2015-02-06 小説で起業ノウハウを学ぶ!FCビジネス起業物語
フランチャイズ研究会 中小企業診断士
角田 博 |
フランチャイズ研究会執筆『未経験の脱サラ・リペア起業。お客様に感謝される仕事がしたい』
転職活動に苦戦中・・・、それとも起業という選択肢?
起業物語の登場人物
鎌田一平:妻子をもつ36歳。PCサポートを担当するサラリーマン。将来に不安を感じている中、ふとしたきっかけでリペアFCでの起業に興味をもつが・・・
3月末のまだ少し寒さの残る土曜の朝。首都圏郊外のC市のアパートでは、すでに引越業者の2人の男たちがガタガタと荷物を運び入れていた。その傍ら、鎌田一平(36歳)は室内の窓際でスマートフォンの画面を渋い表情で眺めていた。
(またダメだったか・・・)
転職応募先からの返信メールだった。
今日は別居していた妻の裕美(33歳)と息子の勇人(5歳)が帰ってくる日。当初の予定では勇人が小学生になるこの春には少しでも条件のいい会社に転職できているはずだったのに…。
(ふー・・・)
自然とため息が漏れる。
鎌田一平は中堅どころのコンピュータサービス会社の契約社員だ。ユーザーが使用するPCのヘルプデスクを担当していた。お客様の会社に常駐して、情報システム部門の代わりに、PCの操作説明、故障時の対応など雑多な仕事を担当していた。
実は数年前から一平は将来について不安を感じてきていた。
いくら自分では頑張っていても景気の影響で契約を打ち切られるかもしれない。
また、今の現場はお客様の店舗が24時間営業しているため、サポートエンジニアも交代シフトで24時間サポートをしなければならない。若い頃は仕事と割り切っていられたが、このまま続けられるのだろうかと考えるようになった。
それに、結婚して生活の価値観が変わったことも大きい。今の仕事も決して嫌いではない。PCで困っている人を手助けして感謝されるのは何よりのやりがいだ。
しかし一方で、やりがいや報酬だけでなく、家族との時間も大切にしたい。C市は一平の実家にも近く、子供の頃から慣れ親しんだ場所だが、今の現場は遠く通勤時間も長くなってしまっていた。本当はC市近くにいい会社があればいいのだけれど…。
こうしたことから一平は数年前から転職を考えていた。ただ、それがいまだにはっきりとした形にならない。家庭を持っている以上、大きく収入を落とす訳にもいかない。
「すみませーん!これはどこに置いたらいいですかー?」
引越業者の声に一平は慌ててスマホから顔を上げて返事をした。
そう。妻の裕美と息子の勇人が帰って来るんだ。それは素直に嬉しい。
裕美と勇人は妻の実家のある山口県に1年間帰っていた。お義母さんを介護する必要がでてきてしまったためだ。だが、最近はお義母さんも状態がかなり良くなったそうで、ようやく裕美たちが帰って来れるようになった。
「パパ、もうすぐ勇人も小学生なんだから、お仕事の方、しっかりね!」
以前に裕美がよく話していた言葉を思い出す。
転職の件は数年前から夫婦の懸案事項だった。裕美の期待もよく分かる。だからこそ裕美たちが居ない間に転職活動に専念してきたのに。結局こんな日にも転職のことを心配しなければならない状況だった。
ガガガガガ・・・・・ッ!!!
衝撃音で一平は我に返った。