クローズドマーケットを狙う! 福利厚生として活躍する「ヤマザキのコンビニ」の新たな側面
全国に50,000店舗以上展開され、街中や駅前など、どこへ行っても見かけるような飽和状態といわれるコンビニですが、まだまだ需要のある場所は存在します。それが病院や大学、オフィスビルの中など、これら外部から閉鎖された空間「クローズドマーケット」です。
そこで今回は、盛り上がりはじめたクローズドマーケットに、いち早く病院内コンビニとして出店してきたヤマザキのコンビニが、医療系展示会「国際モダンホスピタルショウ」に出展している理由と今後のコンビニの展開について、山崎製パン株式会社のデイリーヤマザキ事業統括本部 小池課長にお聞きしました。
病院内コンビニの店舗数No.1のヤマザキが出展する国際モダンホスピタルショウとは
今回デイリーヤマザキが出展していた展示会は、2019年7月17日(水)〜19日(金)の3日間にわたって東京ビッグサイトで開催された「国際モダンホスピタルショウ2019」。病院内の医療機器や医療ITシステム、介護・リハビリ用品を中心に出展され、健康・医療・福祉分野に従事する関係者に向けた展示会となっています。
3日間の来場者数は6万人を超えるこちらの展示会ですが、山崎製パンが展開するコンビニ業態が病院内施設として出展するのは、なんと今年で16回目!病院内などのクローズドマーケットが注目され始める前から進出していたため、病院内のコンビニとしてはNo.1の店舗数を誇っています。
そこで今回は、病院内コンビニの歴史と、現在進めているクローズドマーケットへの出店について、山崎製パン株式会社のデイリーヤマザキ事業統括本部 営業本部 開発部の小池一仁課長にお話を伺いました。
病院内にコンビニが増えている理由
病院に入院するって、ただでさえいつもと違う環境なのでストレスが溜まりますよね。それまで当たり前のよう行っていたコンビニにすら気軽に行けなくなる。とくに入院期間が長くなってくると、欲しいものを思うように買えないだけでストレスって溜まってしまいますからね。
一種の憩いの場としてコンビニが求められているんです。
それに、病院内でコンビニを求めているのは、入院患者さんだけではありません。お見舞いで病院を訪れる人たちの多くは、お見舞い前に手土産を購入しますよね。なかには、病院内の売店など購入する場合もありますが、入院に必要最低限の物のみを取り扱っているような従来の売店では、そういったニーズを満たすことができないんです。
もちろん患者さんのためというのもあるのですが、じつは、病院の経営者が従来の売店からコンビニに変えている一番の理由は、病院で働く医師や看護師をはじめとしたスタッフの福利厚生のためなんです。
病院の勤務って、一般的には2交代や3交代制だと思いますが、人材不足の深刻化もあり、夜勤と日勤が続いて実質24時間勤務をしているようなところもあるんです。さらに、一度白衣を着てしまうと気軽に外出できないだけでなく、もしできたとしても、大きい病院だと山奥にあったりするので、食料の買い出しにすら満足にいけませんからね。
そうですね。職場環境を整え、スタッフの働きやすさを改善するために、先進的な考えの院長先生が、病院内にコンビニを導入しはじめていますね。ですので、病院内にコンビニが増えているのは、半分は利用者のため、半分は働くスタッフのためなんです。最近ではコンビニだけでなく、病院内に出店する大手カフェチェーンや飲食チェーンなども増えてきましたよね。病院内に施設を増やすことが、一種の福利厚生のような考え方にシフトしていっているんです。
病院内コンビニの店舗数No.1のヤマザキ
もともと売店へ山崎製パンの商品を卸していたのですが、そのときに病院にもコンビニのような施設が欲しいっていう声が増えはじめたんです。
でも、当時病院内にあったような2坪とか3坪の売店だとコンビニに業態変更するには狭いので、最初は山崎製パンの品物も混ぜながら、街のコンビニに近い形で運営していました。
それが、ちょうどコンビニが増え始めた20年くらい前のことですね。
全国3,982病院のうち591病院にヤマザキのコンビニがあります。じつは、いち早く病院内コンビニの展開を始めていたため、全国にある7病院に1つはヤマザキが入っていて、病院出店のシェア率はNo.1なんです。
他のコンビニチェーンがあまり出店したがらない小さな病院でも、ヤマザキなら病院規模ごとの出店パッケージがあるので、それも関係していると思います。
デイリーヤマザキ | ニューデイリーヤマザキストア | ヤマザキYショップ | |
---|---|---|---|
ベット数 | 400床以上 | 300床以上 | 150床以上 |
院内施設人口 | 2,000名以上 | 1,500名以上 | 800名以上 |
商品数 | 約5,500品 | 約4,500品 | 約3,500品 |
焼き立てパン | あり | あり | あり |
病院内コンビニの場合は、入院生活に必要な商品があったり、車いすや点滴スタンドがある状態でも通れるようなユニバーサルデザインにするなど、病院ならではの施策はありますね。
あとは、規模や施設側の規則によって違いますが、焼き立てパンなどの店内調理ができない場合もあります。ただ、キッチンスペースは最低2坪から設置できるので、基本的には出店形態に関係なく焼き立てパンを提供していただけます。
患者さんとスタッフさんのコミュニケーションの場になっているようです。食事制限のある患者さんが、お菓子をレジに持って行って「それ買っちゃダメじゃない!」て言われてたり(笑)。
患者とスタッフという関係を超えて、コンビニのお客さんという同じ立場になることで、病院内の非日常的なコミュニケーションが生まれる場所になっていますね。
コンビニ各社が狙うクローズドマーケットの魅力
そうですね。最近は病院だけでなく、大手企業のビル内や、工場、学校の中といった外部から閉鎖された空間「クローズドマーケット」への出店が増えていますね。
2019年1月には、東京の浜松町にできた『日本生命浜松町クレアタワー』の3階にデイリーヤマザキがオープンしました。
これは、やはり福利厚生の面が大きいですね。特にお昼時のオフィスビルだと、高層階から外にあるコンビニに行って、レジの行列に並んで帰ってくるだけでも時間かかってしまいますからね。外に出なくてもコンビニに行ける、というのは職場環境をよくする面で重視されつつあります。
あと、ヤマザキのコンビニなら、施設内で焼き立てパンの匂いがするという非日常感が喜ばれますね。
コンビニは全国に50,000店舗あるので、飽和状態が迫っているということが一つありますね。路面店だと、どうしてもいい立地は競合が乱立しやすいのですが、施設内であれば競合が出店する可能性が低いんです。
また、施設内の方がリピーターとして利用してくださるので、安定した収益を実現しやすいといったこともありますね。営業時間は施設の規定に沿うので、基本的に24時間営業ではありません。
時代に合わせて変化し続けるデイリーヤマザキ
そうですね。商品ラインナップが豊富なので、お店に来るたびに新しい味が楽しめると、お客さまにも評判ですね。もちろん病院内コンビニでも焼き立てパンは人気ですよ。
また、加盟オーナーさんにとっても、付加価値として他コンビニとの差別化を図れますし、商品を売るだけよりも店舗で作って売るほうが収益になりますからね。「焼き立てパン」をやりたいからという理由で「デイリーヤマザキ」に加盟したオーナーさんもいらして、お客さまとオーナーさんがともに笑顔になれるのが魅力だと思います。
時代の変化に合わせて、クローズドマーケットへの出店を強化していく予定です。
ただ、ニーズに合わせて出店形式を変えていくことはもちろん必要ですが、ヤマザキのコンビニの特徴である焼き立てパンや作りたて弁当、おにぎり、サンドウィッチの店内調理は引き続き行なっていきます。店舗で手作りする商品『デイリーホット』は20年前からスタートしていますが、今後はさらに増やしていこうと取り組んでいるところです。
また、施設内に出店する場合は、景観に合わせて普通のヤマザキのコンビニとはちょっと違う看板にするなど、時代の流れによって少しずつ対応している部分はありますね。