2015-09-04 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
フランチャイズ研究会会長 中小企業診断士
伊藤恭 |
契約
このコラムのポイント
いよいよ加盟契約!と、その前に・・本部から開示されるべき法定開示書面でチェックしたいポイントや内金などの入金が求められたらどうしたらいいのか。今一度見直しましょう。
フランチャイズWEBリポート編集部
契約締結の流れ
これまでの準備を経て、いよいよ詰め段階です。次のステップは、あなたが本部とフランチャイズ契約を交わすということになります。とはいえ、いきなり契約書に判をつくということではありません。
契約締結に至るプロセスを示すと以下のようになります。必ず、この流れを理解して、この順番に従って契約を交わすように心がけてください。以下、ポイントとなる部分を説明します。
契約を締結する時期
フランチャイズ契約書の中で、その根幹をなす部分は、いわゆる「フランチャイズの付与」という部分です。その内容を簡単に説明すると、「本部は加盟希望者に対して、××××××××の場所で、加盟希望者が本部のブランドやノウハウを使って事業を行う権利を与える」というものです。
ここで気が付いていただけたかと思いますが、加盟希望者が出店する店舗の場所が決まらないと、フランチャイズ契約自体が意味を成さないということです。つまり、本部と加盟希望者がフランチャイズ契約を交わす時期は、加盟希望者が出店する店舗が確定してからということになります。
ところが、店舗の所在地を記入しないで契約を交わし、後から記入するといったやり方がまかり通っています。こうして締結された契約は、法的に問題があることはいうまでもありません。
何故、本部がこのようなやり方をするかと言えば、2つの理由があるからです。
1つ目の理由は、加盟希望者の心変わりが心配だからです。契約を交わしてしまえば、「やっぱりやめた」はできなくなります。2つ目は、本部が一刻も早く加盟金や保証金を受け取りたいからです。
いうまでもありませんが、本部が加盟金や保証金を受け取れるのは契約を交わした後だからです。
ということで、もし本部が店舗物件の確定前に契約締結を求めてきたときは、きっぱりと断ってください。このことによって、不利を被ることはありません。
内金などの入金
前述の通り、加盟希望者が加盟金や保証金を支払うのは契約を交わした後ということになります。
ところが、契約締結に先立って、本部が内金とか手付金の名目で入金を求めてくることがあります。こうしたケースでは、内金や手付金が加盟金の一部に充当されるので、加盟希望者は抵抗なく支払ってしまいます。
とはいえ、契約締結に至る過程で、本部の担当者の説明にウソがあったり、本部のいい加減な体質が露呈したりして、加盟希望者が本部に不信感を持つようになることは珍しいことではありません。
あるいは、希望するエリアに適当な店舗物件が見つけられないということもあり得ます。そのようなときは、加盟を白紙に戻すことも選択肢の一つになるでしょう。
こうした場合、本部が内金や手付金を返してくれることはありません。となると、支払った金はドブに捨てた同じことになります。契約を締結するまで、金は払わないと心得ておいてください。
ただし、本部が店舗物件の調査費用として加盟金の10~20%程度を加盟申込金として前払を求めてくることがあります。優秀なチェーンは物件の立地調査を綿密にやりますので、これについては致し方ない面もあります。単なる内金とか手付金ということなら拒否してください。
法定開示書面による説明
1.法定開示書面とは
法定開示書面とは、本部企業の概要とこれから交わすフランチャイズ契約の重要な部分をまとめた書面のことです。
中小小売商業振興法という法律は、小売業と飲食業の本部に対して法定開示書面による事前説明義務を課しています。
また、公正取取引委員会のフランチャイズガイドラインでも、本部に対して同様の事項の開示を求めていることから、すべての本部は、契約に先立って本部企業の概要や契約の主要項目について説明する義務を負っているものと考えていいでしょう。以下が、中小小売商業振興法が定めた開示事項の一覧(全22項目)です。
開示事項一覧 |
1.本部事業者の氏名及び住所、従業員の数(法人の場合は、その名称・住所・従業員の数・役員の役職名及び氏名) |
2.本部事業者の資本の額又は出資の総額及び主要株主の氏名又は名称、他に事業を行っているときは、その種類 |
3.子会社の名称及び事業の種類 |
4.本部事業者の直近3事業年度の貸借対照表及び損益計算書 |
5.特定連鎖化事業の開始の時期 |
6.直近の3事業年度における加盟者の店舗の数の推移 |
7.直近の5事業年度において、フランチャイズ契約に関する訴訟の件数 |
8.営業時間・営業日及び休業日 |
9.本部事業者が加盟者の店舗の周辺の地域に同一又は類似の店舗を営業又は他人に営業させる旨の有無及びその内容 |
10.契約期間中・契約終了後、他の特定連鎖化事業への加盟禁止、類似事業への就業制限その他加盟者が営業禁止又は制限される規定の有無及びその内容 |
11.契約期間中・契約終了後、当該特定連鎖化事業について知り得た情報の開示を禁止又は制限する規定の有無及びその内容 |
12.加盟者から定期的に徴収する金銭に関する事項 |
13.加盟者から定期的に売上金の全部又は一部を送金させる場合はその時期及び方法 |
14.加盟者に対する金銭の貸付け又は貸付の斡旋を行う場合は、それに係る利率又は算定方法及びその他の条件 |
15.加盟者との一定期間の取引より生ずる債権債務の相殺によって発生する残額の全部又は一部に対して利率を附する場合は、利息に係る利率又は算定方法その他の条件 |
16.加盟者に対する特別義務 |
17.契約に違反した場合に生じる金銭の支払いその他義務の内容 |
18.加盟に際し徴収する金銭に関する事項 |
19.加盟者に対する商品の販売条件に関する事項 |
20.経営の指導に関する事項 |
21.使用される商標・商号その他の表示 |
22.契約の期間並びに契約の更新及び解除に関する事項 |
2.法定開示書面による事前説明をしない
チェーンの中には、法定開示書面による事前説明をしなかったり、あるいは一部(例えば、直近3事業年度の貸借対照表・損益計算書など)を意識的に掲載しなかったりするようなケースがあります。このようなチェーンは、都合の悪いことは隠そうとする不誠実なチェーンと考えていいでしょう。私が加盟希望者なら、決して加盟しないチェーンです。
3.特に重要なチェック項目
法定開示書面の記載事項は加盟希望者にとってどれも重要な情報ばかりですが、特に重要なポイントを以下に3つ示します。
1.役員や主要株主
ネット社会の今なら、役員や株主の名前をネットで検索するだけでもある程度の情報が収集できます。問題のある人が事業に関わっていないかをチェックしてください。
2.直近3事業年度の貸借対照表及び損益計算書
いわゆる決算書といわれるものです。財務体質が劣悪だとチェーン全体のための投資ができないだけでなく、倒産の可能性さえあります。本部の財務体質が健全かどうかのチェックは必ず行ってください。あなた自身で判断できないときは、知り合いの税理士さんなどに見てもらうのもいいでしょう。
3.3事業年度における加盟者の店舗の数の推移
この部分は、「各事業年度末の加盟者の店舗の数」、「各事業年度内の加盟店の新規出店数」、「各事業年度内の契約解除された店舗数」及び「各事業年度内に契約更新された店舗数及び更新されなかった店舗数」で構成されます。
店舗数が増えているチェーンは勢いがあると言えるでしょう。消費者にとって魅力的で既存店が繁盛していれば、加盟希望者も多く新規出店数も増えるはずです。契約を解除する理由は赤字が続いて閉店したと考えられます。契約期間中、そのチェーンに属していることに満足していれば、当然に契約を更新するはずです。反対に満足できなければ更新はしません。これらの数値を見ただけでも、おおよそのチェーンの優劣がわかりますね。
おわりに
次回は最終回となる「開業前準備(人事面)」についてです。フランチャイズは人材ビジネスともいわれます。採用したスタッフを教育して戦力化しなければ事業の成功は望めません。次回をお楽しみに!