フランチャイズ研究会会長 中小企業診断士伊藤恭
2015-10-09 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
フランチャイズ研究会会長 中小企業診断士 伊藤恭

フランチャイズ展開の意義とその前提条件【第一回】

 このコラムのポイント

フランチャイズ本部になりたい方、本部の方対象の連載コラム第一弾です。これを読めば、自社のビジネスがフランチャイズ展開に適しているかを見直すことができます。

フランチャイズWEBリポート編集部


はじめに

今回が「未来のフランチャイズ本部に捧ぐ、フランチャイズ本部立上げの基本」の第一弾、これから10回にわたりフランチャイズ本部を立ち上げるためのポイントを説明していきます。

フランチャイズ本部を立ち上げようとお考えの方、あるいは、すでにスタートしているものの、思った通りの成果が出せていない方、是非、参考にしていただければと思います。

何故、フランチャイズ展開をするかの意味を考えよう

私たちの回りにはコンビニをはじめとするたくさんのフランチャイズ店があります。では、何故、こうしたフランチャイズ店の本部の経営者は事業をフランチャイズ展開するのでしょうか。

レギュラー(直営)チェーンでも代理店でも同じなのですが、フランチャイズ展開をする目的は、店舗を多店舗化して「規模のメリット」を享受することなのです。

多店舗化すると、実は、たくさんのいい事があるのです。店舗運営のノウハウは蓄積されてきますし、ブランドの認知度も上がります。仕入先や取引先に対する交渉力は格段に高まり、コストの削減効果は絶大です。

大掛かりな販売促進やシステム開発など多店舗化することによってはじめて可能になることもあるでしょう。このように、多店舗化のメリットは計り知れないほど大きいものなのです。

フランチャイズは、本部が加盟店の経営資源(金や人材など)を活用して事業展開することができるだけでなく、チェーン全体をしっかりコントロールすることができることから、多店舗化の手段としてとても有効だと言えるでしょう。

私が所属しているフランチャイズ研究会にはフランチャイズ本部を立ち上げたいという相談が数多く寄せられます。相談者の中には、フランチャイズ本部は加盟者から加盟金やロイヤリティを受け取ることができることから、フランチャイズで一儲けしてやろう、傾いた経営を立て直そうという目的でフランチャイズ展開を考える方がいます。

もちろん、利益をあげることは決して悪いことではありませんが、利益は結果であり、利益のみを目的としたフランチャイズは、エンドユーザーや加盟店から愛想を尽かされ、行き詰ることになるでしょう。

フランチャイズ展開が可能な前提条件とは

さて、フランチャイズは誰でもできるというものではありません。フランチャイズ展開をするためには、クリアしなければならない一定の要件があります。私なり考えるフランチャイズ展開の前提条件をあげると、以下の通りになります。

1.オリジナリティー

同業他店と明確な違いがあることは必要でしょう。オンリーワンが理想ですが、仮に先行している他社を参考にして開発した業態であっても、本家にはないプラスアルファがあることが必要です。

2.市場規模

フランチャイズ展開をするためには手間もコストもかかります。直営店と加盟店店舗の合計で最低でも100店舗の営業が可能な市場規模がないと、フランチャイズ展開をする意味がありません。

3.標準化は可能か

職人技を要するような業態はフランチャイズ展開できません。フランチャイズでは、店で行う業務を標準化し、短期間の研修で加盟者に店舗運営に必要なスキルを教え込まなければなりません。

4.直営店での実証

フランチャイズの本質は本部が開発したビジネスフォーマットを加盟者に売ることです。
そのためには、本部が開発したビジネスフォーマットが有効であることを直営店の営業を通じて実証することが必要です。できれば、直営店3店舗で2年間の実績は欲しいところです。

5.一定の資金力

フランチャイズは加盟者の資金を活用することから、レギュラーチェーンの展開に比べると投資額を抑えることができます。
とはいえ、初期段階では仕組み作りやシステム構築などにコストがかかることから、ある程度の資金力は必要です。直営店舗での実績が十分という場合でも、少なく見積もっても、2~3千万円程度の資金は必要でしょう。

6.業態の収益性

フランチャイズでは本部が加盟者から加盟金やロイヤルティを徴収します。それでも、加盟者の店舗が事業として成り立つためには、収益性の高い業態を開発しなければなりません。標準店舗の償却前利益率(※)15%以上を確保しておきたいところです。

(※)償却前利益率≒(営業利益+減価償却費)÷売上高

終わりに

さて、次回はフランチャイズ展開に欠かせないプロトタイプモデルがテーマです。楽しみにお待ちください。

フランチャイズ研究会会長 中小企業診断士 伊藤恭

成蹊大学経済学部卒業、イベント会社社長を経てFCコンサルタントとして独立。㈳東京都中小企業診断士協会フランチャイズ研究会会長、日本フランチャイズチェーン協会フランチャイズ相談室相談員等を歴任。豊富なフランチャイズ本部構築実績あり。日本経済新聞社主催のFCショー等での講演、FC専門誌・専門書の執筆多数。