2015-04-08 FC本部向け小説
行政書士
川本到 |
値段を決めるのはどっち??~販売価格の制約~
このコラムのポイント
例えばコンビニなどのフランチャイズチェーンで加盟店が値引きセールを行っていた場合。マニュアル化が命のフランチャイズシステムでは違法になる可能性もあります。ここではそんな繊細なケースについて、登場人物たちが立ち向かっていきます。
フランチャイズWEBリポート編集部
決めた!!真樹と別れる!!
何だか、そう決めたら、気分がすごく楽になって、俄然仕事をする気になってくるから不思議なもんだ。
最近では、わたるさんも少しずつ俺のことを信用してくれてるし、ちょっとしたことならわたるさんに相談しなくても、結論を出せるようになってきたし。
そんなある11月の出来事だった。
SVの今井さんが、後輩SVの吉村さんを連れて法務の席にやってきた。
「酒井、ちょっと相談してもいいか?」
やや深刻そうな表情の今井さん。
いつも底抜けに明るい人なだけにちょっと気になる。
「あのな、こいつ、担当の加盟店のところに言ったら、店の商品価格のことで、加盟店のオーナーともめたらしいんだよ。」
と言って、今井さんは吉村さんを指差した。
「価格のことですか???」
「うん、そうなんだよぉ。」
吉村さんはちょっと気が弱そうな、でもすごくいい人そうな顔をしている。
「神奈川の本厚木ってところにある本厚木店のオーナーなんだけどね、夏くらいから、うちの商品の価格が高いって言いだして、勝手に割引セールとかはじめちゃったり、先月あたりから勝手に商品の価格を下げて商品を販売し始めちゃったんだよ。」
「へぇ…。そりゃヒドイっすね。」
「うん。それで、僕も困るから、オーナーさん、商品の価格は守ってくれないと困るんですってことを何度も言ったんだけどね、まったく守ってくれないわけ。
それで、今井さんに相談したら、契約で価格を守れって書いてあるんだから、契約違反で解除の可能性があるって言ってみろって言われたから、そう言ってみたんだ。」
え??契約書にそんなこと書いてあったか??
慌てて俺は契約書をめくり始めた。
1.加盟店は、顧客に提供する料理やサービスの品質または水準を常に一定に保つように努めなければならず、チェーンの統一維持のために最大限の努力を傾注する義務を負う。
2.チェーンの統一性および信用を保持するため、加盟店は、本件店舗におけるメニューその他の商品およびサービスの提供に際し、次の事項に従うものとする。
2-1.本部が指定するメニューその他の商品およびサービスの提供を行うものとし、本部が事前に書面で承認した 場合を除き、加盟店独自の商品およびサービスの提供を行わないものとする。
2-2.本部が提示した標準提供価格を基準に商品およびサービスを提供するものとする。ただし、加盟店は本部と 協議の上、地域事情や競合等の特殊要因により特別もしくは臨時に標準提供価格以外の提供価格を設定 することがある
2-3.本部が定めたマニュアル等に記載する製造方法・接客方法に基づき商品の製造、提供を行い、加盟店独 自の製造方法、接客方法等を行ってはならない。
2-4.本件店舗において、第三者が何らかの商品を販売し、または何らかのサービスを提供することは行ってはならない。
3.本部が、メニューおよび価格等を改定するにあたっては、加盟店は異議なくこれに従うものとする。
確かに、それっぽいことは書いてある。
でも「標準提供価格」だし、一応本部と相談の上で独自価格がOKになっているからなぁ…。
この辺に何かちょっとしたワナが潜んでそうな気がする。
「ヨシムラー、お前、それで本厚木店のオーナーに、独禁法違反を指摘されたろ??」
突然、わたるさんが自席から声を掛けてきた。
エッ??
独禁法違反?
「そ、そうなんですよ。『お前、独禁法違反で公正取引委員会に訴えてやるから覚悟しとけよ!!』と怒鳴られたんです。」
吉村さんは、今にも泣きそうな顔で答える。
「いやぁ、俺もちょっとビビっちゃってさぁ。何しろアドバイスしたの俺だから…。」
今井さんも弱り顔で答える。
俺にはさっぱりよくわからない。。。
何で独禁法違反になるんだろう???