独立・脱サラ前に見るインボイス制度

フランチャイズWEBリポート編集部 |2024年01月25日 公開 (2024年08月31日 最終更新)
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個人事業主などを対象に、令和5年10月からインボイス制度が実施されました。インボイス制度はこれまで多くのメディアなどでも話題になりましたが、具体的にどのような制度なのか、まだわかっていないという方もおられるのではないでしょうか。

そこで今回は、インボイス制度がどのような制度かを詳しく解説します。独立や脱サラを考えている人は必ず内容を把握しておきましょう。

「インボイス制度」をわかりやすく解説!

まずはインボイス制度がどのような制度なのかを解説します。

そもそも消費税の納税のしくみとは?

インボイス制度を理解するには、消費税の仕組みについても理解しておかなくてはなりません。

消費税とは、消費者が製品・商品やサービスの販売で負担し、販売者である事業者が納付する税金のことです。消費税は、所得税や住民税などの、税金を負担する人と納める人が一致する「直接税」とは異なり、事業者などを通じて納める「間接税」となっています。

つまり、事業者は、消費者から預かった消費税と、仕入れの際に負担した消費税の2つの消費税を負担することになります。この二重課税を防ぐための仕組みとして、「仕入税額控除」の仕組みが用いられています。

仕入税額控除について、具体的な例で解説します。

コンビニで100円のジュースを販売する際、消費者は消費税8円を含めた108円をコンビニ側に支払います。コンビニが50円でジュースを業者から仕入れた場合、消費税込みで54円です。

コンビニは税務署に消費税を納める際、課税売上の消費税から仕入れにかかった消費税を引くため、税務署に納付するのは4円になります。
このように、課税売上の消費税から仕入れにかかった消費税を差し引く制度が「仕入税額控除」です。

この仕入税額控除を適用しない場合、じっさいにジュースにかかった消費税は、仕入れにかかった4円の消費税と、消費者が支払った8円の消費税で合計12円になります。つまり、本来必要な納税額以上の消費税を納める「二重課税」になるのです。

インボイス制度と仕入税額控除の関係は?

インボイス制度と仕入税額控除には密接な関係があります。

2019年10月以降、消費税には8%と10%の2つが混在し、計算が複雑化していました。そこで適格請求書に明記することで消費税額を正しく算出するために導入されたのがインボイス制度です。適格請求書のことをインボイスと呼び、さまざまな記載事項が設けられています。具体的な内容としては、適格請求書発行事業者の登録番号、8%の軽減税率と10%の標準税率を区分した適用税率、税額などです。

インボイス制度では、課税事業者が取引相手から発行された適格請求書を受領・保存、帳簿することで、仕入税額控除が受けられるようになります。ただし反対に、取引相手から適格請求書が発行されなかった場合は、課税事業者が税額を負担しなければなりません。

なお、保存方法は紙のままでも電子データでも構いませんが、電子保存をする場合は電子帳簿保存法で定められた要件を満たすことが条件です。

適格請求書(インボイス)の記載内容とは?

適格請求書の様式は法令などで定められているわけではありません。そのため、必要事項が記載されていれば、形式に関係なく適格請求書として認められます。つまり、請求書という名称でなく、納品書、領収書などであっても問題ありません。また、手書きであっても適格請求書として認められます。

適格請求書に記載する事項

(1)発行事業者の氏名または名称および登録番号
(2)登録番号
(3)取引年月日
(4)取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
(5)税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜または税込)および適用税率
(6)税率ごとに区分した消費税額等
(7)書類の交付を受ける事業者の氏名または名称

これから脱サラ・開業する人は、どんな対応が必要?

これから脱サラ・開業を考えている場合、インボイス制度についてどのように対応するのかを考えなければなりません。

「課税事業者」と「免税事業者」のどちらかを選ぶ必要がある

年間の課税売上高に関係なく、インボイスの交付には税務署で登録申請書を提出して「適格請求書発行業者」になることが条件です。

課税事業者と免税事業者には下記のような違いがあります。

免税事業者

年間課税売上高1000万以下(前々年、前々年度)で、消費税の納付が免除されている事業者のこと。

ただし特定期間の課税売上高、または給与などの支払いが1,000万円を超えた場合は基準期間の売上高が1,000万円以下でも該当する課税期間から課税事業者になる。

課税事業者

年間課税売上高1000万超で消費税の納付義務がある事業者のこと。

今後新たに脱サラ・開業する人の場合、基準期間の課税売上がないため、基本的に2年間は免税事業者になります。しかし、免税事業者であっても課税事業者になることは可能です。そのため、今後のことを考えてどちらを選ぶのかを決めねばなりません。

「免税事業者」となる場合、どのような影響があるか

免税事業者になる大きな特徴は、「適格請求書が発行できない」ことと「消費税を納めなくてよい」という2点です。

消費税を納付しなくてよいと聞くと、メリットのように感じるかもしれませんが、実はそれほど単純な話ではありません。 取引先が免税事業者の場合は特に影響はありませんが、課税事業者が取引先の場合、インボイス制度で仕入税額控除が認められる適格請求書を交付できないため、取引先が税額を負担することになります。

つまり取引先は課税事業者に比べて免税事業者との取引には多くの税金を負担することになるのです。そのため、免税事業者との取引を打ち切る企業や、値下げの交渉をされる可能性があります。

ただし、課税事業者になると、これまで益税として利益になっていた売上分の消費税から仕入れに係る消費税の差額を納税しなければなりません。

免税事業者が課税事業者になる場合は、どちらにもメリットとデメリットがある点を覚えておきましょう。

「課税事業者」となった場合、どのような影響があるか

免税事業者とは反対に、課税事業者は適格請求書を発行できることが最大の特徴です。

適格請求書が発行できることで、課税事業者との取引もしやすくなります。
また、仕入れ先が課税事業者だった場合も、適格請求書を仕入れ先から受け取ることで仕入税額控除が利用できるようになります。

消費税の納税義務はありますが、消費税分を考慮した価格設定にすれば大きな影響を受けずに済むかもしれません。ただし、税周りの計算が複雑化することや、確定申告に手間がかかることに注意が必要です。

インボイスなんて無理!という人は…負担を軽減する措置もある

免税事業者、課税事業者のどちらにもそれぞれメリットとデメリットがあります。課税事業者になりたいと考えていても、制度の内容や手続きに不安がある方もいるでしょう。

そんな方は、要件を満たせば利用できる簡易課税制度があるので検討してみてはいかがでしょうか。

課税事業者は簡易課税制度も利用できる

簡易税制度とは、一般課税(本則課税)のように、仕入れにかかる消費税をいちいち計算する必要がなく、売上にかかる消費税だけを計算すればよいという、消費税の計算を簡素化した制度です。

具体的には、売上げの税額に事業区分ごとに定められた「みなし仕入率」をかけ、仕入れの消費税額の計算を行う方法です。仕入れ先からの適格請求書も必要ありません。しかし、自分が適格請求書を発行する際には事業者登録が必要です。簡易課税制度を利用する場合でも適格請求書発行事業者の登録は必須と考えておきましょう。

また、簡易課税制度を利用するには下記2点の要件があります。

・基準期間の課税売上高が5,000万以下であること
・「消費税簡易課税制度選択届出書」を事前に提出していること

簡易課税制度のメリット・デメリット

簡易課税制度のメリットはやはり計算が簡単で消費税の計算時に支払消費税額の管理をする必要がないため、従来の方法に比べて事務処理や書類作成の負担が少なく済むということです。

しかし、業種によっては、簡易課税より、本則課税の方で計算するほうが納税額が少なくなる場合があります。また、消費税は業種ごとに算出してもっとも低い金額で計算しなくてはならないため、複数事業を経営している企業の場合は事務負担が増加する可能性があります。

さらに、簡易課税制度では支出や設備投資の増加は考慮されないので、場合によっては税負担が増える可能性もある点に注意しましょう。

なお、簡易課税制度を利用する場合、届出をしてから2年間適用されます。途中で変更することができない点にも気を付けてください。

インボイス制度対応への支援措置

インボイス制度への支援措置は他にもあります。

2割特例

2023年度税制改正で新たに設けられた制度で、インボイス制度を気に、免税事業者から適格請求書発行事業者(課税事業者)になった人が対象です。

具体的にはインボイスがなくても仕入れや経費の消費税額を売上げの消費税額の8割とすることができる特例制度を指します。納税額が預かり消費税の2割程度に収まることから、2割特例と呼ばれるようになりました。先ほど述べた「簡易課税制度」を選択している場合でも、業種によっては2割特例を選択したほうが有利な場合があります。

なお、基準期間における課税売上高が1,000万円を超える事業者は対象外となります。

経過措置期間は6年間

仕入税額控除には、経過措置が設けられており、経過措置期間中は、免税事業者からの仕入れについても一定割合を控除することが可能となっています。経過措置期間はインボイス制度が開始されてから6年間となっており、期間によって割合が異なる点に注意しましょう。具体的な期間と割合は下記のとおりです。

期間 割合
2023年10月1日~2026年9月30日 仕入税額相当額の80%
2026年10月1日~2029年9月30日 仕入税額相当額の50%

インボイスに対応するための具体的な手続き

インボイス制度に対応するにはさまざまな手続きが必要です。 こちらで、具体的な手続きについて解説します。

適格請求書発行事業者の登録申請をする

まずは適格請求書発行事業者の登録申請をしましょう。具体的には、税務署に「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出し、審査を受けなければなりません。

申請方法はパソコン、スマートフォンでのオンライン申請と、書面による申請の2つがあります。書面で提出する場合は郵送の場合は管轄地域のインボイス登録センター、直接提出の場合は管轄地域の税務署と、提出先が異なります。

どの方法でも構いませんが、それぞれ審査の期間が異なる点に注意してください。また、e-Tax以外での登録ではマイナンバーカードや本人確認書類が必要になります

申請方法 審査機関
オンライン(e-Tax) 3週間
書面 1ヶ月半~2ヶ月程度

無事に審査が完了し登録が完了すると、直接・郵送での提出の場合は所轄の税務署から登録番号と手続き完了通知が発送され、e-Taxを利用して提出した場合はメールで通知されます。 既に取引先がいる場合は、登録完了の旨を通知しておくとよいでしょう。

システム導入は必須?

これまでご紹介してきたとおり、適格請求書発行事業者として適格請求書を発行するには、フォーマットにあった請求書を発行しなければなりません。手動での発行は書き間違い、記載漏れ、不正などのリスクも懸念されるため、必要に応じて適格請求書に対応したシステムを導入するなどの対応も考えなくてはなりません。

会計システムを導入する場合は、免税事業者と課税事業者の両方に対応できるよう、適格請求書とそれ以外の請求書を区分できる機能があるかを重視するとよいでしょう。

インボイス制度を正しく理解し、事業を始めよう

インボイス制度は手間がかかるものの、これから独立開業し、事業を行なう人にとって避けては通れない制度です。独立開業を考えているなら、まずはインボイス制度について正しく把握しなければなりません。「課税事業者」と「免税事業者」のどちらになるかを判断するためにも、制度内容の把握以外に取引先の動向を確認することも重要です。多くのことを考えなければならないので、負担に感じる人もいるかもしれません。もし1人で判断が難しい場合は、国税庁にはインボイス制度に関する相談対応をしているコールセンターなども設けられているので、相談してみるとよいでしょう。

フランチャイズで独立する場合は、本部が相談対応をしてくれます。後悔をしないためにも、本部と相談しながら進めてください。

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