視野に入れて事業を軌道に乗せるためにも、この間、夫が『中古自動車査定士技能検定』の試験を受けてきました。合格すれば、より正確かつ説得性を持って売買できるので、厚みのある事業展開ができるようになると思います」(亜希子オーナー)
まだまだオープンしたばかりで不安なことも少なからずありますが、レンタカー需要の大きさを強く感じながら右肩上がりに売り上げをアップさせるなど、女性が活躍できる場所として実感している亜希子オーナー。この調子で夫と2人でどのような経営をしていくのか、今後の事業展開が楽しみでなりません。
※掲載情報は取材当時のものです。