フランチャイズ加盟開発で役立つ法務がわかる
行政書士川本到
2015-05-13 FC本部向け小説
行政書士 川本到

研修は誰のため??~加盟研修と労働はどう違うか~


真樹に別れ話をしたら、大泣きされました。それでつい情に絆され、まだ別れられずに一緒に住んでる俺。

あー、なんで仕事でもプライベートでも、こうも弱気なんだ、俺。
情けない。。。

で、今日のお客様は、営業本部の早坂部長だった。

「わたるちゃん、今日の夜って空いてる?ちょっと飲みに行かない?」

「よしおさん、申し訳ない。今日はちょっと厳しいんだよ。」

部長同士がファーストネームで呼び合う軽い会社(笑)。

と思ったら、わたるさんは俺をチラッと見て

「よかったら、こいつ連れてく?うちの連中がよく行くキャバクラのななちゃんって子のところに連れて行けば、喜ぶよ。」

へ??わたるさん、そんなフリはないでしょーーー!!!

「酒井、お前、一年生の分際でキャバ嬢狙いかぁ?まぁ、じゃあ、近いうちにわたるちゃんと酒井と三人でななちゃん見に行くか。」

とか早坂部長まで笑ってる。

もう、勘弁してくださーーーーい(汗)

「冗談はさておき、ちょっと相談事があるんだけど、夜が無理なら今いいかなぁ?」

早坂部長はここで本題に入った。

「実は、再来月にオープンする加盟店の従業員が今、西新宿店に研修で入っているんだけどね、今朝そこの加盟店の社長から電話をもらったんだよ。で、いきなり『お前のところは研修生にロクに研修もせずに、研修生を直営店の労働力として使ってるだろ?そのくせ高い研修費とって、どうなってるんだ?』って、結構怒りをぶちまけられたわけよ。」

ハァ。そんなこと言う奴いるんだ。
そんな奴加盟させなければいいのに…。

「なるほどね。まぁ、ありそうな話だなぁ。」

わたるさんは余裕の表情で早坂部長の話を聞いている。

「でさぁ、俺もいろいろ考えたんだけど、確かに研修って言ってもOJTみたいな実地の研修って、実際に店舗で働いてもらうわけだから、労働と研修の境目って見えにくいよな?これって法的にはどこか線引きできるわけ?そのオーナーにどうやって説明すればいい?」

早坂部長は矢継ぎ早に質問を投げかけてきた。

「酒井、お前、どう思う?」

わたるさんは、さっそく俺にムチャ振りしてきた。

でも、この程度なら慣れたモノだ。既に僕の中では答えができていた。

「雇用契約があるかないかで労働と研修の違いを分けられるんじゃないすか?直営店の労働者なら雇用契約が存在するわけですから直営店のための労働で、加盟店の研修生は直接うちが雇用しているわけではないからそれは直営店のための労働じゃないって理屈だと思うんすけど…。」

自信満々で答えてみた。
が、あっさり早坂部長にひっくり返された。

「じゃあ、うちの直営店の研修生は、ありゃ雇用関係だから研修じゃないって理屈か?それに、そんな説明オーナーにしてみ。間違いなく『じゃあ、俺が雇用している従業員のことは俺が決める。研修しなくていいからさっさと帰せ!!』って言われるよ。」

た、確かに…。
雇用契約って切り口はいいと思ったんだけどなぁ。

行政書士 川本到

外食系上場企業の法務担当、有名飲食チェーンの法務担当者、法務部門責任者などを経験し、2008年4月に行政書士登録。行政書士川本法務事務所を設立。主に、フランチャイズに関する法務コンサルティング、海外進出支援を中心とした業務を行っている。所属は、神奈川県行政書士会、中小企業診断士協会東京支部フランチャイズ研究会、国際取引フォーラムなど。日本経済新聞社主催のフランチャイズ・ショーや福岡県新生活産業多店舗化事業でセミナー講師、「フランチャイズ本部構築ガイドブック」(同友館)や「FCチェーンの海外展開ハンドブック(フランチャイズ研究会)にて著作の実績あり。