2015-08-07 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
フランチャイズ研究会 店舗経営・フランチャイズビジネス専門税理士
伊藤 達仁 |
資金調達
このコラムのポイント
独立に先立ち必ずと言っていいほど必要になる資金。開業資金がいくら必要になるかのまとめ方、資金調達の方法などがわかるコラムとなっています。
フランチャイズWEBリポート編集部
はじめに~資金調達の方法でフランチャイズ加盟の成否が分かれる!~
『自己資金はありませんが、やる気と体力はあります!フランチャイズ加盟の際の初期投資をすべて銀行からの借り入れで成功するでしょうか?』
加盟希望者からこのような相談を受けることがあります。自己資金をいくら用意すべきか、ということはフランチャイズに加盟して成功するためのとても大切なポイントです。
ここでは自己資金をいくら用意すべきかということも含めて、フランチャイズ加盟に際して、どのように資金を調達すればよいかについてお話しします。
「いつ」「何に」「いくら」必要かを知ること
ひと言で初期投資額といっても、フランチャイズ加盟金(契約金)やフランチャイズ本部によるスタッフ研修費用など、フランチャイズ本部との契約に関するものもあれば、店舗物件の契約費用や開店前の人件費のようにフランチャイズ本部以外との契約等に関するものがあります。
まず、大切なことは、必要な初期投資についてもれなくリストアップすること、次にそれらの金額を見積もることです。ここで、加盟希望者としては、なるべく初期投資額を低く抑えたいという心理から、希望的観測による最低限の金額を見積りがちですが、多少ゆとりを持たせた金額で見積もってください。
そして、それら初期投資額が「いつ」必要なのかを知ることは、資金の調達の方法にも大きく影響を与えます。通常、金融機関から融資を受けようとすれば、融資の申し込みから実際に融資が実行されるまで1か月程度はかかります。
仮に、好立地に店舗物件が見つかったとしても、手元に自己資金がなく、融資の実行を待たなくてはいけない状況では、好立地の店舗契約のタイミングを逃してしまいます。
このようなことから、自己資金で支払うべきもの、融資の実行を待って支払うことができるものなど、初期投資の支出のタイミングを知っておくことは資金調達方法を検討する上でとても大切なことです。
フランチャイズ加盟ワークブックでは、それぞれの初期投資額をどのような資金で支払うかを確認できるワークシートとその記入例が記載されていますので、是非ご活用ください。
【初期投資内容と資金調達先記入シート (例)】
創業者の資金調達方法は?
はじめてフランチャイズ加盟をしようとする人にとっての資金調達方法は、次のとおりです。
1.自己資金
2.親・兄弟姉妹・親戚等からの借り入れ
3.金融機関からの融資(借り入れ)
4.リース契約
1.自己資金
自己資金は多く用意できるほど、信用と成功を勝ち取る可能性が高まります。
これは、フランチャイズ本部や融資をする金融機関の立場になってみればわかります。コツコツと貯めてきた預金や大切な退職金を自己資金として準備して起業しようとする人と、「貯金はゼロです!」と言い切ってしまう人がいた場合、どちらの人と一緒にビジネスをしたいでしょうか(あるいは、ビジネスを応援してあげたいでしょうか)。
フランチャイズ本部選びの段階においても、用意できる自己資金の額が多いほど、金融機関から借り入れることができる金額も多くなるので、選ぶことができるフランチャイズ本部の選択肢も広がります。
また、自己資金に余裕があれば、仮にフランチャイズ加盟後の業績が悪い場合でも、自分の生活資金に充てることもできます。お金のゆとりは経営者の心のゆとりにつながります。業績が思わしくない場合でも自身と家族が6か月間生活できる程度の資金は手元に残しておきたいものです。
2.親・兄弟姉妹・親戚等からの借り入れ
起業するにあたって、家族や親戚などから応援の言葉とともにお金を借りることもあると思います。
金融機関からの借り入れであれば、返済期限や借り入れ利率などを取り決めた契約書を取り交わすものですが、家族間の貸し借りでは、「儲かったら返すね」などのように口約束程度のあいまいな形式でお金を借りてしまうことが多いです。
このように家族などからお金を借りる場合には、簡単な書式でも良いので、お金の貸し借りに関する契約書を作成することをおすすめします。その理由は2つです。
1つ目は、家族といえどもケジメをつけるということ(返済しなくてはいけないので気合いが入ります)。もう1つは、その金額によっては、借りたつもりの金額について税務署から贈与と認定され、贈与税が課税される可能性があるからです。
3.金融機関からの融資(借り入れ)
はじめて金融機関から借り入れをする人は、まず、次の金融機関の窓口で融資の相談をしてください。
1.日本政策金融公庫
日本政府出資100%の金融機関であり、固定金利で比較的低利率であることが特徴です。
女性やシニアを優遇する融資制度や創業者向けの融資制度も充実しているほか、経済産業省が認定する「経営革新等支援機関」のサポートを受けることにより、より有利な条件で融資を受けることも可能です。
2.地方公共団体の融資相談窓口
都道府県や市区町村では、創業を支援するためのあっせん融資制度を設けている場合がありますので、居住地や事業予定地の地方公共団体の融資相談窓口に問い合わせてください。地方公共団体は直接融資をするわけではありませんが、創業を支援するため、借入利息などの一部を補てんする地方公共団体もあります。
このほか、民間金融機関の窓口による、信用保証協会の保証付融資も融資の選択肢の一つです。信用保証協会の保証付融資も、創業者のための融資制度が用意されています。
4.リース契約
リース契約も初期投資額をまかなうための資金調達のひとつです。
声を大にして皆さんにお伝えしたいことは、リース契約期間中は、基本的にリース契約を解約することができないということです。仮に解約した場合でも、リース期間が残っていれば、残りのリース料に相当する違約金を支払わなくてはいけません。リース対象物件をリース会社に返却すればリース契約がチャラになる(精算される)というわけではないのです。モノを返せば貸借関係が終了するレンタルとは違うということを認識してください。
そして、リースにはメリットとデメリットがあります。
事務手続きが簡便であることや金融機関からの融資限度枠に影響を与えないことがメリットで、デメリットは、金融機関から借り入れるよりもリース料の方が割高になることです。リース料が割高になる理由やリースのメリット・デメリットなどについては、フランチャイズ加盟ワークブックに記載していますので、参考にしてください。
次回は
次回は利益計画と資金計画についてお話しします。冒頭の相談者のように自己資金なしで、元気と体力だけでやっていけるのか?の答えもわかるかもしれません。お楽しみに!