コロナ禍の今が攻め時! DXで不動産業界の改革を加速させるハウスドゥ安藤正弘氏の狙い
新型コロナの影響は、緊急事態宣言解除から約半年が経過するも、いまだ収束の目処が立っていません。その影響からインバウンド分野や、外食をはじめとする多くの産業で前年売上を大きく下回るなど大きな打撃を受けています。
そんな中、ウェブリポ編集部は、株式会社 ハウスドゥが2020年10月21日に開催した、全国の加盟店が参加する「第14回ハウスドゥ全国FC大会」に招待いただきました。コロナ禍の不動産業界への影響、そして不動産売買仲介専門のフランチャイズでは店舗数国内No.1(※)を誇るハウスドゥは、どのように舵取りを行なっているのでしょうか? 同社代表取締役社長 CEOの安藤正弘氏による講演を中心にレポートしていきます。
※ハウスドゥは不動産売買仲介フランチャイズで店舗数第1位です。「ビジネスチャンス」(令和元年10月23日発行・2019年12月号)より。
初のオンライン開催で迎えたハウスドゥ全国FC大会
今回招待していただいた株式会社 ハウスドゥといえば、かねて業界本位で透明性が低いとされている「不動産業界を変える!」を理念に、不動産売買仲介専門の「ハウスドゥ」や、賃貸仲介と不動産管理の「レントドゥ」の直営及びフランチャイズ展開を行なっている大手不動産グループです。2020年9月末時点で全国659店舗を展開しており、イメージキャラクターには元プロ野球選手の古田敦也氏を起用していることから、ご存じの方も多いでしょう。
そのハウスドゥが毎年開催しているフランチャイズ加盟店向けのイベント「ハウスドゥ全国FC大会」ですが、今年は新型コロナウイルスの影響で第14回目にして初のオンライン開催に。当日は事前に案内のあった専用のURLにPCやタブレット・スマートフォンなどからアクセスするだけで、複雑な操作もなくすんなり参加することができました。
参加した第14回ハウスドゥ!全国FC大会のメインプログラムは下記の通りです。
開会挨拶 | 株式会社 ハウスドゥ 常務取締役 冨永正英 氏 |
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代表講演 | 株式会社 ハウスドゥ 代表取締役社長 CEO 安藤 正弘 氏 |
特別講演1 | シリコンバレーの不動産テック企業 Movoto CFO 市川 紘 氏 |
特別講演2 | 思風庵哲学研究所 所長 感性論哲学者 芳村 思風 氏 |
コンペティション成績発表 | |
店舗総合ランキング | |
閉会挨拶 | 株式会社 ハウスドゥ 代表取締役社長 CEO 安藤 正弘 氏 |
株式会社 ハウスドゥ 代表取締役社長 CEO 安藤 正弘氏による代表講演、2名の外部講師による特別講演、全国のフランチャイズ加盟店の成績発表など、盛りだくさんの3時間でした。
また、メインチャンネル以外にも、ハウスドゥ加盟店のみが視聴できるチャンネルが用意されており、各表彰者へのインタビューを紹介する「インタビューチャンネル」や、成功事例や取り組み事例を紹介する「チェーンメリットチャンネル」など、初のオンライン開催にも関わらず加盟店向けの情報発信が充実していたのが印象的でした。このあたりは以前よりシステム開発を始め、IT化を促進しているハウスドゥならではかもしれません。
ここからは、ウェブリポ編集部が参加したメインチャンネルで行なわれた、株式会社 ハウスドゥ代表取締役社長 CEO 安藤 正弘氏による、「激動の時流を乗り越えて、next stage DX戦略へ!~お客様から選ばれ続ける、グループへ〜」という講演を中心にレポートしていきます。
※DX(Digital Transformation)は、デジタルトランスフォーメーションの略で、経済産業省のガイドラインに“企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること”と定義されています。
1965年生まれ、京都府出身。1985年に不動産業に就職するも、バブル崩壊の影響とともに退職し、自らハウスドゥの原型となる不動産事業をスタート。1991年に創業間もなく不動産先進国のアメリカを訪れた際に、当時の日本の不動産会社の情報開示の不透明さなどお客様本位ではないサービスに疑問を感じ、業界の改革を決意。ハウスドゥのフランチャイズ展開から14年で、業界No.1の国内650店舗以上を展開する不動産フランチャイズチェーンへと成長させる。
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コロナショックはリーマンショックとは異なる、不動産業界にとっては追い風
現在も全世界に影響を与えている新型コロナウイルスは、旅行や飲食などのサービス業を中心に小売業、製造業といったビジネスに大きな影響を及ぼしており、不動産業界にも景気後退の不安がよぎります。
実際に加盟店様からも『不動産業界の景気後退』に関する質問が寄せられると言う安藤氏は、急速な消費の回復が起こると同時に、新型コロナウイルスの影響による消費の変化によって世の中が急速に変化してきているが、このコロナショックはリーマンショックとは異なり、ここ2~3年はむしろ景気が良くなっていくと、独自の分析をもとに語っていました。
リーマンショック (2008年) | コロナショック (2020年) | |
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売買仲介 | 仲介の動きが1年前より鈍化 リーマンショックの1年前の2007年のゴールデンウィークあたりから仲介数が例年の2~3割ほど落ち込んでいた | 自粛中も動きあり 自粛期間中にもかかわらず利用客からの反響があった |
融資 | 資金の停止 優良、不良企業にかかわらず、全ての企業に対して金融機関が融資を停止 | 政府及び金融機関の対応の早さ 政府主導となり、積極的に給付金や融資を行なっていた |
金利 | 金利の上昇 利上げが繰り返され、金利が上昇していた |
マイナス金利継続中 マイナス金利を継続している |
景気 | 景気後退 個人消費の減少などで景気後退 |
自粛により止められている 自粛で消費は一時的に減ったが、消費意欲などが抑えられていた分の反動がある |
リーマンショック (2008年) | コロナショック (2020年) | |
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ハウスドゥの経営判断 | お客様の動きが鈍化2007年秋に 先手を打って、20億円分ほど保有していた収益物件を全て売却する経営判断し 年末までには大方を売り切った |
お客様が動いている 2020年3月に先手を打って、仕入れの強化を指示 |
リーマンショックとコロナショックは別物であると位置づけ、それぞれに対してのハウスドゥの経営判断の違いを強調していました。この節目の経営判断が奏功する形で、コロナ禍にも関わらず直営店の反響数は昨年以上という結果になっています。
仕入れ強化の理由については、自粛による購買意欲を抑えられた反動、政府の救済対応の有無、マイナス金利の継続などをプラス要因と分析。さらに自身のエピソードを交え、コロナによる自粛期間が、普段後回しにされていた家のことを考えるきっかけになったことも要因であると言います。
こうしたコロナ禍での仕入れ強化の決断の裏側には、現場の売れ行きを把握できる直営店舗を複数展開するハウスドゥの強みがある。売れ方がわからないデベロッパーなどはリーマンショックの教訓から仕入れを縮小、その後仕入れを再開させたとしても、その間数ヶ月の経営判断によって生まれた差は決して小さくない、と安藤氏は語っていました。
不動産売買仲介業は景気に左右されにくい?
これについて安藤氏は、不動産価格と金利が大きく左右する。景気が良いのにお客様が減ったり、景気が悪いときにはお客様が増えるなど多少の誤差はあるが、景気の影響を受けにくいと言えるのではないか。実際にリーマンショックの時は金利が上昇したが、その後は景気が悪くなり金利が下がったことで、不動産がすごく売れたと続けます。
景気が良いとき | 景気が悪い時 |
金利が上がる | 金利を下げる 既にマイナス金利なので、 継続せざるを得なくなった |
金利が下がれば景気が悪くても不動産を買える人は買う、つまり今回のコロナ禍でマイナス金利が継続することから、向こう2〜3年は非常に期待できると見ているとのこと。
住宅版「残価設定ローン」の導入が中古住宅市場を活性化
さらに明るいニュースも。住宅ローンの新たな波として、不動産業界から熱い視線を集めるのが、安藤氏自らも注目しスウェーデンに足を運んで学んできたという、「住宅ローンの残価設定ローン」です。
日本の元利均等一辺倒ではなく、今月は金利だけ払ったり、元利は好きなときに返済ができるようになる。そうして月々の返済額が大きく下がると、もっといい家具を買ったり、より大きい不動産を買ったりと購買行動が変わる可能性がある。 結果、不動産が上昇する可能性を秘めており、不動産バブルの起爆剤になることを期待していると安藤氏が語っていました。
コロナ禍でも順調に拡大するハウスドゥ
ハウスドゥはコロナ禍でも利用客が増加しているということでしたが、実際にフランチャイズや直営での店舗展開などについても拡大していると発表。
その一つが、2020年9月に全47都道府県への出店契約を達成したことです。空白となっていた山形県に加盟1号店が誕生したことで、また一歩ハウスドゥの考える「不動産のコンビニ」構想と、国内1,000店舗展開に近づいたことになります。
そして、ハウスドゥが力を入れている「ハウス・リースバック」の営業拠点も増え、2020年8月に横浜、9月に広島が、10月に北海道と千葉にも開設していると安藤氏は言います。
このハウス・リースバックは、利用者が所有する家をハウスドゥが買取り、利用者はハウスドゥと賃貸契約を結びます。所有権はなくなりますが、利用者は家賃を納めることで以前と同じように住み続けることができ、通常家を売却した際に必要な新居探しや引っ越し費用などの無駄なお金がかからない仕組みのことです。
これによって持ち家はあるが老後の資金が不安な高齢者や、生活資金や借金返済で資金が必要でも、引っ越したくないといった方が利用できるようになっています。
次の事業の柱になるリバースモーゲージ保証事業も着々
さらに今後ハウスドゥが注力しようとしているのが「リバースモーゲージ」です。こちらはハウス・リースバックと違って持ち家を売るのではなく、持ち家を担保として金融機関から融資を受ける制度となり、不動産があるが相続人がいないという高齢者に、不動産を有効に活用していただくことを想定しています。
先進国の中でもリバースモーゲージが普及していないのは日本くらいで、推進していくために現在18の金融機関と締結。リバースモーゲージによって、不動産はあるがキャッシュがないという方の選択肢となるように注力していく。またこれが今後の主流になっていくと確信していると説明がありました。
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新コンセプトで不動産業界の変革を加速
続いてポストコロナ時代の展望として発表されたのが、IT化を今まで以上に推し進めていく DX戦略。消費者のほとんどがスマートフォンを使った生活が浸透した今、ハウスドゥも本腰を入れて、スマートフォンでほとんどのことが完結できるというところを目指して、アプリ開発に積極的に投資をしていくと安藤氏は言います。
スマートフォンでほとんど完結できる仕組みをFC本部が作る
このようなシステム開発は加盟店からのロイヤリティから開発費を捻出し、最新技術の導入や現場のフィードバックを募って大手チェーンのメリットを活かし、ローカル店には真似できない武器を作っていくと語っていました。
発表から抜粋したいくつかを紹介します。
その発表を聞いていて気になったのが、専用アプリ上で、土地の上に間取りを選択するだけで2〜3分で立面図などが作成できる「イージーオーダーハウス」。もう一つが、ハウスドゥが来年から売り出し予定というテクノロジーを搭載した家。家電や住宅設備をスマートフォンやタブレットといったデバイスと結びつけて操作するスマートホームを、現在のような後付けでなく、始めから整った状態で一次取得者でも買えるリーズナブルな価格で提供していきたいとのことでした。
ブランドロゴ・コンセプトのリニューアル
このようなDX戦略の象徴といえる、新たなブランディングとしてコンセプト、ロゴを一新。以前までのブランドロゴは、「不動産のコンビニ」構想のために国内1,000店舗達成しようという勢いが重視されたようなロゴでした。
しかし、新しいブランディングでは、これまで説明してきたような取り組みの基盤として、これからの時代に合わせたIT化やスマート化をコンセプトにしています。来年1月から順次新しいロゴにリニューアルされ、今後さらに利用者にとって「シンプルでわかりやすい不動産ブランド」を目指していくということでした。
こうした新コンセプトへの切り替えは2021年1月以降順次となっており、既存店舗も順次新コンセプト店にリニューアルを予定。テックショップブランドを広げていくとのことです。
「住まいのすべてを、スマートに。」新生ハウスドゥに注目
本記事では紹介できませんでしたが、代表講演の他にも安藤氏が影響を受けたという感性論哲学者の芳村思風氏や、アメリカの最新の不動産テック事情についてシリコンバレーを拠点に活動中のMovoto CFOの市川氏による特別講演、「ハウスドゥコンペティション成績発表」と題して成績発表も行なわれました。
この成績発表では、様々な部門で優秀な成績をおさめられた加盟店様の表彰が次々に行われました。表彰者の中には、以前ウェブリポで取材したアルファス株式会社様も含まれており、インタビュー中継も行なわれていました。2019年12月の取材当時は8店舗の運営だったのが今では、16店舗に倍増していることが伺えました!
このように途中、優秀店舗と古田氏の中継が繋がる場面もあるなど、オンライン開催ではあるものの会場での開催と遜色のない演出も盛り込まれていました。内容盛りだくさんで加盟店様にとっても有意義といえる3時間だったように思います。
そして来年の「全国FC大会」は15回目の節目をハウスドゥ創業の地、京都での開催を予定していると発表がありました。依然として新型コロナウイルスの収束は見えませんが、不動産業界は2〜3年は良い時代になる、ガンガン攻めましょうとハウスドゥ全国FC大会を締めくくった株式会社 ハウスドゥ代表の安藤氏。
ここまで不動産業界の変革を進めてきたハウスドゥですが、この一年はハウスドゥ自身の変革の1年になりそうです。
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