2014-11-14 小説で起業ノウハウを学ぶ!FCビジネス起業物語
フランチャイズ研究会 中小企業診断士
楊典子 |
フランチャイズ研究会執筆『フランチャイズでカフェ開業。脱OLで好きを仕事に』
自分のカフェを持ちたい!けれど・・・。
起業物語の登場人物
井崎香奈(42歳):埼玉で両親と同居、中堅企業で人事総務を担当。37歳の時にあこがれだったカフェのオープンを目指すも、資金面などで断念。今は自己資金も貯まったものの、開業に向けた不安が多すぎて具体的な一歩が踏み出せずにいる。
「で、念願のカフェはオープンしたの?」
5年ぶりの大学ゼミの同窓会で、真っ先に聞かれたのはこれだった。
「ううん、まだ。仕事が忙しくて。でも、少しずつ準備してるよ。」
オープンしたら絶対行くからね、という友達に、あいまいな笑顔でありがとうと伝えた。
5年前、37歳だった私(井崎 香奈)は結婚目前だった彼と別れたばかりだった。
周りの環境も自分自身も全て変えてしまいたくて、結婚資金として貯めた600万円をはたいて、漠然と憧れていたカフェ経営をやろうと本気で考えていた。でも、現実はそんなに甘くない。自分の思い描くようなカフェを作るのには1000万円以上は軽くかかること、未経験でのカフェ経営で失敗する人が多いこと、そんなことを知るほどに、ハードルの高さに心が少しずつ萎えていった。
今は中堅どころ建設資材の卸会社で人事総務を担当している。もう頭打ちだけれど、年収は450万円ほど。埼玉の実家暮らしのため、お金もあまりかからない。
仲間と過ごすのが好きだったので、食事やイベントにお金を使った時期もあったけれど、友達もすっかり家庭に落ち着いて、そんな機会もめっきり減ってしまった。
5年前は勢いに任せてカフェをやろうと思っていた。その夢は今もあきらめてはいない。
今の仕事は嫌いじゃない。職場も居心地がいい。でも、同じ顔ぶれの中で同じ仕事をし続けながら年を取っていくのかと思うと、このまま人生が終わってしまうような不安を感じてしまう。42歳になり、独りで生きていくということを真剣に考え始めたからかもしれない。
誘える友達が減った分だけ、ひとり旅の機会も増えた。1泊2日の近場の旅を3ヶ月に1度ほど楽しんでいる。旅先にあるカフェで、他のお客さん達が談笑する声をBGMに、ゆっくりと街の空気を感じるのが今の楽しみ。自分がカフェをするときの参考にと、ブログに旅先のカフェ情報を載せたりもしている。
私は人が好きなのだ。行き交う人の人生を想像するだけでワクワクする。人を元気づけたり、癒やしたり、気持ちを切り替えたりできるカフェを自分の手でやってみたい。「ありがとう」を直接伝え、「ありがとう」と言われる仕事がしたい。これがカフェをやりたいという夢の、原点のような気がする。