事業再構築補助金の活用方法は?申請対象者や手続き、期間を解説

新型コロナウイルスの影響で需要や売上の回復が難しいという経営者に向けて、新しいビジネスに挑戦してもらおうというのが、2021年4月から受付開始された「事業再構築補助金」です。
とはいえ補助金といえば難しい説明が多く、自分は申請対象になるのか、申請の条件はなんなのかといったことがわかりくいもの。そこで今回は「事業再構築補助金」を簡単に紹介していきます。
事業再構築補助金の申請条件
事業再構築補助金を申請するには、大きく分けて3つの条件あり、この条件に当てはまっている中小企業・中堅企業・個人事業主・企業組合が対象となります。
1.売上が減っている
まず1つ目が申請前の申請前の直近6ヶ月〜今までの任意の3ヶ月の合計売上高が、コロナ以前の2019年1月〜2020年3月と比較して、10%以上減少していることです。
任意の3ヶ月の合計売上なので、好調が続いていても緊急事態宣言発令直後などで一時的に売り上げが下がった時期を含めることで条件に当てはまる場合もあります。
2.事業の再構築に取り組もうとしている
「事業再構築指針」に沿った新分野展開、業態転換、事業・業種転換を行なうことが2つ目の条件です。「事業再構築指針」についての詳細は後述しますが、基本的にはこれまで取り組んだことがない新しいビジネスであり、競合が多くない事業である必要があります。
また、再構築で取り組もうとしている事業が、3年以内にいままでの既存事業よりも大きな売上を上げるといったことも条件になるため、複数の事業のうちいくつかが順調である場合の申請は難しくなるでしょう。
3.認定経営革新等支援機関との事業計画の策定
事業再構築補助金の審査は、事業計画に基づいて行われます。そのため、中小企業に対して専門性の高い支援事業を行なう「経営革新等支援機関」とともに、事業計画を決める必要があります。
審査に通り補助金が入金された後(補助事業終了後)の3年~5年の期間で、付加価値額が年率平均3.0%以上増加、つまり3年計画だと9%、5年計画だと15%の増加が必須条件です。
付加価値額とは、営業利益に人件費と減価償却費を足したものです。人件費には、売上原価に含まれる労務費や、役員・従業員給与、外注費などが含まれます。
事業再構築指針に沿った新規事業例
業態転換
事業再構築補助金の対象となる方法の一つが、業態転換です。飲食業であれば、喫茶店の店内飲食スペースを減らしてテイクアウトを始めたり、レストランの一部を改修してドライブイン形式のテイクアウト販売を始めたりすることです。

事業転換
事業転換の例としては、航空機の部品を作っているメーカーがその技術を活かして医療用機器の製造を始めたり、観光バス事業者が高齢者施設向けの送迎サービスを行なう場合です。

非関連多角化
3つ目としては、業態転換や事業転換にあてはまらず、これまでの事業とまったく関連のない事業を始める場合です。飲食店を経営していた企業が、今後の需要を見込んで不動作事業を始める場合などが当てはまります。
まったくの異業種に参入することになるため、ノウハウや経験がないことが多くなるのでフランチャイズの活用なども選択肢となるでしょう。

非関連多角化など、未経験から新たな事業を始める場合はフランチャイズの活用も選択肢の一つです。事業多角化におすすめのフランチャイズブランドをまとめている特集もあるので、ぜひチェックしてみてください!
活用イメージ一覧
既存事業が飲食、小売、サービス、製造などどのような事業であっても事業再構築補助金を申請することができます。その他の活用例については、経済産業省のホームページより引用した下記画像からご確認ください。

事業再構築補助金ではいくらもらえるのか
事業再構築補助金の補助額は、中小企業の場合は補助額100万円〜6000万円で補助率は2/3、中堅企業の場合は補助額が100万円~8,000万円で補助率は1/2となります。
補助率2/3というのは、投資した分が全て補助されるわけではなく、例えば9000万円の投資をした場合は、6000万円の補助を受けることができる、ということを指します。
上記は通常枠でしたがその他にも特別枠として、中小企業には一定条件を満たした400社限定に補助額が1億となる卒業枠や、中堅企業には一定条件を満たした100社限定でグローバルV字回復枠というものがあります。それぞれさらに条件が厳しくなりますが、中小企業庁のホームページで一度確認してみてもいいでしょう。
補助額 | 補助率 | |
---|---|---|
通常枠 | 100万円~6,000万円 | 2/3 |
卒業枠 | 6,000万円超~1億円 | 2/3 |
補助額 | 補助率 | |
---|---|---|
通常枠 | 100万円~8,000万円 | 1/2 (4,000万円超は1/3) |
グローバルV字回復枠 | 8,000万円超~1億円 | 1/2 |
補助金の対象となる投資項目
事業再構築補助金は、ビジネスに必要なお金が全て補助対象となるわけではありません。下記の通り、基本的には初期投資といわれる資金が対象となります。
また、関連経費は主要経費に投資した上で補助額に満たない場合に対象となります。
主要経費
・建物(建築・改装)
・建物撤去費
・設備費
・システム購入費
関連経費
・外注費
・技術導入費
・研修費
・販促費
・リース費
対象外となる経費
・従業員の人件費
・従業員の旅費
・パソコン、スマートフォン
・フランチャイズ加盟料
・販売する商品の原材料費
・消耗品費
・光熱水費
・通信費
補助金公募期間と支払いまでの流れ
事業再構築補助金の公募は2021年内に5回を予定されており、4月15日に一次公募が実施されました。二次公募は5月10日から開始される予定です。
二次公募以降の詳細は決まっておらず、期間や公募回数が減る場合もあるため、公募の事業再構築補助金の活用を検討している方は、早めに事業計画を作成し、申請しましょう。
第二次以降の公募や申請方法、支払いまでの詳細な流れについては中小企業庁による「事業再構築補助金」の公式ホームページをご確認ください。
事業再構築補助金に関する注意点
事業再構築補助金は基本的に他の補助金と併用することはできません。しかし、内容の異なる別の事業がある事業者の場合は、ほかの補助金を受給することができます。
同一事業が国からの補助金を複数受給することはできないので注意しましょう。
ただし、基本的に複数の補助金を受給できなくても申請だけなら複数行なうことは可能となります。補助金の交付が決定したら、他の補助金の申請は辞退が必要ということです。
下記ではコロナ禍の補助金の一例として、「事業再構築補助金」と「新型コロナウイルス感染症特別貸付」を併用する際に、できる場合とできない場合をご紹介します。
併用できる場合
→【飲食事業】として事業再構築補助金を受給
→【建築事業】として新型コロナウイルス感染症特別貸付を受給
併用できない場合
→事業再構築補助金を受給
→新型コロナウイルス感染症特別貸付受給
(※申請だけなら複数行なうことは可能だが、どちらかの受給が決定した場合は辞退が必要)
また、補助金や助成金などの申請にはつきものですが、手続きの代行といって手数料を過剰請求するような悪徳業者も増えてくるため気をつけておくと良いでしょう。申請に関する支援を受ける場合は、1章でご紹介した国から認定を受けた「認定経営革新等支援機関」の中から探すようにしましょう。
事業再構築補助金はフランチャイズでもつかえる?
事業再構築補助金は、まったく異業種の事業に参入する場合も申請対象となるため、フランチャイズ加盟でも使えるのか?と疑問に思っている方もいるでしょう。
結論から言えば、フランチャイズでも事業再構築補助金を申請することはできます。申請には売上を見込める事業計画書の作成が必要であるため、すでに実績のあるフランチャイズなら説得力のある事業計画書を提出することができるでしょう。
ただし、フランチャイズなら必ず事業再構築補助金の申請に通るというわけではないので、もともと新規事業にフランチャイズを検討していたという方はせっかくだから申請してみよう、程度の心持ちでいるほうがいいでしょう。
まとめ
今回紹介した『事業再構築補助金』は、その予算規模の大きさから、コロナ禍で事業の立て直しに直面している法人や個人事業主にとって注目の補助金といえます。フランチャイズを活用した事業の場合も、事業再構築補助金の申請対象になっているため、事業再構築にあたりフランチャイズ加盟を検討している方は、補助金申請も検討してみてはいかがでしょうか。
ただし、給付金などと違い補助金を受けるための条件が細かく設定されており、申請に必要な書類の作成なども複雑なので事前の準備が必要になります。また、補助金が入金されるのは投資が全て終わったあとになるため、手元に資金がない場合はそもそも事業を始めることができません。補助金を当てにして事業を始めるのではなく、あくまでもビジネスが好調になった場合のご褒美といった感覚でいたほうがいいでしょう。