10年の修行期間を経て「そば居酒屋」をオープン
「串カツがおいしいのは当たり前なんですが、それだけで勝負していないのが『大衆酒場 串カツらく』の特徴です。串カツに特化したお店でありながら、あくまでも大衆酒場を強めに押し出しています。なので、おいしい串カツを食べたい層と、安く飲み食いしたい層の両方を集客できる。マーケットが必然的に広いんですよね。複合したことである意味、競合がいない業態になり、お客様が自然と来店したいと思える店になっているので、岐阜駅の3等立地でも月商400万円を記録できているんだと思います」(秋川社長)
そう自信たっぷりに語るのは、「大衆酒場 串カツらく」をフランチャイズ展開する「株式会社 楽」の秋川社長。彼自身、和食職人として10年近いキャリアを積んだ飲食のプロフェッショナルです。
「22歳で割烹料理店に入社し、その後、そば屋、居酒屋とそれぞれおよそ3年ずつ渡り歩いて修行を続けてきました。おいしい料理をご提供すると、お客さまによろこんでいただける。この魅力にハマってずっと飲食の道を歩んでいます」(秋川社長)
そうして、10年間の集大成として2005年7月にオープンしたのは、そばと居酒屋を掛け合わせた「そば居酒屋 楽」。岐阜市の郊外、駅から車で20分という最悪の立地ながら、オープンからそうそう入店待ちの行列ができるほどの人気店に成長します。
「当時は周辺が田んぼに囲まれ、ファミレスすらもない最悪な立地でした(笑)。でも、近くに『そば居酒屋』という業態がなかったのと、昼は『そば屋』と夜は『居酒屋』の二毛作で展開していたのがウケてかなり繁盛しました。駅前のように居酒屋をハシゴするわけではないので、1件で飲んだり家族連れなら食事もできたりするのがよかったんでしょうね。いまだに、なぜこんなに流行るのか分析出来ていませんが(笑)」(秋川社長)
その後の2012年、「大衆酒場 串カツらく」の前身となる「ナガラ酒場 串揚げらく」をオープン。そば居酒屋 楽本店から徒歩圏内、アパートの1階という立地ながら、こちらもじわじわと人気を集めるようになるのです。
「今も変わりませんが、お客さまに提供する料理には強いこだわりを持っています。なので、腕のいい料理人ばかりを集めました。たとえば、ただのかぼちゃの串揚げでなく、かぼちゃをペーストにした中にクリームチーズを入れて串揚げにしてみたり。大阪にある串カツ高級店には、こういった創作系の串カツが多くメニューにあるんですが、当社は職人でしか作ることのできない串カツをPB化し、提供できるということが何よりの強みです。さらに『大衆酒場 串カツらく』ではこれらをリーズナブルな値段で提供しています。よろこんでもらうのが嬉しくて飲食の道に入ったので、高いクオリティーは常に維持したいんですよね」(秋川社長)
「大衆酒場 串カツらく」への業態変更で売り上げが120万円から400万円に!
その後も「海鮮居酒屋」や「かき小屋」などを次々とオープンし、事業を拡大していった秋川社長。プロの料理人たちがつくる質の高い料理を求め、多くのお客さんが訪れるものの、2016年に岐阜駅近くにオープンした「かき小屋」だけが鳴かず飛ばずの状態……。
かき小屋のオープン時より次の出店、業態開発の一手を常に模索していたという秋川社長。かき小屋オープンからおよそ2年後、大衆酒場と串カツを融合した新業態が完成し、かき小屋を「大衆酒場 串カツらく」に業態変更しました。それまでの不調が嘘のようにV字回復し、「かき小屋」のころは120万円だった月商が、3倍以上の400万円にまで急増し、いちやく人気店へと踊り出るのです。
「ここは約20坪、45席というの小型の店舗。200万円でも十分に利益が出る計算なので、400万円というのは想定していた以上の売り上げです。しかも、一等立地ではなく三等立地なので、決して人通りの多い場所ではありませんし、平均客単価は2500円ほど。月商250万円でも大成功なんて話をしていたくらいなので、400万円という数字、そして利益率の高さにはほんと驚きました」(秋川社長)
業態変更をしただけで飛躍的に売り上げを伸ばしたのは、料理のクオリティはもちろん、大衆酒場の要素も兼ね備えた串カツ店だったから──そう秋川社長は続けます。
「串カツだけで勝負していたら、おそらく月商400万円までは伸びなかったと思います。串カツの要素に、煮込みや土手煮、定番のつまみなど大衆酒場の要素をプラスしたからこそかな、と。
少し前まで串カツ店って若い人はあまり来ないイメージだったので、『大衆酒場 串カツらく』は綺麗で少しオシャレに、けれどもどことなく懐かしさを感じるような、若い人も集まる場所として作りました。実際に、老若男女を問わずさまざまな層のお客さまがご来店します。これが『串カツだけ』『大衆酒場だけ』だったら、マーケット自体が狭くてこれだけ多くのお客さまに来ていただけなかったと思います」(秋川社長)
2005年に独立してから15年。さまざまな業態を試行錯誤してきた秋川社長は、2020年3月、満を持して「串カツらく」のフランチャイズ展開に踏み切るのです。
フランチャイズでも簡単に、職人の味が再現できる
フランチャイズ展開をする際、運営本部がぶち当たるのがパッケージの内容。なかでも、飲食関係のチェーンの場合は、提供する料理のクオリティをいかに再現性のあるものに仕上げるのか──この点が非常に重要になってくるのです。
「パン粉や衣、ソースなどは、すべて自社で研究開発したものをフランチャイズ加盟店に提供しています。たとえばパン粉は、串カツ専用のパンを開発してパン粉にしています。普通の食パンよりも糖分を少なくして、揚げた時に焦げにくく、綺麗な色味、食感、味になるのが特徴です。食べた感じも口当たりが軽いので、中毒性があるように何本でもぱくぱく食べられる。今までいろいろなパターンを試行錯誤した味を材料に落としこんでいるので、言わば、職人の味を再現している感じですね。逆に、うずらの卵を半熟に仕上げる串は職人技が必要なほど再現性が難しいので、完全限定の裏メニューにしています」(秋川社長)
調理もいたって簡単。串カツのグラムもすべて統一して店舗に納品しているので、マニュアル通りの時間で揚げるだけ。飲食の経験がそこまでなくても、誰でも簡単に職人がつくる串カツの味を再現できるのです。
「飲食経験のない学生アルバイトスタッフでも、1週間くらい実際に働けば揚げられるようになります。それくらい簡単なオペレーションにしています。もちろん、ただ串カツを揚げるだけで繁盛店になるわけではないので、フランチャイズ加盟していただいた店舗の店長には1ヶ月間の開業前研修があります。大衆酒場 串カツらくでは、接客にストーリー性をもたせることが大事だと考えているので、マニュアルにできない繁盛のノウハウ、マネジメントの部分、営業を想定したOJT、そして座学とみっちり学ぶことができます」(秋川社長)
初期費用が安いのでリスクを抑えた開業が可能
飲食系フランチャイズに加盟するときに気になるのが、開業するときにかかる費用。一般的な飲食店であれば2000万円~3000万円は当たり前。ほかの串カツ店だと5000万円を投資しなければ開業できないフランチャイズチェーンもあるなか、「大衆酒場 串カツらく」では、20坪の店舗で1180万円くらいを目安にしています。
「スケルトンはあまりおすすめしておらず、居抜きで開業できるような物件を推奨しております。内装についてもデザインの指定はありますが、依頼する業者は本部を介さずに発注いただいて構いません。立地も一等立地ではなく、三等立地でも十分に集客できていますので、物件によって厨房機器も揃ってたりすると、開業資金が1000万円を切ることも珍しくありません。初期投資はほかと比較してもかなり抑えて開業できると思います」(秋川社長)
初期投資を抑えられるということは、つまり、早期に投資を回収できることにもつながります。「串カツらく」では早いと1年半ほどで回収できるので、リスクを抑えて開業できるのも特徴のひとつです。
「少ない人数での運営を実現しているので、通常、食材原価と人件費が売り上げの60パーセントを占めるくらいが健全な経営の指標と言われますが、『大衆酒場 串カツらく』では、55パーセント以内を実現。ランニングコストも抑えられるので、より早期に初期投資を回収できます」(秋川社長)
繁華街から離れた不利な立地であっても客足の絶えない「串カツらく」。これもすべて、秋川社長の原点となっている「お客さまによろこんでもらいたいから」が体現できているからこそ。まだまだフランチャイズ展開をスタートしたばかりですが、想定を超えるFC加盟の問い合わせが来ているといいます。全国で「大衆酒場 串カツらく」を目にする日も、そう遠い未来ではないでしょう。
※掲載情報は取材当時のものです。