2014-11-21 小説で起業ノウハウを学ぶ!FCビジネス起業物語
フランチャイズ研究会 中小企業診断士
楊典子 |
フランチャイズ研究会執筆『フランチャイズでカフェ開業。脱OLで好きを仕事に』
カフェチェーン本部の説明会へ。
起業物語の登場人物
井崎香奈(42歳):埼玉で両親と同居、中堅企業で人事総務を担当。37歳の時にあこがれだったカフェのオープンを目指すも、資金面などで断念。今は自己資金も貯まったものの、開業に向けた不安が多すぎて具体的な一歩が踏み出せずにいる。
家に帰ると香奈は早速パソコンを立ち上げた。
友人宅から帰る電車の中で、先ほど訪れた綾の樹カフェのウェブサイトはチェック済みだ。綾の樹カフェは2年前からフランチャイズを始めたようで、10店舗の直営店に加え、今は8店舗の加盟店があるらしい。フランチャイズ募集のページは1ページだけで、加盟金は250万円、ロイヤルティは売上の5%、内装費は20坪で500万円程度と書いてある。居抜き物件だともっと安く抑えられるとのこと。これだけの情報なのに、『加盟金』『ロイヤルティ』『居抜き』など、ちゃんと分かっていない言葉が多いことにショックを受けた。
「私、本当にフランチャイズのこと何も分かってない・・・。」
ネットを立ち上げ、まずはフランチャイズの基礎が分かるサイトを検索する。『加盟金』や『ロイヤルティ』、『居抜き』の他にも、『法定開示書』や『スーパーバイザー』など知っておくべきだろうと思われる言葉がずらりと並ぶ。一通り目を通した後で、綾の樹カフェのようなチェーンがあるかをつぶさに見ていく。本部の加盟店募集情報が容易に比較できるサイトなどを利用し、有名どころのカフェチェーンから小さなチェーンまで、一つずつ丁寧に見ていった。
「基準にしているお店の規模もまちまち。開業資金にも何倍もの開きがあるんだ!」
「チェーンでも、自分のアイデアも取り入れてもらえるところもあるのね」
「フルサービス型のカフェで、自分の意見が反映でき、個人でも加盟可能なところに、とりあえず資料請求をしてみよう。」
綾の樹カフェを含め、3つの本部に資料請求を申し込んだ。フランチャイズの基本書もネットで注文。気づけば時間は既に深夜を回っていた。
この時点では、フランチャイズに加盟してカフェを開くというイメージはまだ持てずにいた。でも「これを知っていれば」という後悔だけはしたくないという気持ちは強かった。成功しているカフェの仕組みについて学ぶことは、自分でオープンする際にも役に立つだろうという計算もあった。
資料は続々と届き、『加盟説明会』が最も間近だったAチェーンの説明会に行ってみることにした。フランチャイズ加盟の流れや、本部のチェックポイントは基本書でばっちり予習済みだ。とはいえ緊張は隠せない。
「無理矢理はんこを押せ!と強要されたりして・・・」そんなこともちらりと頭をよぎる。
会場は本部のあるビルの明るい会議室で行われた。自分の他に参加者は4組。受付や本部担当者の明るい対応に、先ほどまでの不安は一掃された。
内容はフルサービスカフェの市場情報から、Aチェーンの沿革、チェーンの特長や強み、そして収支モデルなどのお金の話へと続く。知りたい情報がコンパクトにまとめられ、すっきりと頭に入る。
その後の個別相談で必要資金について相談をすると、地元のエリアなら2000万円ほど必要となるとのこと。貯金では足りないと言うと、日本政策金融公庫の『女性、若者/シニア起業家支援資金』や都道府県の『制度融資』という低利でお金が借りられる制度を紹介された。なるほど、こんな制度もあるのか。
Aチェーンの話を聞いて、フランチャイズで開業することが現実味をおびてきた。
開業に際して一番心配だった『実務経験不足』や『店舗の立地選び』についてノウハウやサポートが得られるというのが何より心強い。仕入先やメニュー開発などに労力をかけず、自分が一番やりたかった顧客サービスの面に注力できるのも魅力的だと感じた。
しかし、Aチェーンの店舗は自分が開きたいものと少し違う。サラリーマンに愛されるお店というよりも、地元の女性達で賑わうお店にしたいのだ。もう一つのチェーンの説明会にも行ったが、やはり「このお店をやりたい」とまではならなかった。