フランチャイズ研究会 中小企業診断士木村 壮太郎
2015-04-03 小説で起業ノウハウを学ぶ!FCビジネス起業物語
フランチャイズ研究会 中小企業診断士 木村 壮太郎

フランチャイズ研究会執筆『元教師が家族とともにフランチャイズで悲願の学習塾開業

試行錯誤と新たな挑戦

 起業物語の登場人物

山川明男(42歳):東京都郊外の一軒家に住む、教育系出版社勤務のサラリーマン。パート勤めの妻、孝子(40歳)と中学2年生の息子、学(14歳)との3人暮らし。子供が好きで、昔は公立中学校の英語教師だったが、赴任した学校の環境が悪く退職。出版社に転職し、最近では教育関係のアプリの企画にも関わっているが、息子の将来への不安や、子供の教育への未練が残っている。


「さあ、待ちに待った開校日だ!!」

明男は胸を躍らせ、目の前の多くの生徒に喜びと希望に溢れて素晴らしいスタートを切ることに成功した…。

となれば万万歳だが、もちろん現実はそれほど甘くなかった。

開校時に入塾した生徒は全学年でたった6人。目標としている60人に全然届いていないのを見て、明男は真っ青になった。開校前の広告には50人近くの保護者から問合せが来ていて、塾の特長や教育に対する思いを熱く語り、その反応も悪くなかったことから多少期待していただけに、ショックは大きかった。

山井塾本部の担当者や、既存加盟店のオーナーからも、最初からすぐに生徒がたくさん集まることはありませんよ、とは事前に言われていたが、10人にも満たないとは深刻だ。

また、講師についても学生を中心に採用したのだが、講師の指導でなかなかうまくいかず、一人すぐに辞められてしまった。

生徒や講師の再募集をまたかけたいところだが、再度広告費が必要になってくるので痛いところだ。
ただやみくもに募集して、同じことの繰り返しになってはいけない。

おかしい。自分自身も精一杯、教育への思いを伝えたし、保護者の反応も悪くはなかった。一体何が原因なのか?自分の伝え方が間違っていたのか、ノウハウが悪いのか、開校した地域が悪かったのか…。様々な思いが駆け巡る。

孝子も明男の様子を見て、このままでは塾の経営が危ないと本気で考えざるを得なかった。

「大変だけど何とか乗り越えましょう。」

と励ましながら、まずは来てくれた生徒をしっかり指導することから始めるよう提案した。

しかし、新しい生徒は一向に集まらない。少しずつモチベーションも低下し、それが態度に出たのか、講師や保護者、生徒との関係もどこかぎくしゃくしてコミュニケーションもうまくいかなかった。不安に思われてしまったのか、生徒に早速1人辞められてしまい、5人になってしまった。

もっと集客しようと思い、本部の勧めるチラシや販促ツールを地域に配布するのと、近所の保護者達に挨拶周りもしてみた。また、うまくいっている他の塾の評判や様子を聞いて参考にした。しかし思うように生徒は集まらず、このままではもうだめだという気持ちが頭をよぎった。

しかし、自分自身で強く決心して選んだ道だ。うまくいかない原因を分析して、改善していく必要があるだろう。ただ、自分だけでは見えていない視点もあるかもしれない。

スーパーバイザーの訪問日。明男は担当である井上に、この八方塞がりの状況について率直に相談をした。井上は山井塾のスーパーバイザーの中でも、その指導力で評価が高く、他の加盟店オーナーからも彼の評判を何度か聞かされていた。

フランチャイズ研究会 中小企業診断士 木村 壮太郎

(一社)東京都中小企業診断士協会フランチャイズ研究会所属。大学卒業後リース会社や会計システム会社に勤務。HP運営やセミナーを担当しながら、顧客関係を深めるマーケティング活動を経験し、現在は中小企業診断士として活動。顧客価値の向上をテーマに、支援先のマーケティングやビジネスモデル構築を支援。フランチャイズ関連のWEB記事も執筆経験あり。