個人事業主なら銀行口座を事業用に!メリットや作成のポイントを徹底解説

事業主1人で経営をしている個人事業主は、利益などすべて自分のお金になるので事業用の口座を持っていないという人もいるかもしれません。しかし、個人事業主であっても資金の流れを把握し、さまざまな経理業務を全て自分で行なわなければいけないため、独立開業する際にはプライベート用と分けて、事業用で使用する口座開設が必要です。
この記事では、事業用口座を作成すべき理由やメリット、開設するための必要書類、作成時のポイントとなることなどについて紹介します。事業用口座と聞くと敷居が高く感じられるかもしれませんが、決して難しいものではないので、ポイントを押さえて開設を検討しましょう。
個人事業主は事業用口座を作成しておこう!
事業用の専用口座を開設し、プライベートのお金と分けておくことで、事業資金の流れを把握できるようになり、確定申告の帳簿付けがスムーズになるなど、さまざまなメリットがあります。また、屋号付きの口座を開設することで、取引先などから社会的な信用を得ることも可能です。個人事業主として活動する場合は、事業専用口座を開設するようにしましょう。
事業用の銀行口座とは
事業用の口座と言っても特別な口座を開設するわけではなく、銀行の普通預金口座で問題ありません。一般の口座と違う点は口座名義です。個人事業主の場合は屋号、法人の場合は会社名が口座名義になります。個人事業主が屋号で事業用の口座を作成する際は、ネット銀行やメガバンクが多く使われています。
プライベートと事業用の銀行口座を使い分けるメリット
大きなメリットは、お金の出入りが明確になるので、管理がしやすくなることが挙げられます。事業資金の管理は事業主として必須の業務です。事業用の銀行口座は売り上げや経費だけの入出金用にし、プライベート用と分けて経理処理をスムーズにしましょう。
また、確定申告に必要な帳簿作成を行なう際の作業が楽になる点もメリットです。確定申告を税理士にお願いする場合、プライベートに使ったお金について見られる心配もありません。
個人事業主の事業用口座の選択肢とは?
個人事業主の事業用口座の選択肢として、個人名義での通常口座と屋号付きの口座があります。ここでは、両者の開設方法の違いについて紹介しましょう。
通常口座と屋号付き口座の開設の違い
個人名義の通常口座は、インターネットや郵送などのさまざまな方法で開設することが可能です。口座を開設する支店にも制限がなく、直接来店すればすぐに口座を開設することができます。
屋号付き口座も、銀行の窓口で開設できるほか、ジャパンネット銀行(2021年4月よりPayPay銀行に商号変更)や住信SBI銀行など、実店舗のない銀行でもインターネットを介して口座を開設することが可能です。口座の開設には審査があるので、1週間ほどはかかると想定しておきましょう。また、地方銀行の場合は、屋号と個人名が入った口座名義になるケースもあるなど対応が異なるので、各銀行に確認が必要です。
屋号付きの口座を作成する2つのメリットとは?
プライベート用と事業用で、口座を両方持てば資金管理に便利なので分けるだけで良いと考えてしまうでしょう。しかし、事業用口座を屋号付きにするのには、さまざまなメリットがあるのです。
社会的信用が増す
前章でも触れたように、屋号付きの口座を開設するためには銀行の審査を通過する必要があります。そのため、屋号付きの銀行口座を持っていると、銀行の審査に通過しているという事実を証明することができ、社会的な信用が増し、取引先からの信頼を獲得することができるのです。
銀行によっては振込時に本名を伏せることが可能
お金を振り込むときには、送金先に本名を知られたくない場合もあるのではないでしょうか。しかし、屋号付きの口座は基本的に、口座名が「屋号 個人名」という形です。これですと、お金を振り込む際に本名も表示されてしまいます。どうしても本名を送金先へ知られたくないなら、口座開設する銀行によっては、必要な手続きを行うことで本名を伏せて振り込みを行うことも可能ですので、銀行の選択も考えるようにしましょう。
個人事業主の屋号付き口座を開設する時に必要な書類とは?
まず、屋号付き口座を開設するためには、屋号が確認できる書類として、開業届や確定申告書の写しなどが必要になります。もし、開業届の屋号を空欄のまま提出しているなら再度申請が必要です。しかし、確定申告を屋号名で申請しているなら、確定申告書の写しでも確認書類として扱われます。
本人確認書類は、住民票や印鑑証明証の原本を用意しましょう。また、屋号付きの口座開設に必要な書類は、各銀行によって異なるケースがあるため事前に問い合わせをして確認しておくことが大切です。
屋号付き口座開設の必要書類
屋号付きの銀行口座を開設する際に必要なのは、大きく分けると本人確認書類、個人事業主の確認書類、屋号で営業している事実を確認できる書類の3種類あります。それぞれを一覧にするので、作成する際は忘れないようにしましょう。
運転免許層 健康保険証 印鑑証明書 マイナンバーカード
国税または地方税の領収書または納税証明書 税務署収受印付の確定申告書 個人事業の開業・廃業届 個人事業開始申告書
営業場所の賃貸契約書 所得税や地方税の納税証明書または領収証 水道代や電気代などの公共料金の領収書
必要な書類は銀行によって異なりますし、確認書類は原本を用意するのか、コピーでも良いのかについても違いがあります。開設する銀行に事前に確認しましょう。こだわりがないのであれば、手間が少ない銀行で開設するのもひとつの方法です。
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個人事業主が事業用口座を開設する際のポイントとは?

個人事業主が事業用口座を開設する際のポイントとなることには、どのようなものがあるのでしょうか。ここでは、事業用口座の開設と並行してやっておくべきことを紹介します。
融資を予定している場合は地方銀行を選ぶ
開業に必要な資金を確保するために、銀行からの融資を検討している人もいるのではないでしょうか。融資を受ける場合、メガバンクだと審査のハードルが高いため、融資の相談がしやすい地方銀行を選ぶようにしましょう。そのためには、良い関係を築いておくことが大切ですので、メインバンクとしてさまざまなサービスを利用する必要があります。
事業用クレジットカードも同時に作成しておく
事業用口座を開設する際は、合わせて事業用のクレジットカードも作成しておくといいでしょう。クレジットカードも、事業用とプライベート用で分けておくことで、会計処理がスムーズになります。銀行口座のように店舗へ行かなくても、インターネットで申し込めるカードもあります。
事業用口座で支払う費用の仕分けを行なっておく
プライベート用口座から支払う費用と、事業用口座から支払う費用の仕分けを事前に行っておきましょう。例えば、住民税などはプライベート用口座からしておくようにします。また、通信費など毎月支払う必要がある経費は、事業用口座から自動で引き落としされるようにしておくと支払いの忘れも事前に防ぐことが可能です。
会計ソフトを活用する場合は口座と連携させておく
個人事業主として仕事をしていくなら、会計ソフトを活用しスムーズに会計処理を行えるように意識しましょう。会計ソフトでは、事業用口座や事業用クレジットカードを連携させることができるソフトもあるので、より会計処理の効率化につながります。
屋号付きクレジットカードの作り方
事業用のクレジットカードを作ると、カードによっては券面に屋号を表示できるものもあります。ただし、クレジットカードは屋号だけで作ることはできないので、個人事業主がクレジットカードを作る際は個人名義で契約しなければなりません。屋号付きのクレジットカードを作るには、まずは開業届を提出する際に屋号を記載して認められる必要があり、そのうえでクレジットカードの入会申し込みを行ないます。
また、クレジットカードには収入証明書を必要とするカードと必要ないカードがあるので、開業して間もない段階で屋号付きのクレジットカードを作るなら、収入証明書が不要のクレジットカードを選ぶと良いでしょう。
屋号付きクレジットカードのメリット
屋号付きのクレジットカードを持つことにより信頼性が高まりやすいのがメリットのひとつです。屋号を定めないまま事業を営み、個人名のクレジットカードを利用していると「名ばかり事業主」で本当は無職ではないかと疑われるケースもあるので、屋号付きのクレジットカードを作っておくメリットは大きいでしょう。
また、口座と同様に、個人名義のプライベート用クレジットカードと事業用の屋号付きのクレジットカードを分けておくことで、毎月の支出を管理しやすいメリットもあります。
おすすめのクレジットカード会社
アメリカン・エキスプレス・インターナショナル・インコーポレイテッド(h4) ステータス性の高さ、信頼性の高さ、充実の補償内容など、クレジットカードのなかでもトップクラスのブランドと言えます。ビジネス用に一般、ゴールド、プラチナの3種類が用意されており、一般カードでも他社に比べて年会費が高い傾向にあるものの、各種税金や経費の支払いに利用できる使い勝手の良さが魅力です。
三井住友カード株式会社
個人・法人を問わず豊富なカードラインナップを用意しているカード会社です。個人事業主に適した「三井住友ビジネスカード for Owners」は、満20歳以上なら個人事業主でも申し込みできますし、登記簿謄本や決算書が不要など、入会しやすさが人気です。
株式会社JCB
日本で唯一の国際カードブランドとして支持を集めるカード会社で、一般カードからゴールド、プラチナ、法人カードなどラインナップが豊富です。できるだけ年会費を抑えたい個人事業主には「JCB CARD Biz」、充実のサービスを希望するなら「JCB CARD Biz ゴールド」がおすすめです。どちらも法人の本人確認書類が不要でスムーズに手続きができます。
NTTファイナンス株式会社
NTTファイナンスは、クレジットカード業のほか、料金の請求や回収、債務保証など、NTTグループの金融部門を担う会社です。個人事業主向けのビジネスカードとして用意しているのは「NTTファイナンス Bizカード」で、充実のサービスを備えたゴールドカードと、年会費無料のレギュラーカードがあります。
株式会社オリエントコーポレーション
信販業界のトップ企業として認知度も高く、なかでもオートローンに強みを持っています。個人事業主向けの「EX Gold for Biz S」は、初年度の年会費が無料で翌年度以降の年会費は2,200円と、ゴールドカードとはいえリーズナブルな設定です。空港ラウンジも利用できるので、飛行機を利用した出張時も快適に移動できます。
個人事業主は事業用口座を作成すべき3つの理由
自分で事業を行ない稼ぐのだから、どちらにしても自分のお金だと考え、個人口座でも事業用口座でも構わないと考えてしまうのではないでしょうか。ここでは、どうして個人事業主が事業用口座を作成すべきなのか理由を紹介します。
資金の流れを明確に把握するため
独立開業して、事業を継続的に行って行くためには、資金の流れを常に把握しておく必要があります。例えば、来月はいくら入金されて、いくら支払いがあるのかなどの資金繰りを意識することが大切です。しかし、事業のお金とプライベートのお金が口座内で混ざってしまうと、事業においてどのくらいのお金が入ってきて、いくら出ていっているのか把握しづらくなります。
もし、資金が足りなくなり支払いが難しくなった場合、プライベート用と事業用に分かれていないと、どちらのお金の動きに原因があったのか分かりません。このようなことにならないために、事業用口座を別に作っておくと、資金の流れを把握しやすくなり資金繰りの改善も行なえるのです。
確定申告をスムーズに行なうため
個人事業主は納税額を決めるために、1月1日から12月31日までの1年間分の事業収支を、翌年の2~3月(日付はその年によって変わる)に確定申告する必要があります。確定申告の際には、収入や支出などがわかるように内訳も併せて申告するので帳簿付けが必要です。
しかし、プライベート用と事業用のお金を同じ口座で管理してしまうと、収支内訳の把握が簡単ではなく非常に面倒な作業となってしまいます。そのため、プライベート用と事業用で口座を分けておくと、事業の収入や支出を把握しやすくなり確定申告もスムーズに行うことができるのです。
税務調査時に通帳を開示する必要があるため
個人事業主として開業すると、稀に税務署の調査官による調査があり、事業で使用している口座の開示を求められることがあります。こういった場合でも、事業用口座を持っていると調査官から入出金の内容について問われたときに、スムーズに答えることができるのです。
また、確定申告で不透明な申告をしてしまった場合も、口座の開示を求められることがあります。もし、プライベートと事業のお金が同じ口座であったら、わかりにくいですし多くを質疑を受け、さらにはプライベートのお金の流れまで他人に見られてしまうのです。これらを回避するためにも、口座を分けておくことが良い選択だといえるでしょう。
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個人事業主の事業用口座を開設できるおすすめの銀行は?
個人事業主の事業用口座を開設できる銀行は、メガバンク・ネット銀行・地方銀行です。ここでは、各規模の銀行で口座開設する際の、メリットとデメリットを紹介します。
メガバンク
メガバンクは全国に展開しているため、口座を開設していると取引先からの信頼性が高くなります。また、窓口やATMの数が多いため、入金や出金も行ないやすいというメリットがあります。
デメリットとしては、振り込み手数料が高いのでコストが多くかかることです。また、事業資金など融資を受けたくても、メガバンクでは審査のハードルが高いケースもあります。
ネット銀行
ネット銀行のメリットは、パソコンやスマホを使ってオンライン上で取引を行うことができるため、窓口やATMに出向く必要がないということではないでしょう。また、振り込み手数料やATM手数料が比較的安いのでコストを抑えられるメリットもあります。
しかし、実店舗がないため不明点があった際は、窓口で問い合わせをすることができないということがデメリットといえるでしょう。
地方銀行
地方銀行は、その地域で独立開業している個人事業主に対して、親切に対応してくれるので相談しやすいというメリットがあります。また、メインバンクとしてさまざまなサービスを利用し、良好な関係を築くことで融資の相談を受けてくれやすくなるでしょう。
しかし、ATMや店舗の数がメガバンクよりも少ないため、全国規模で事業を展開していく予定なら向いていないと言わざるを得ません。
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会計処理のしやすさや社会的信用のために、事業用銀行口座を用意しよう
個人事業主として仕事をするうえで、金銭の流れは明確にしておく必要があります。そのため、プライベート用と業務用の口座を分けて管理するのがおすすめです。売り上げや経費だけを業務用の銀行口座で管理しておけば、事業資金の出入りが明確になるので経理処理が楽になるでしょう。
また、事業用の銀行口座があれば社会的な信用が高まりやすいですし、確定申告を税理士に依頼する場合、プライベートで使った金銭を見られることもありません。メリットが多い事業用の銀行口座ですから、開設を前向きに検討してみましょう。