新品の販売ではなく中古品を取り扱うことの楽しさを知った前職時代
「じつは、独立して『買取大吉』のフランチャイズに加盟する前に、広告代理店系のフランチャイズに加盟したんです。でも、まったく芽が出なくて加盟から3ヶ月で撤退したので、加盟金やロイヤリティなどで600万円ほどの損失になりました(笑)。一方、直後に加盟した『買取大吉』は1号店がオープンした2014年6月から、3店舗全店で一度も赤字になっていませんよ」(室井オーナー)
そう話すのは、愛知県で「買取大吉」を3店舗運営している室井オーナー。株式会社e-NAの代表取締役を務める人物でもあります。
そんな彼のファーストキャリアは、パソコンショップの販売員。「買取大吉」のフランチャイズに加盟するそもそものきっかけになったのが、ここのパソコンショップでの経験でした。
「最初は新品のパソコンを専門とする店舗に配属されました。全国の精鋭たちが集まる花形の店舗だったんですが、いかんせんみんなやる気がないんですよね。『ラクをしてやっていこう』みたいな人たちばかりで刺激がないというか……。なので辞めようとしてたんですが、そんなタイミングで中古パソコン専門店に配属されたんです。上司に恵まれたのもありますが、新品のパソコンを販売しているときとは違って刺激的な毎日でしたね」(室井オーナー)
新品のパソコンと中古のパソコン——。販売しているものはどちらもパソコンですが、何が彼を奮い立たせたのでしょうか。
「まず、中古のパソコンは新品よりも利益率が高いんです。買い取りをしたら中古品として商品化するために、修理などをして手間をかけますよね。要はその手間賃が乗っかってくるので利益率が高くなるんです。あとは、中古のパソコンは新品と違って、ふたつとして同じ商品はありません。なかには、廃盤になって中古しか出回っていない商品もあるんですよ。そういうのは利益率がぐんっと上がって想像以上の値段で売れることもあります。オークションでの買付も経験させてもらったりと、ただ売るだけでなく買付や修理など工夫できることがたくさんあって、リサイクルは夢がある商売だなって思ってましたね」(室井オーナー)
パソコンショップで2年ほどキャリアを積んでいた室井オーナーでしたが、社内ベンチャーで立ち上がった子供向けレジャー施設の管理・運営を行う会社に転籍。新たなキャリアを歩みはじめることになるのです。
未経験でもはじめられるフランチャイズで独立を決意
「転籍した子ども向けのアミューズメント施設で2年くらい働いたあと、また別の子供向けのアミューズメント施設を管理・運営している会社に転職しました。独立する直前まで、8年ほど在籍していました」(室井オーナー)
大学生のころから独立志向のあった室井オーナー。前職で取締役として従事するなどさまざまな経験を積んだのち、あることをきっかけに独立へと歩みを進めます。
「アミューズメント施設を管理・運営している会社で8年働いていたうちの7年間は、取締役として働かせてもらっていました。取締役なので経営陣のひとりではあるのですが、何か新しいことをやりたいってなったときに最終的に決定権を出すのは代表取締役ですよね。どうしても自分でやりたいことがあるのなら、会社を立ち上げるのが一番だと改めて感じました」(室井オーナー)
これをきっかけにフランチャイズでの独立を視野に動きはじめた室井オーナー。フランチャイズに対してネガティブなイメージを持つ人も少なくないなか、どうしてフランチャイズを第一に独立を考えたのでしょうか。
「たとえばキッズ向けのアミューズメント施設でしたら、これまでの経験を活かしてオリジナルでも起業できたかもしれません。でも、前職には感謝の気持ちもあるので、同じ業種で起業するつもりはありませんでした。
あとは経験という点で、パソコンのリサイクル事業で起業する案も頭をよぎりましたが、業界から離れて10年も経っているので、新しい機種もたくさん発売されているし、最初から勉強してって考えると時間も手間もかかりますよね。そうなるとノウハウのないところからのスタートになるので、未経験でできるフランチャイズが最善だと考えました」(室井オーナー)
そうしてたどり着いたのが広告代理店系のフランチャイズ。しかし、その他にもリサイクル関係はもちろん、介護や飲食も選択肢のひとつに入っていたと振り返ります。
「パソコン販売で経験がありましたし、リサイクル系はずっとやりたいと思っていました。介護系は今後のマーケットを考えて候補に挙がったんですが、自分が本当にやりたいことではないな、と。飲食は素人でも手を出しやすいと思ったんですが、それこそコロナみたいな外的要因で売上が大きく左右される業種でもありますからね」(室井オーナー)
7〜8社の買取系フランチャイズから厳選して「買取大吉」に加盟
2013年に念願の独立を果たし、ポータルサイトの広告代理店という新たなキャリアを歩みはじめた室井オーナー。広告掲載数が増えれば増えるほど収益が積み上がるストック型ビジネスということで、意気揚々と営業活動をスタートさせます。しかし広告掲載数は増えるどころか、損失のほうが雪だるま式に膨れ上がっていき、わずか3ヶ月で撤退する決意をするのです。
「3ヶ月で7~8件しか契約にはつながりませんでした。未経験でどういった部分が課題なのか分からなくて、本部の方とロールプレイ形式で研修などもしてもらいましたが『問題ない』と言われるんです。でも契約にはつながらない。すでに加盟金などの初期費用で数百万円払っているだけでなく、収益がなくても毎月のロイヤリティだけで20~30万円ほどお支払いしているので、初期投資の回収どころかやればやるほどマイナスが増えていく状況でした。これはもう名古屋というエリア的に刺さらない商材なんだと割り切って諦め、3ヶ月で撤退することにしました。600万円くらいは損失が発生しましたね」(室井オーナー)
そこで次のビジネスを探していたときに出会ったのが「買取大吉」でした。
「名古屋で開催されたフランチャイズの展示会に行ったんです。『大吉』を含めて7~8社の買取専門店がブースを出展していたので、気になる何社かを回って比較検討しました。そのなかでも、サポートの手厚い『大吉』が気になりましたね」(室井オーナー)
「買取大吉」では加盟して最初の1ヶ月のサポートを最も重視し、週に3回ほどSV(スーパーバイザー)が店舗を訪問します。この1ヶ月の間に査定や運営のノウハウを徹底的にレクチャーしてくれるのです。
たいていは展示会の後に個別で開催している説明会に参加し、事業の概要を聞いたり疑問点を質問してから加盟するのが一般的なフランチャイズ契約までの流れです。しかし室井オーナーはそれだけでは物足りず、買取大吉をフランチャイズ展開する株式会社エンパワーの社長や、活躍している先輩オーナーに直接会って話を聞かせてもらうことを志願しました。
「本部から紹介してもらい、名古屋市内にオープンして4~5ヶ月のオーナーさんから話をお聞きしたのですが、最初の3ヶ月は赤字だったとおっしゃっていたんです。でも、収益化の見込みについて詳細を聞いてみたら『顧客も少しずつ付いてきているので手応えはかなりある』と。しかも、他店舗展開まですでに考えているとおっしゃっていたんです。実際に活躍されているオーナーさんからそういった話を聞いて加盟しようと思いましたね。大吉に限らずフランチャイズ加盟を検討しているなら、自分が納得するまで本部の社長なり、オーナーさんなりに話を聞くのがいいと思いますよ」(室井オーナー)
そうして「買取大吉」にフランチャイズ加盟したのが2013年。その後の2014年6月に1号店となる「買取大吉 星ヶ丘店」をオープンさせるのです。
「初期費用はトータルで1100万円くらいだったと思います。物件探しに少し時間はかかりましたが、大吉のように大きい本部だと、個人では借りられないようないい物件を紹介していただけるんですよね。その結果、オープン初月からたくさんのお客さまにお越しいただき、3~4ヶ月でリピートしていただける方が増えはじめました。一度来店くださった方のうち約6割には再びご来店いただいていますね」(室井オーナー)
事業に適した物件を紹介してもらえるのは、フランチャイズに加盟するメリットのひとつ。なかでも大吉は、本部で何度も議論を重ねた上で妥協のない物件をオーナーに紹介しているため、開業初期から集客や売上が見込めるのです。
近所に競合店がオープン!売り上げを回復させた“とある戦略”とは
1号店がオープンした1年半後には2号店の「ヨシヅヤ犬山キャスタ店」、そのまた1年半後には3号店の「春日井バロー高蔵寺店」をオープン。どの店舗も一度も赤字を出すことなく順調に売上を重ねていきました。
「もともと多店舗展開しようとは考えていましたが、ヒトに恵まれなければ1店舗で小さくやっていくしかないとも思っていました。でもヒトにも恵まれ、気づいたら順調に3店舗を展開していました。それぞれの店舗に社員をひとりずつ配置し、私は週に1度ずつそれぞれの店舗にシフトに入っています。パートさんも含めて8人で3店舗を回している感じです。定休日もあるので休みも取れてますよ」(室井オーナー)
順調そのものといった室井オーナーですが、もちろんリユース市場の盛り上がりとともに競合が近所にオープンすることも珍しくありません。競合店のオープンによって閉店まで追いやられる店舗もあるなか、室井オーナーはどのように戦ってきたのでしょうか。
「1号店のオープン当時も少し離れたところに大手の買取専門店がありましたが、あまり気にしていませんでしたね。その後も競合店がオープンしては潰れてって感じで、生き残るところは限られていました。2018年くらいにすぐ近くに大手の買取店がオープンした時は、売上に少し影響したので戦略を変えました。競合店と同じようにブランド品や貴金属をメインにするのではなく、お酒や古銭、切手などに力を入れて差別化を図ろうと。この戦略にしてからはかなり良くなってきましたね」(室井オーナー)
しかし、ここでまたしても大きな壁が室井オーナーの前に立ちはだかります。世界中で猛威を振るっている新型コロナウイルスの感染拡大です。
「戦略を変えて売上が戻ってきたタイミングでコロナの感染者が増えはじめて……。2020年2月くらいから急激に来店数が減り、最大で3~4割は減りました。その後、少しずつ戻ってきたと思ったら7月に愛知県独自の緊急事態宣言が発令されてまた減って……。2020年11月くらいから第三波が来ていますが、こちらはあまり影響を受けておらずコロナ前の8~9割まで戻ってきてますね」(室井オーナー)
3つの店舗すべてで打撃を受けている……というわけではなく、むしろコロナによって売上が上がった店舗もあったそうです。
「1号店の星ヶ丘店はコロナの打撃を受けてますが、2号店は2割ほど減ったくらいで、3号店にいたってはむしろ調子良かったですね。個人的な見解ですが、エリアによってバラツキがあるのと、駐車場のある店舗かどうかで変わるんじゃないかと思っています。コロナ禍で公共交通機関を避ける方が利用を控えていたようですが、いまでは売上も戻っているので一時的なことでしたね」(室井オーナー)
将来的には10店舗以上を展開することを見据えているといいます。これまで度重なる困難に見舞われても、戦略を変えるなどして立ち向かってきた室井オーナーなら、リサイクル業を楽しみながら達成してくれるでしょう。
※掲載情報は取材当時のものです。