前職時代に出会ったふたりの考えが合致して起業を決意
伊藤と太田が出会ったのは、前職で勤めていた広告代理店。ほぼ同時期に入社したふたりは事業部こそ違うものの、年齢が近いこともあってプライベートでも飲みにいく仲に発展。お互いを尊敬しつつ切磋琢磨するなど、次第にいい関係性ができあがっていったのです。
「現在、出会ってから25年くらい経ちますが、今まで意見の食い違いで言い争いになったことはありません。時には意見がぶつかることもありますが、お互いに尊敬している部分を持っているので、少し意見を交換すればすぐに腹落ちできるんですよね」(伊藤)
広告代理店への入社から10年近い月日が経ち、伊藤は財務部門の、太田は営業部門の役員に就任。会社の方向性を決定するなどといった、重要ポストとして活躍します。
「各部門の役員の中でも、私と太田はアグレッシブなタイプ。ほかの部門の役員が、既存の事業をブラッシュアップするための意見を提案する一方で、我々ふたりは、フランチャイズへの加盟はもちろん、自社ビルの1階に飲食店をオープンするなど、ゼロからイチを創り上げていく方向性で提案しましたが、役員会の中でも意見が二分化してしまったんです。思ったようにいかない、であれば、世代交代という意味も込め、ふたりで会社を辞めて起業しようという結論に至りました」(伊藤)
広告代理店時代、フランチャイズ事業がスタートしたばかりの本部に対して、コンサルのような業務を請け負っていたことから、独立するのであればフランチャイズでスタート。中でも、自動車業界に特化した広告代理店に勤めていた経験を生かして、あるふたつの事業に的を絞って検討を進めていきます。
「VIPカーが流行った時期もあれば、現在はハイブリッド車や電気自動車をはじめとしたエコカーの時代。各年代で目まぐるしくトレンドが変化してきましたが、自動車産業自体がなくなることは考えられません。さらに、車離れが叫ばれて久しい現在、『車は必要なときだけ借りて利用する』という概念に変わりつつあります。そういった背景から、『レンタカー』とアメリカで需要が高まっている『カーシェア』に狙いを定めました」(伊藤)
そんなときに出会ったのが、ほかでもない「ガッツレンタカー」だったのです。
「長期レンタル」の需要を確かめるために本部直営の大宮店を見学
善は急げという思いから、すぐに「ガッツレンタカー」のフランチャイズ本部に連絡。その数日後には本部の開発担当と会うことに……。2015年12月のことでした。
「当時は、ガッツ・ジャパンの設立から1年ちょっと、フランチャイズ事業がスタートして10ヶ月ほど。既に関東エリアでオープンしているのは、千葉県の松戸店と本部直営の大宮店の2店舗だけということで、早期に参画するメリットを感じました」(伊藤)
その後は、収支シミュレーションを提出してもらったり物件を探したり、ほぼほぼ加盟する方向で検討。疑問点や不安なことがあれば、開発担当者に連絡をして解決する日々……。しかし、“ある1点だけ”どうしても納得いかなかったのです。それは、ガッツレンタカーの強みでもあり、最大の特徴でもある、長期レンタルの需要が本当にあるのかどうかでした。
そこで、2016年1月に伊藤と太田は、本部直営の「ガッツレンタカー大宮店」を見学。実際の店舗を訪れ、自身の目で確かめることにしたのです。
「長期レンタルをした車が延長を繰り返して戻ってこないと聞いていたんですが、それが果たして本当なのか……これは信じられなかったですね。実際に大宮店を見学させていただき、ホワイトボードに書かれてあった顧客リストを見させていただいたときは唖然としました。こんなに需要があるものだったんだ……と」(伊藤)
すべての不安や疑問が払拭されたことで、大宮店を見学してから数日後には加盟。その後は、春休み需要に間に合わせるため、3月中のオープンを目指して奔走することになるのです。
「加盟が決まってからは法人を設立したり、店舗の物件や駐車場を決めたり。さらに、電話やインターネットなどをはじめとしたインフラ関係などの準備に追われながらも、お客さんに貸し出す状態まで車を仕上げないといけなくて。ただ、ここで手を抜くとリピーターにつながらないので、新車までとは言いませんが、時間を掛けてそれに近い状態までぴかぴかに磨き上げました」(伊藤)
そして、晴れて2016年3月18日に「ガッツレンタカー船橋店」がオープン。しかしオープン早々に、ある出来事に見舞われるとは、この時の伊藤は知る由もありませんでした。
GW需要を読み間違え、14台の長期契約をふいにした悔しさを教訓に
準備に追われながらも、オープン前にして長期をメインに10件近い予約が入るなど、順調な滑り出しをみせた「ガッツレンタカー船橋店」。オープンしてからもその勢いが止まることはありませんでした。
「本部からは『オープンの時点で30台を目安に車を準備してください』と言われていました。とはいえ、15台あれば足りるという判断で、オープンまでに準備した車は16台。蓋を開けてみたら全然たりなくて。オープンからわずか1週間の間に、急ピッチで10〜12台を仕上げました」(伊藤)
そして、オープンから約1ヶ月が経ったGW直前、長期レンタルの需要を少なく見積もっていた伊藤と太田にある悲劇が降りかかるのです……(!)。
「GWに向けた予約が殺到したことで、長期レンタルのお客さんを14件も断ってしまったんです。車があれば貸せるのに、空いてなかったばかりにお客さんを逃してしまいました。こんなに早く予約が埋まってしまうとは思っていなかったので、うれしい反面、本当に悔しかったですね」(伊藤)
この教訓を生かし、その後は毎月7台くらいのペースで増車。にもかかわらず、GW需要が終わった6月から7月に掛けても車が足りない状況が続きます。そして、夏休み需要を迎える8月には、トータルで60台近い保有台数に到達。オープンから5ヶ月目にして、あるうれしい誤算が生じることになるのです。
「加盟する以前に開発担当の方から収支シミュレーションを提出してもらったんです。それを元に、店舗の立地条件やエリアの特性などを加味した独自の収支シミュレーションを2年分作成しました。そのシミュレーション上で2016年12月に達成するはずの売上を、8月の時点でクリアしてしまったんです。融資を受けた銀行に話したら、かなりびっくりしていました(笑)」(伊藤)
その後も「ガッツレンタカー船橋店」の勢いはさらなる加速をみせ、12月には、ある記録を打ち出すまでに成長するのです。
安かろう悪かろうではなく「徹底した洗車」でお客さまに感動を
オープン早々、車が足りなくなるまでに予約が殺到した「ガッツレンタカー船橋店」。2016年12月には、当時の加盟店45店舗の中でトップの売上を達成します。
さらに、2017年2月に名古屋で開催された「第1回ガッツレンタカーFORUM」では、当時の加盟店50店舗の中から最優秀店舗を決める「ベスト・オブ・ガッツ」にノミネート。残念ながら、最優秀店舗は大阪市内に店舗を構える「ガッツレンタカー十三店」へ譲るかたちになってしまいましたが、3店舗しか選出されない名誉ある賞にノミネートされた背景は、日々の努力の積み重ねにあったのです。
「同業他社と比較すると極端に料金が安いので、『どんな車?』『何年式?』『本当に動くの?』などといった問い合わせをいただくことも……。ですが、実際に車を見ていただくと、あまりのキレイさに驚かれるお客さんが多くいらっしゃいます。ですので、安かろう悪かろうではなく、安いからこそ、同業他社と比較しても劣らないような車をお出しする努力をしています」(伊藤)
そのためにも、「徹底した洗車で感動していただく」ことを意識して日々取り組んでいると伊藤は言います。では一体、徹底した洗車とはどういうことなのでしょうか?
「簡単に言うと、エンジンルームの中やサンバイザー周辺など、目に見えないところまでピカピカにするということなんですよね。外装をはじめとした目に見えるところをきれいにするのは当たり前。では、そうじゃないところも綿棒や歯ブラシを使ってきれいにしましょうよ、と」(伊藤)
こうした日々の努力により、口コミやリピーターを獲得して右肩上がりに売上を伸ばしていった「ガッツレンタカー船橋店」。そして何よりも、“格安”を謳うガッツレンタカーだけに、1契約あたりの単価アップは売上を伸ばし続けるためにも欠かせない取り組みです。
「車の状態により料金が安い順に『A1』『A2』『A2プレミアム』といったグレードがあるんですが、たとえばA2で予約が入った場合でも、A2の隣に年式も新しくてきれいなA2プレミアムの車を並べておきます。お客さんにご案内する際、『たまたま今回プレミアムが1台納車したんですけど、一度ご覧になりますか?』とお声がけするんです。すると、3割くらいのお客さんがA2プレミアムにグレードアップされますね」(伊藤)
こうしてオープンから1年以上が経った現在でも好調をキープ。近々では東京都足立区に2店舗目を計画中です。そして、2018年内の3店舗目のオープンを目標に、これからも走り続けます。
※掲載情報は取材当時のものです。