2014-12-19 小説で起業ノウハウを学ぶ!FCビジネス起業物語
フランチャイズ研究会 中小企業診断士
池田安弘 |
フランチャイズ研究会執筆『買取ビジネスへの挑戦・夫婦で取り組むセカンドキャリア』
本格的な創業準備。事業計画とビジネスモデルの検討
起業物語の登場人物
山本真一(54歳)、妻洋子(49歳) 東京の中堅商社に勤務。定年は60歳だが「体力に自信のある間にもう一度何かにチャレンジしたい」と考えるようになった。 これまでは仕事中心の生活で特に妻に負担をかけてきたので、これからは出来れば妻と一緒に働ける事業が出来ればと考えている。
2012年12月25日、最後の勤務を終えて、山本真一は1時間かけて自宅に帰った。通勤電車に乗るのもこれが最後と思うと、さすがに胸にこみ上げてくるものがあった。
真一の正式な退職は2013年3月末日だが、会社の制度として早期退職を選択したものには有給の消化とリフレッシュの名目で3ヶ月の休暇が与えられる。
(考えてみれば社員を大切にしてくれた会社だったな)
「なぜ早期退職を選択したんだろう」という思いも、電車に揺られながら浮かんできたが
(そう、妻である洋子と一緒に新しいビジネスの取り組むんだ。大切なことは、洋子と一緒ということだ。)と独立への思いを強くする。
木曜日に受けた創業相談でのアドバイスを思い出していた。
相談対応はいつものYさん。Yさんは57歳、真一と年齢も近く家庭の状況など良く理解してくれる。
毎月1回商工会議所で創業相談を担当しているベテランのコンサルタントだ。
相談時間は1時間。計画の整理など準備をしてゆかないと肝心なことを聞く前に、あっという間に時間が過ぎてしまうことに2回目、洋子と一緒に行った相談の時に気づいた。
この前の木曜日が3回目の相談。事業計画を事前に作って相談したが、「さっぱり分かりません」とYさんには酷評されたのだった。
Yさんに厳しく指摘されたのは「山本さんはまだ事業構造の理解が出来ていない」ということ。
「山本さんが、なぜ買取ビジネスで成功すると考えるのかがこの計画書では全然理解できない。」とまで言われた。
「前回、奥さんは、“一緒にやるのもいいなと思うようになった”とは言われましたが、“一緒にやりたい”とは言われませんでしたね?投資額は1千万円以内とも言われました。なぜだと思いますか?」
「奥さんはまだ、本当にはあなたの船に乗っていませんよ。」
「この計画では、私が奥さんでもあなたの船には怖くて乗れない」
Yさんの言葉が次々に浮かんでくる。
(そう・・・、なぜなんだろう・・・。)
真一はとりとめも無く考え続けていた。
「新しいビジネスを始めることに不安があるかい?」と真一は洋子にたずねた。
「当たり前よ。あなたがビジネスを始めたいということは分かったけど・・・。でも、具体的にはどんなビジネスなの?買取と言っても、買い取るだけではお金はどんどん出て行くわ。お金に替わるのなら不要になったものを売りたいと思う人が多いだろうということも分かる。でもそれをどうやって利益に変えるの? 買取だけじゃお金は入ってこないわ。」
洋子はたたみかけるように問いかけてきた。
「あなたは、一緒にやりたいというけど、私は何をするの?あなたの計画の中で私の役割はなんなの?それが分からないと、一緒にやれるかどうかも分からない。」
(これがまだ船に乗っていないということなのか・・。)
Yさんの言葉を思い出す真一。