九州の老舗菓子メーカーが「アパホテル」のフランチャイズに加盟した理由とは?
2018年に某ホテルFCからアパホテルへのリニューアルオープン(リブランド)を果たした「アパホテル佐賀駅南口」。加盟したのは、老舗菓子メーカー「竹下製菓」のグループ会社「竹下コーポレーション」です。竹下製菓といえば、誕生から50年以上愛され続け、地元の佐賀県だけにとどまらず、“九州のソウルアイス”とまでいわれる「ブラックモンブラン」を生み出した菓子メーカーです。
この記事では、アパホテルのフランチャイズに加盟した竹下製菓株式会社の竹下真由 代表にインタビュー。リブランドに至ったきっかけや、「アパホテル」に決めた理由、加盟後の変化などについてお聞きしました。
30秒でわかる「アパホテル」
海外を含めて400店舗以上を展開する「アパホテルズ&リゾーツ(以下、アパホテル)」。アパホテルといったら、派手な帽子を被った元谷芙美子代表を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
奇抜ともいえるブランディングで認知を高める一方、じつはアパホテルは、ホテル業界でいち早くデジタル技術を積極導入し、オペレーションの簡略化に着手。さらに、コロナ禍でトレンドになった「非接触」による自動チェックイン機を世界ではじめて開発したのもアパホテルなのです。
業界の革命児ともいえる「アパホテル」のフランチャイズには、異業種はもちろん、既存のホテルをリブランドするかたちで加盟するケースが多いのも特徴のひとつ。リブランドしたケースでは初年度から稼働率が30%アップしたほか、およそ4年で加盟前の売上の2.8倍を達成しているケースもあり、注目されています。
大学を卒業後、大手コンサルティング会社に入社。その後、2011年に家業の竹下製菓に入社。商品開発室長を経て、2016年に5代目として代表取締役に就任。
九州のご当地アイスで有名な竹下製菓
「竹下製菓」は菓子メーカーとして1927年以前に佐賀県で設立しました。会社を設立した当初からお菓子を作っています。そんななか、1969年に誕生した「ブラックモンブラン」というアイスがヒットしたおかげで、いまではアイスの会社と認識いただいている方が増えています。
そういっていただけるのはとても嬉しいですね。じつはアイスだけでも20種類ぐらい作っていて、ブラックモンブラン以外にも「ミルクック」や「トラキチ君」「おゴリまっせ」「しっとるケ」などを主力商品として売り出しています。
お菓子も10種類弱ほど展開しており、マシュマロが中心です。ただ、最近は砂糖とゼラチンで作る昔ながらのお菓子「フローレット」が、YouTubeで流行っているASMRで「食感がおもしろい」と取り上げていただくこともあって。思わぬところから認知が高まっています。
ホテル事業を拡大させるためにリブランドを決意
いまでこそ佐賀駅周辺はホテルなどもあって賑わっていますが、当時は駐車場ばかりだったと記憶しています。いまアパホテルが建っているここも昔は駐車場でした。
そこで、会長である父が「地域に賑わいをもたらしたい」「人が集まる場所を作りたい」という想いを込め、この地にホテルを建てようと考えたそうです。
もちろんそれまではずっと菓子メーカーとして歩んできたので、当然のことながらホテル運営のノウハウなんか持ち合わせておりません。ノウハウを享受いただくため、某ホテルのフランチャイズに加盟したと聞いています。
開業後は、まわりにどんどん新しいホテルが建って大変な時期もあったみたいです。でも、コロナ前の何年かはインバウンドなどで業界全体が活況でしたし、売上は十分に上がっていましたね。
そうなんです。「稼働率や売上を上げるため」というよりも、将来のことを考えた結果、アパホテルなど別のフランチャイズ加盟を検討し始めました。
簡単にいうと両社の方向性に食い違いが出てきたんです。というのも、もともとフランチャイズ加盟していた某ホテル本部の方針が、フランチャイズ事業を強化してどんどん出店していこうという流れではなかったんです。
一方の弊社としては、製菓事業と同様にホテル事業も伸ばしていきたいと考えていました。そうなると、取れる選択は2つで、某ホテルとのフランチャイズ契約を解除してオリジナルの事業で展開するか、ほかのフランチャイズに加盟するかでした。
そういうことも考えていましたが、そんなタイミングで、アパホテルのフランチャイズ事業説明会の案内状が届いたんです。おそらく2017年頃だったと記憶しています。そこで事業説明会に参加したところ、未来に向けたシステム面への投資、わかりやすくいうとデジタル化にもしっかり取り組んでいてパートナーとして心強いと感じました。
以前加盟していたフランチャイズよりもロイヤリティは高くなりますが、ホテル事業をより拡大していくと考えると、オリジナルで展開するよりはアパホテルのフランチャイズに加盟するのがベストだと考えました。
自社で開発するのは無理がありますからね。わたしが知る限り、業界内ではアパホテルがもっともシステム面で先をいっている。どこよりも進んでいるという印象を受けました。未来を見据えてきちんと先行投資をするビジネスセンスはもちろん、事業にかける想いや信念も感じました。
この先20年、30年かけて事業を拡大していくためにはアパホテルしかない。そう考えて、2018年にアパホテルのフランチャイズに加盟することにしました。
リブランドした結果、稼働率は変わらずに売り上げアップを実現
新規開業ではなくリブランドだったので、稼働していた既存の設備などはそのままに、まずはアパホテルの基本となる大型50インチテレビやオリジナルベッドだけ導入し、スモールスタートさせました。
クロスや床、扉などは最初のタイミングで変えてもいいですし、ある程度落ち着いたタイミングで変えてもいいといわれていたので、弊社の場合は1年ほど運営し、2段階目で壁紙やデスクを変更し、2020年4月にようやく全客室のリニューアルが終了しました。初期投資としてはざっくり4億円になります。
アパホテルに加盟した翌年の2019年は、過去最高に近いくらいの売上を記録しました。ただ、稼働率はそこまで変わってないんですよね。でも、さまざまなノウハウを注入いただいたこともあり、1室あたりの単価が上がって稼働率が変わらずとも売上が過去最高レベルに達したんです。
たとえば、団体客主体から個人客主体になると1室あたりの単価は上がりますよね。以前は法人契約や旅行代理店からの送客も多かったのですが、そうなると単価は下がってしまう。価格を上げたくても昔からの付き合いなので上げられなかったんです。
アパホテルにリブランドしてからは、こちらの条件をシッカリと提示したうえでご判断いただいています。また、いまはネットでご予約いただく個人のお客さまの割合が増えたので、稼働率はあまり変わらずとも売上が上がるようになりました。
そうなんです。それを実現できているのは、アパホテル本部のサポートがあるからこそ。たとえば、『じゃらん』などの予約サイトに掲載するときの見せ方ひとつ考えても、いま思うと以前はそこまで考えられていなかったな、甘かったなって。
というのも、アパホテルでは予約サイトに掲載するにあたってチェックポイントが30個くらいあるんです。掲載する画像の枚数や解像度などそれを全部クリアしないといけない。すべてのチェックポイントをクリアしてはじめて上位に表示されるんです。
はい。今までもなんとなくはやっていたんです。でも、それが正解なのか分からないのですべてが手探りでした。いまはアパホテル本部がゴールに導いてくれるので、かなり近道をしてベストな戦略でホテル運営していけている実感があります。 製菓事業を走らせつつ、さらにホテル事業を成長させていかないといけないので、アパホテル本部の力をお借りするのが最善だと感じています。
普段からノウハウを享受いただける点はもちろんですが、コロナ禍はとても心強かったですね。はじめてのことで誰もが手探りのなか、アパホテル本部は常に方向性を示してくれました。たとえば、ホテルで陽性者が出たときも本部の指示に従って対応できました。自社だけで判断したらそれが正解かは分かりませんが、相談すればベストな対応を指示していただけるので心強かったですね。
そうなんです。ホテルに宿泊していただく方が部屋に戻る前に買ったり、ロビーで待ち合わせする際に待ちながら食べたり。
あとは、ご近所の方がアイスだけを買いにきていただくことも結構ありますね。「コンビニに買いにいく必要がないので助かる」とよろこんでいただいています。
アパホテルのフランチャイズ2号店を大分県に!そのわけは?
早い段階で2店舗目は検討していましたが、たまたまご縁をいただいて大分県になった、というのが大きな理由です。
ただ、とても運命を感じていて、じつはブラックモンブランの認知度が九州のなかで大分県だけ圧倒的に低いんです。福岡県では100%の認知度で、それ以外の県も80〜90%の方に認知されているのですが、大分県だけなぜか65%くらいしか認知されていなくて……。
そうなんです。大分県の方々にも認知していただくためにはどうするべきかと考えていたタイミングということもあって。大分県で2店舗目をオープンしたら認知を高められるきっかけになるかもしれない。そう思って大分県に2号店をオープンしました。
その点に関して不安はありませんでした。ビジネス利用のお客さまは遠方からくることがほとんどです。アパホテルは全国的に知名度が高く、累計で2000万人を超えるアパカード会員様が全国のアパホテルにご宿泊をされています。そうした方々が大分にご宿泊の際は指名検索してご予約をいただけるわけですから。
ゴールデンウィークは良かったのですが、その後は少し苦戦をしいられてしまいました。ただ、スーパーバイザーからさまざまなアドバイスをいただき、それを実行することで2022年8月は目標に到達しつつあります。
先程もいいましたが、ロイヤリティは以前フランチャイズ契約していた某ホテルよりも高くなっていますが、その分のサポートなどはしっかりとしていただいています。ホテルの建築中もサポートが手厚くて驚きました。
そうです。てっきり設計図を作って終わりかと思ったら、完成する最後の最後まで本部の担当者から細かい手直しが何度も入って。「こっちのほうが良いのでは?」「いや、このほうが……」という感じで。
1号店はリブランドだったので分かりませんでしたが、2号店は完全に新規なので身に染みて感じました。「ここまでこだわってやってくれるんだ」と。
まだまだこれからですが、各所から「コラボレーションしたい」という声も挙がっているので今後に期待したいですね。直近でも、これまでも熊本県山鹿市とのコラボ商品「山鹿和栗ブラックモンブラン」を発売するなどしていて。大分県でも、今後、コラボ商品を販売することもあると思います。
製菓事業で成長を続けてきたのは間違いありませんが、ホテル事業もすでに20年以上展開しています。今後は売上の比率が半々くらいになるよう、よりホテル事業を成長させていきたいですね。
そのためにも、2号店の「アパホテル別府駅前店」をしっかりと軌道に乗せるとともに、ご縁しだいではありますが、3号店の出店も進めていければと考えています。
「アパホテル」のフランチャイズ加盟店取材を終えて
10年の雑誌編集部経験を経て、2016年にフリー編集者・ライターとして独立しました。その後の2023年にオウンドメディア支援(記事制作代行)をメイン事業とする「株式会社Wordeal」を設立。“上位表示だけでなくCV獲得まで伴走型でサポート”をモットーに、フランチャイズWEBリポートをはじめ多くのWEBメディアで記事を制作しています。