ホテル開業に必要な資金や準備とは?基本から成功のコツまで徹底解説

大規模なイベントの開催や外国人観光客の増加(インバウンド)などを受けて、ホテルの開業を目指している人もいることでしょう。ただし、ホテルを開業するためには多くの準備が必要です。
また、開業にともない高額な初期費用も必要になるので、準備の途中や開業後に慌てるような事態となることを防ぐためにも、万全の準備は欠かせません。そこで、この記事ではホテルの開業に関する知識を紹介します。加えて、事前に知っておきたいホテル経営に必要な準備やリスク、フランチャイズに加盟するメリットについて解説します。
ホテルの種類
旅館業法で規定されている宿泊業には、ホテル・旅館・簡易宿泊所・下宿の4種類があります。そのなかでもホテルとは、主として洋式の構造や設備を持った10室以上を有した施設のことを指します。
代表的なホテルの種類は下記の4つです。
◆ビジネスホテル
◆シティホテル
◆リゾートホテル
◆カプセルホテル
ビジネスホテル
ビジネスホテルは、主にビジネスパーソンをターゲットにしているホテルです。価格が比較的リーズナブルで、シンプルな客室や基本的なアメニティが提供されており、宿泊に必要な最低限の設備が整っています。通常、交通の便が良い場所に位置しており、短期間の宿泊に利用されます。
シティホテル
シティホテルは都市部に位置し、観光やビジネスなど多様な目的で利用されるホテルです。ビジネスホテルよりも広い客室や高級な設備が提供され、レストランやバー・フィットネスセンターなどの施設も充実している傾向にあります。ビジネス利用だけでなく、家族旅行やカップルの滞在にも適しており、サービスの質も高いのが特徴です。
リゾートホテル
リゾートホテルは、観光地やリゾート地に位置し、滞在客がリラックスして過ごせるように設計されているホテルです。広い敷地や美しい自然環境に囲まれた場所にあり、プールやスパ・ゴルフ場・ビーチなどのレジャー施設が充実しています。長期間の滞在を目的とした豪華な客室やスイートルームが多く、ゆったりとした時間を楽しむためのサービスが提供されます。
カプセルホテル
カプセルホテルは、日本で誕生した宿泊施設で、主に一人旅やビジネスマンが短期間の宿泊に利用します。非常にコンパクトな個室(カプセル)が並んでおり、必要最低限のプライバシーと設備が提供されます。料金が安く、駅近くなど交通の便が良い場所に多い傾向があります。許認可上は「簡易宿泊所営業」の施設であり、基本的な宿泊のみを目的としています。
単独型経営とチェーン型経営の違い
さらに、ホテルの経営形態は大きく分けて単独型経営とチェーン型経営の2つにも分けられます。ここでは、2つの経営形態の特徴について解説します。
単独型経営
ホテルを開業する際には、ホテルの所有者、経営者、実際にホテルを動かしていく運営者と3つの役割があり、それぞれの役割を担った企業がホテルに関わりを持ちます。
単独型経営は、すべての役割を同じ企業が兼任する経営形態です。旅館やホテルなどの所有や経営、運営を同一企業が行うスタイルをいいます。国内のシティホテルの多くは、単独型経営を行っているのが実状です。
チェーン型経営
チェーン型経営とは、ホテルや旅館などをチェーン展開して経営する形態です。同一のブランドを掲げて複数のホテル施設を開業していく方法で、それによって各ホテルが利益などのさまざまなメリットを受けられるシステムです。
フランチャイズ方式により展開するチェーン型経営の場合には、単独型経営とは異なり、所有や経営、運営を分離させることが通常です。所有・経営・運営のそれぞれに知識や経験を持った専門家を配置します。そのため、資本的にも人的にもコストを抑えながら、効率的な経営ができるようになっているのです。
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ホテル開業の手順や許可・資格
ホテル経営に必要な申請や許可・資格について、旅館業法という法律に基づいて開業する必要があります。旅館業法は、ホテルや旅館の適正な運営を確保するために作られた法律で、営業するためには「旅館業営業許可証」が必要です。この許可証は、ホテルの営業を行なう都道府県の知事が交付します。取得方法は各自治体によって異なる場合がありますが、一般的な手順は以下の通りです。
1.事前相談
自治体によっては申請書を提出する前に相談することを求めているケースが多いため、まずは開業予定場所にある自治体の担当窓口に相談をします。
2.営業許可申請書の提出
原則として許可申請書、営業施設の図面、そのほか自治体が定めた書類の提出と手数料が必要です。
3.保健所による施設調査
構造基準と自治体の基準を満たした施設になっているのか、保健所の職員が目視で確認します。
4.営業許可証の交付
検査に合格すると保健所より許可が下り、ホテルを開業することができます。
5.営業許可
実際に営業をするにあたり、注意点がいくつかあります。まず、自治体ごとに決められている衛生管理の基準を守りましょう。また、宿泊者名簿の記載や外国人宿泊客のパスポートのコピーを保存する必要があります。
また、ホテルを開業する際の申請では、以下の要件を満たしている必要があります。
■客室の延べ床面積は33平方メートル以上あること
■入浴設備は宿泊客の需要を満たせる規模であること
■ホテルを開業できる用途地域に属していること
ホテルの開業に必要な資金
ホテルの開業に必要な資金には、設備資金と運転資金の2つがあります。
設備資金とは、ホテルとして使用する物件の取得費や建設費、ホテル内で使用する家具や備品の費用などを指します。ホテルのコンセプトによって必要な費用は変わります。たとえば、豪華な雰囲気を作りたい場合には、より高額な設備投資が必要です。
次に運転資金についてです。これは、ホテルを開業した後にかかる費用を指します。具体的には、従業員の給与や宣伝費、販売促進費、飲食物の仕入れ費用などです。

もし、知名度の高いブランドホテルのフランチャイズチェーンに加盟することを検討しているのであれば、10億円ほどの資金を準備する必要があります。
一方、地方で客室数が15~20程度のホテルを開業する場合には、場所や条件によって異なりますが、駅から離れている立地でも1500万円から3000万円程度の資金が必要です。
ちなみに、開業資金の内訳としては、以下のようになります。
【設備資金】:物件取得費、建設費(改装費)、什器備品費
【運転資金】:飲食費、人材費、宣伝費、販促費
開業後に十分な集客ができない場合でも、仕入れ費と人件費は継続的に発生します。そのため、これらの費用については、最低でも半年分を見積もっておくことが重要です。
ホテル開業の資金調達をする方法
ホテルを開業するための資金は高額になるため、投資を受けたり融資を受けたりして資金を調達するのが一般的です。
投資を受けるためには、まずは最難関とも言える投資家探しから始めます。思うように資金が集まるとは限らないものの、利用したくなるようなプロジェクトを立ち上げてクラウドファンディングで投資を募るのも良いでしょう。大きな金額を投資してくれる人が現れた場合、その人自身が経営に関するノウハウを有している可能性が高く、貴重なアドバイスを受けられる期待があります。
一方、融資は金融機関に申し込みをして必要資金を借り入れる方法で、主な申込先は銀行や日本政策金融公庫です。銀行から融資を受けようとする場合、多額の自己資金を用意できなければ審査が通らなかったり、経営者としての実績を求められたりするのでハードルは高いです。
日本政策金融公庫は、制度上は希望額に対して10分の1の自己資金が用意できれば融資が実行されます。経営者としての実績も求められないので、初めてのホテル開業で融資を検討するなら日本政策金融公庫に相談するのが無難です。
ホテル開業におけるリスク
ホテル開業には多くの魅力がある一方で、いくつかのリスクも伴います。これらのリスクを事前に理解し、適切な対策を講じることが成功への鍵となります。以下に、ホテル開業における主なリスクとその対策について説明します。
1. 初期投資の高額さ
ホテル開業には多額の初期投資が必要です。土地の購入や建設費、家具・設備の購入費などがかかるため、資金調達が大きな課題となります。予算を超えた支出や資金不足に陥るリスクを避けるためには、詳細な資金計画と予算管理が重要です。
<対策>
十分な自己資金を確保し、銀行融資や投資家からの資金調達も検討しましょう。また、予期せぬ出費に備えた予備資金を確保しておくことが必要です。
2. 需要の変動
ホテル業界は季節や経済状況に影響されやすく、需要が安定しないことがあります。観光シーズンやイベント時には稼働率が上がる一方、オフシーズンには客室が空くリスクがあります。また、2020年ごろに流行した新型コロナウイルスのようなイレギュラーも考えられます。
<対策>
需要予測を行ない、オフシーズンに向けたマーケティング戦略やプロモーションを計画しましょう。また、多様なターゲット層を取り込むことで、需要の変動を平準化する努力が必要です。
3. 経営管理の複雑さ
ホテル経営には多岐にわたる業務がともない、管理が複雑です。スタッフの勤怠管理や顧客サービス、施設の維持管理、財務管理など、複数の業務を効率的に行なう必要があります。
<対策>
経営管理システムを導入し、業務の効率化を図りましょう。また、経験豊富なマネージャーや専門スタッフを採用し、チーム体制を整えることが重要です。
4. 顧客満足度の維持
顧客満足度はホテルの成功に直結しますが、期待を上回るサービスを提供することは容易ではありません。クレーム対応やサービス品質の維持が課題となる可能性もあります。
<対策>
定期的なスタッフ研修を行ない、サービスの質を高める努力を続けましょう。顧客からのフィードバックを積極的に収集し、サービス改善に活かすことも重要です。
5. 規制や法律の遵守
ホテル業界には多くの規制や法律があります。これらを遵守しなければならず、違反した場合には罰則が課せられることがあります。
<対策>
開業前に必要な許認可を確実に取得し、法令順守を徹底しましょう。また、法規制の変更に対する迅速な対応も必要です。
ホテル開業はいくつものリスクをともないますが、適切な対策を講じることでこれらのリスクを軽減し、成功への道を切り開くことができます。事前の計画と継続的な改善が、持続可能なホテル経営に繋がるでしょう。
ホテル開業を成功させるためのポイント
ホテル開業には大きなリスクがともないますが、きちんと準備して挑めば成功の確率を高められます。そこでこの章では、ホテルを開業するにあたって押さえておきたいポイントをまとめました。
綿密な市場調査と立地選定を行なう
開業前には市場調査を行ない、ターゲットとする顧客層や競合の状況を把握することが重要です。地域の需要や観光客の動向を調査し、求められているサービスを提供する必要があるでしょう。
また、ホテル開業を成功させるために重要なのが、ホテルの立地です。観光地やビジネス街へのアクセスが良い場所、交通の便が良い場所を選びましょう。さらに駐車場の有無や周辺の環境も考慮する必要があります。
明確なコンセプトで差別化する
ホテルのコンセプトを明確にし、それに基づいたデザインやサービスを提供することが大切です。おしゃれなデザインやテーマ性のある内装は顧客の心を掴み、利用者に唯一無二の思い出を作ることができます。「数あるホテルの1つ」にならないよう注意しておきたいですね。
高品質なサービスでリピート獲得
顧客満足度を高めるために、高品質なサービスを提供することが必要です。スタッフの教育や接客マナーの向上に努め、ホスピタリティ精神を持って顧客に対応しましょう。顧客からのフィードバックを積極的に取り入れ、サービスの改善を図ることも重要です。利用者のリピートを増やすことで口コミ効果も期待できます。何度でも訪れたくなるホテル作りを心がけましょう。
効果的なマーケティング施策
開業前後のマーケティング活動は成功のために欠かせません。ウェブサイトやSNSを活用したオンラインマーケティングや、地元のメディアを利用した広告展開を行ないましょう。とくに開業キャンペーンやプロモーションを実施することで、初期の集客を図ることができます。
まとめ
ホテルの開業には、様々な準備や綿密な計画が不可欠です。まず、ターゲット設定・エリア選定・サービス内容の決定といった基本事項を押さえたうえで、高品質なサービスと効果的なマーケティング戦略を実施することが成功の鍵となります。
また、競争の激しいホテル業界で勝ち残るためには、顧客の期待を超える体験を提供し、リピート客を増やすことが重要です。この記事で紹介したポイントを参考にして、魅力的で収益性の高いホテルを開業しましょう。
成功への道のりは決して簡単なものではないかもしれませんが、しっかりとした準備と計画を持って挑むことで、その目標に一歩近づくことができるでしょう。
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