2015-12-04 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
フランチャイズ研究会 ARKコンサルティング・オフィス
石川 和夫 |
オーナーを育成する「開業前研修」で取り組むべき2つのポイント【第五回】
このコラムのポイント
研修制度は加盟店が短期間に経営ノウハウを身につけることのできる機会であるだけではなく、本部にとっても理念の共有化やオペレーションの統一化などが図れる貴重な機会でもあります。今回のコラムでは開業前研修で本部が意識しておくと良いポイントをご紹介いたします。
フランチャイズWEBリポート編集部
経営未経験者を育てる研修制度について解説します
「フランチャイズチェーンに加盟するメリットは何ですか?」と聞かれた時、私が最初に挙げるのは「事業の経験が無くても経営ができる」というメリットです。
なぜなら、ビジネスの素人であっても、短期間に経営ノウハウを身につけることのできるように、本部が「開業前研修」を実施している点が、フランチャイズビジネス最大の魅力だと考えているからです。そこで今回は、「開業前研修」について座学研修と実施(店舗)研修、2つの側面から内容や実施上の留意点を解説します。
この研修を担当する本部スタッフはどのようなポジションかというと、創業間もないFC本部では人員不足からSV(スーパーバイザー)が兼務することもありますが、一般的には「研修担当の本部スタッフ」です。
座学研修では経営理念とスタッフの採用育成法が特にポイント
まず、店舗運営業務を学ぶ前に、理解しておくことが必要な基礎知識には、次のような項目があります。
1.経営理念
2.本部およびチェーンの概要
3.店舗運営方法
4.会計知識
5.商品知識
6.接客方法
7.スタッフの採用・育成方法
8.労働基準法
9.労務管理(シフト作成)
10.ワークスケジュールの作成方法
この中で特に重要なのが「経営理念」の共有化です。本部がどのような想いで当事業を始めたのか、これまでどのような歴史を歩んできたのか、代表または経営幹部が加盟者に直接伝えることが必要です。
次に重要なのが「スタッフの採用・育成法」です。フランチャイズビジネスでは労働力の多くをパート・アルバイトに頼っています。特に、現在のように採用が難しい時期には、定着化を促すための育成法も学んでもらうことが必要です。また、「ブラックバイト(企業)」などと呼ばれないためにも、勤務時間や休憩、残業や深夜手当の支払いなど、労務管理に必要な最低限の「労働基準法」も学んでもらいます。
実地(店舗)研修で注意すべきポイント2つ
座学研修の次は実地研修です。店舗運営のために身につける必要がある項目をリストアップすると同時に、研修スケジュールを作成し、参加者に対して、いつまでにどのような項目を学ぶのか提示します。その上で、参加者自身が理解と習得状況を自分自身でもチェックできるような仕組みを作ります。
実地研修において、注意すべき点が2つあります。
1.研修トレーナーの選定
研修トレーナーには直営店の経験と実績がある社員を選定しますが、それだけでは不十分です。店舗オペレーションに精通しているだけではなく、「人に教えることが上手(好き)な」トレーナーとしての資質を持っている社員を人選してください。
2.ワークシフトの一員にしない
スタッフが不足している直営店では、実地研修に来た加盟者をワークシフトに組み込んでしまうケースがあります。加盟者はあくまでも研修に来ているのであり、シフトの穴埋めに来ているのではありません。加盟者からのクレーム(本部への不信感)につながらないように、トレーナーは実地研修先のシフト状況をしっかりとチェックしましょう。
2つのポイント以外で加盟者(オーナー)にやってもらうべきこと
コミットメント(活用宣言)を書いてもらう
「開業前研修」の終了時には、開業後にどのような店(事業所)にしたいと思うのか、そのために自分(加盟者)は研修で学んだことをどのように活用するのか、記入フォームを用意しておいて書いてもらいます。そして、その宣言文は額に入れて、店の事務所などに掲げておきましょう。
加盟者は開業後にさまざまな経営苦難の壁にぶつかります。その時にコミットメントがあると加盟者と本部担当者が共に初心を振り返り、協力し合いながら苦難に立ち向かうことが可能になります。
さて、次回のテーマは「立地評価」です。どうぞお楽しみに!