廃業した場合も手続きが必要!個人事業主が知っておくべき廃業届の書き方や提出書類

事業がうまくいかなかった場合や、個人事業主から法人化するときに必要なのが、廃業届という書類の提出です。開業時に準備する書類の知識はあっても、廃業の手続きに関しては正しく理解できていないという人も多いのではないでしょうか。
廃業時には複数の書類を提出しなければならず、もし書類の提出を怠ると、問題が発生する可能性もありえます。そこで、この記事では個人事業主が廃業する際に必要となる廃業届について解説していきます。
個人事業主の廃業時に必要な廃業届とは
廃業届とは、個人事業主が自分の事業を廃止する際に提出しなければいけない書類です。正式名称を「個人事業の開業・廃業等届出書」といい、個人が新たに事業を開始した場合や事業を廃止した場合に、手続きが義務づけられています。書類自体は開業届と同じものです。
廃業というと、事業が失敗した・続けられなくなったなどのマイナスなイメージを多く持たれていますが、個人事業主から法人成りするときにも、廃業届を出さなければいけません。ほかにも、廃業時にはさまざまな届出書の提出が必要になります。
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廃業届の書き方とは?廃業理由の例も合わせて紹介
廃業届の手続きを行う際、用紙は所轄の税務署で取得するか、国税庁のホームページからダウンロードして印刷できます。
1.「個人事業の開業・廃業等届出書」という題名の「開業」という部分を、二重線で消す
2.書類を提出する税務署名を書き込み、提出年月日や納税地を記入
3.氏名・職業・屋号などといった個人情報を書き込む
4.廃業という項目を丸で囲んだあと、廃業の理由を明記
廃業理由の記入例:「法人成りしたため」「業績が悪化したため」「会社員になるため」など
廃業届の提出方法と提出期限は?2箇所への提出が必須
廃業届を不備なく作成できたら、書類の提出を行います。ただし、提出先は2カ所あるので、忘れずに両方へ提出するようにしましょう。また、廃業届の提出には期限が設けられているという点にも注意が必要です。
税務署への提出
提出先の1つ目は税務署です。提出の際は、納税地を所轄する税務署に廃業届(個人事業の開業・廃業等届出書)を持参または送付しましょう。提出義務の対象となる個人事業主は、事業所得・不動産所得・山林所得を得られる事業を経営している人です。廃業届の提出期限は、廃業した日から1カ月以内。提出期限の当日が土曜日・日曜日・祝日の場合は、それらの日の翌日が期限です。
都道府県税事務所へ提出
2つ目の提出先は、都道府県税事務所です。納税地を所轄する都道府県税事務所に廃業届を持参・送付する必要があります。しかし、書類の様式が提出先によって異なる点に気をつけましょう。たとえば、東京都の都税事務所に書類を提出する場合、様式は「事業開始(廃止)等申請書」となります。しかし、大阪府税事務所が提出先の場合、書類の様式は「事業開始・変更・廃止申告書」です。
また、廃業届の提出期限も提出する都道府県によって異なるので、事前に自分が納税している地域の税事務所に確認しておきましょう。
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廃業届を出さないとどうなる?廃業届は忘れずに提出しよう
廃業届の提出を怠ったとしても、大きな罰則は基本的にありません。ただし、廃業の手続きをしないことで、個人事業主として事業を継続していると判断される場合があります。その結果、税務署から確定申告の案内書類が毎年送られてきたり、電話による確認を行なわれたりする可能性があるでしょう。その後も放置していると、納税義務を果たしていないと見なされ、税務調査の対象になってしまう可能性もありえます。
また、青色申告を行っている事業者の場合、2年続けて確定申告を怠ると、青色申告の承認が抹消さえます。そうすると、事業に復帰したり新たに事業を開始しても、1年間は青色申告の申請ができません。
廃業時に提出する書類は廃業届のみではない!必要な書類一覧
個人事業主が廃業時に提出しなければいけない書類は、廃業届以外にもいくつかあります。事業主の状況によって必要となる書類が異なるので、自分がどのケースに当てはまるのか、よく確認して準備しましょう。
所得税の青色申告の取りやめ届出書
所得税の青色申告取りやめ届出書とは、所得税の納付に関して青色申告を取りやめることを報告するための書類です。確定申告において青色申告をしていた個人事業主は、廃業の際に所得税の青色申告取りやめ届出書を、所轄税務署に提出する義務があります。書類内の「青色申告書を取りやめようとする理由」という項目には、「廃業のため」と記載しましょう。書類の提出期限は、青色申告を取りやめる年の翌年3月15日までです。
事業廃止届出書
事業廃止届出書は、個人事業主のなかでも消費税を支払っていた課税事業者や、課税事業者を選択していた人が、廃業にともなって所轄税務署に提出する書類です。具体的な提出期限は設けられていませんが、速やかな提出が求められるので、廃業してから1カ月以内を目安に書類を提出するように心がけましょう。
所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書
所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書とは、予定返納額の減額を申請するときに提出する書類です。前もって予定納税を行っている事業主が対象となり、減額申請書を所轄税務署に提出することで、予定納税額を減額もしくは免除することが可能です。
申請する際は、申告納税額を見積もりしたときの資料が必要になるので、事前に用意しておかなければいけません。減額申請書を提出しなかった場合、廃業していたとしても事業継続時と変わらない額の予定納税が求められます。
給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書とは、従業員や事業専従者などを雇用し、給与を支払っていた個人事業主が所轄税務署に提出しなければいけない書類です。提出期限は、廃業してから1カ月以内となっています。
個人事業税申告書
個人事業税申告書は、廃業した年度に限り、所得税の申告とは別に手続きしなければならない書類です。所得税の確定申告をしている場合は必要ありませんが、廃業した年度は例外的に、廃業後1カ月以内に個人事業税の申告が求められます。廃業した年度に個人事業税の申告・納税を行っていないと、個人事業税を必要経費として扱えなくなるので注意しましょう。ただし、廃業時に手続きをしなかったとしても翌年に個人事業税が確定したあと、税額を再計算することは可能です。
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廃業した際の確定申告はどうすればいい?確定申告の期限
廃業した年度に確定申告が必要かどうかは、所得金額によって決まります。もしも廃業した年度において税務上の所得が黒字だったとき、確定申告を通常どおり行わなければいけません。廃業したあとは税額を算出し、確定申告が必要か否かを確認しましょう。
また、廃業したとしても、確定申告の期限や時期は変わりません。つまり、廃業した年度においても確定申告の時期は例年どおり「翌年の2月16日から3月15日」となります。期限内に確定申告を行わなければ、たとえ廃業していても重加算税が課されるので気をつけましょう。
廃業後にかかった費用の経費処理について
廃業後であってもオフィスや店舗の清掃費用・原状回復費用・転居費用、さらに設備や在庫の処分費用など、経費になる費用が発生する場合があります。ほかにも、従業員への給料や退職金・税理士や弁護士への依頼費用なども該当します。これらの費用は、所得税法に設けられた「事業を廃止した場合の必要経費の特例」によって、廃業後でも必要経費として計上可能です。計上できるのは、廃業した日が属する年度、またはその前年度の必要経費となっています。
新たな事業を行なうときのために、廃業届を出して再出発しよう
個人事業主が廃業する場合、廃業届を提出することが義務づけられています。青色申告や消費税の支払い、従業員の有無など状況によって必要となる書類や手続きが異なるので、自分がどのケースに該当するのかよく確認することが重要です。将来的な事業復帰や新たな事業開始を見据えて、きちんと廃業届に関する手続きを済ませておきましょう。
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