フランチャイズ加盟開発で役立つ法務がわかる
行政書士川本到
2015-01-13 FC本部向け小説
行政書士 川本到

天敵・小田原店、再び!!~フランチャイズ契約と信頼関係破壊の法理~

 このコラムのポイント

この章では、月々の支払いが遅れている加盟店、小田原店をどのようにフランチャイズ本部がどのように対処するのか?主人公の法務スタッフ、酒井青年が上司のわたるに相談したところ、意外とも思える答えが返ってきました。不動産契約とフランチャイズ契約には共通した部分があるようです。

フランチャイズWEBリポート編集部


9月になったのに、まだ暑い日が続く。いい加減に冬よ来い!!
わたるさんは相変わらず絶好調で、一日一回は「ばかやろー」と言われ、もはやその程度は慣れっこになってきたし、契約書もだいぶ一人で作れるようになってきた。
うーん、俺って成長してる?

9月も終わりに近づいたある日、SVの今井さんがやってきた。
「酒井、ちょっといいか?」
最近では、今井さんはわたるさんの所にいかないで、やたらと俺をかわいがってくれる。
「はい。どうぞ。」
「あのさぁ、小田原店、覚えてるだろ?」

忘れるわけがない。
あのオーナーとだけは二度と話したくない。

「あそこのオーナー、相変わらず金払い悪いんだ。」
と今井さんは話してくれた。

あのオーナー、俺との電話では「ちょっと待ってくれ」って言ってなかったっけ?
嘘つき!!

「で、もうこの1年以上、支払いが何度も遅れてて、そろそろどうにかしないと、俺もやばいのよ。だから、ちょっと力貸して欲しいんだけど。」

今井さんの頼みは断れない。
この前も、キャバクラに連れて行ってもらったばっかりだ。
日ごろの恩返ししなきゃ。

「俺で役に立てるなら、いつでも!」
「悪いな。その代わり、あの店のななちゃんとセッティングしてやるからさ!」

声がデカイ…。
わたるさんに聞かれたら、シャレにならない。
が、“ななちゃん”の報酬は魅力的すぎる…。

「小田原店なんだけど、売上も悪いし、そろそろ限界だと俺は思ってるのよ。だからこの際、フランチャイズ契約解除できねぇかなぁと思っていて。」
と今井さんがフランチャイズ契約書を見ながら思い切ったことを提案してきた。

第●条(無催告解除)
 加盟店が次の一に該当する場合には、本部は何ら催告なくして本契約を解除することができるものとする。
①本契約または本契約に附随して本部と加盟店間で締結した契約に基づく加盟店の本部に対する債務の履行がなされない場合。
  (後略)


うん。書いてある!!

俺は契約書を示しながら今井さんに話した。
「フランチャイズ契約書でも、このように書かれています。支払いがなかった状況であれば、その時点で契約書上は解除可能ですね。」
「お前も、ずいぶんと立派になったなぁ!」
「ええ、わたるさんに鍛えられましたから!」
と応じて、二人でニヤッとしてしまった。

行政書士 川本到

外食系上場企業の法務担当、有名飲食チェーンの法務担当者、法務部門責任者などを経験し、2008年4月に行政書士登録。行政書士川本法務事務所を設立。主に、フランチャイズに関する法務コンサルティング、海外進出支援を中心とした業務を行っている。所属は、神奈川県行政書士会、中小企業診断士協会東京支部フランチャイズ研究会、国際取引フォーラムなど。日本経済新聞社主催のフランチャイズ・ショーや福岡県新生活産業多店舗化事業でセミナー講師、「フランチャイズ本部構築ガイドブック」(同友館)や「FCチェーンの海外展開ハンドブック(フランチャイズ研究会)にて著作の実績あり。