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2016-01-01 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
販路企画 代表
田口 勝 |
エリアマーケティングのプロが語る!日本マクドナルド閉店店舗の行方はどうなるのか?
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このコラムのポイント
2015年12月末、「日本マクドナルド株売却を米本部が検討」というニュースが報じられた日本マクドナルド。米マクドナルドは日本マクドナルドの株式の49.99%を保有していますが、33%分を売却するということで今、日本の総合商社や国内外の投資ファンドなどから買い手の候補を募っている現状です。そんなマクドナルドですが、2015年は不採算店舗の大量閉店を行っていました。果たして、この閉店店舗はどうなっていくのか。元セブン-イレブンSVで商圏事情にも詳しい専門家、田口勝氏にこの行方を解説してもらいます。
フランチャイズWEBリポート編集部
「株売却」が検討されている日本マクドナルド閉店店舗の行方を考察
2015年の大きなニュースとして日本マクドナルドホールディングスの不採算店舗の閉店及び米マクドナルド本社の保有する株式の売却等多数報道されています。
実際に店舗に『マクドナルドの閉店ポスター』を見て、『不便さ』や『寂しさ』を感じる人も多いのではないでしょうか?
2015年12月期の連結決算は380億円の純損失と、2年連続の赤字となる見通しであり、回復の兆しはまだ見えないのが実情です。
更に米マクドナルド本社が保有株式のうちの約33%である1,000億円程度を売却する計画が上がっていますが、現在の経営環境では買い手を見つけることも困難とのこと。
今後のマクドナルドの動きに注目されている方も多いと思いますが、今回はその閉店店舗の行方について考察したいと思います。
日本マクドナルドの閉店はなぜ起きたのか?
閉店理由1:家賃が売上に合わなくなった
日本マクドナルドの不採算店を年内100店舗目途に閉店を行う。そういったニュースが多数報道されています。
閉店する店舗では、駅前の一番立地にある店舗も多数含まれており、『あんな人通りの多いところにあるところが閉店するの?』と思われる方も多いと思いますが、大きな要素は『家賃』が『売上』に合わないというのが実情でないかと思います。
つまり『不採算店舗』=『利益が取れない店舗』ということになります。
『閉店する店舗』を見ると、10年以上の店舗が多く含まれており、中には30年以上の店舗もあるのが実情です。つまり、それまでは、採算が取れていたが、ここ数年の間に採算が取れなくなってきたということが考えられます。また、家主との賃貸契約期間の考慮にいれていると考えられます。つまり、閉店コストも充分に視野に入れていることになります。
閉店理由としては、ここ数年の間に『家賃』が大きく増加したということは考えにくいため、『売上』が下がってきているという象徴的な表れとなります。
閉店理由2:『時代の変化』に合った商品を含めたマーケティング戦略ができていなかった
報道では、『使用期限切れ鶏肉問題と異物混入問題の発覚で、消費者からの信頼を失っている』とされる記事も多数がありますが、実際は、『引き金』であり、以前からイエローサインが出ていると私は思っております。
つまり、商品を含めたマーケティング戦略が『時代の変化』と合わなくなってきていることが大きな要因と考えております。
実際に、閉店するフランチャイズチェーンを含め、大手チェーンは多数あります。
勢いが衰えないコンビニエンスチェーンでも年間で多くの閉店を行っております。
しかし、そのほとんどは、スクラップ&ビルドと呼ばれる閉店をした後に、商圏を引き継ぐ新店舗を展開させるという方式をとっているのが現状です。
そういった場合は、閉店する店舗が、『時代の変化で歩行者や車の量が変わり、導線が変わってきた場合』や『駐車場の広さ』が合わなくなってきた場合等『立地面』での問題を改善する場合に行われます。
しかし、今回のマクドナルドについては、商圏は別の店舗が引き継ぐ形を主としており、俗に言う『単純閉店』というものになるため、立地ではなく、商品・価格・サービス・販路・販促といったマーケティング戦略の課題が浮き彫りになっており、将来見込めない店舗として閉店しているものと考えます。
つまり日本マクドナルド本体として、『時代の変化』に対応したマーケティング戦略を模索している段階であり、直近で売上を改善することが困難であるとの判定の結果であると思います。
マクドナルドの一等立地をめぐる跡地争いが激化する見込み
そうなると、『立地面』での問題はないわけですから、他の業態や飲食業界、競合するファストフードチェーンからするとこの『一等立地』は非常に魅力的なものとなります。
特に都心では『一等立地』はほぼ空いていないという状況の中ですので、家賃が高くても出店したいというのが、実情であると思います。
前回のコラムでお客様が店舗を認識する理由について、店舗+看板で約60%というデータを紹介しましたが、つまり一番立地にあることでチェーンの広告効果も望めるということになります。
例え、その場所の家賃が高く、利益が出なくても他店の利益でカバー出来るのであれば、出店する方が、広告効果、イメージ効果も鑑みるとプラスに発展すると考えるということです。
日本マクドナルドは、長く『若者』に人気で、『キッズマーケティング』により家族連れも多く来店されていました。近年では、パソコン用の電源施設も充実し、中心部で『カフェ店舗』的な役割も担うファストフード+カフェの併設店舗もありました。
そういった客層を取り込みたいチェーンにとっては、非常に好都合の立地であり、しかも一等立地。明確な出店調査と商圏調査を踏まえた立地選定を行った店舗は、今後も各社の跡地を巡った戦いが激化することが予測されます。
エリアマーケティングのプロが予測!マクドナルド閉鎖店舗の行方
1.マクドナルド店舗→ファストフードチェーン
現店舗をそのまま居抜き物件として活用ができ、内装費等は低コストで出店できるということでファーストフードチェーンも多数候補して上がっています。
既に同業界のファーストキッチンやバーガーキングやカフェチェーン等が狙っているというニュースも。
マクドナルド本体としては、シェア争いの中で本意ではないでしょうが、閉店時には、現状回復をしなければならない契約が多く、閉店コストを考えるとお互いメリットのある話になるでしょう。
2.マクドナルド店舗→飲食チェーン
飲食チェーンも、マクドナルドの跡地に多数出店してくるものと考えられます。
防水設備やダクト、空調設備などの工事コストがかからない点は、飲食チェーンにも非常に好都合のようです。その点で大手飲食チェーンも出店が多数出店予想されます。
特に近年、大手の居抜き物件を出店対象としている飲食チェーンもある状況です。
3.マクドナルド店舗→ドラッグストアなどの小売業
大手のドラックストア等も出店候補として挙がっているようです。
小売業は非常に立地特性が高いため、『一番立地』の路面店というのは、非常に魅力的な存在。
また、客層が『若者』や『家族連れ』に指示されている立地は更に親和性が高いものと考えます。
100店以上の閉店店舗の跡地を巡って様々な業種及び業態の競争が激しくなり、更に短期間での跡地交渉になることを考えると、一部の業種やチェーンだけが跡地に進出するのではなく、様々な業種が進出することになることが予測されます。
しかし、一番立地という家賃を考えると小零細企業の出店は考えにくく、チェーン組織が出店を行うことが予測されます。
「時代の変化への対応力」が経営には必須
今回は、日本マクドナルドの閉店店舗の行方を考察する切り口でお話を致しましたが、いかに『時代の変化への対応』が重要であるかと考えさせるニュースでした。
これからもどれだけの大手チェーンであっても『時代の変化』に対応できなければ、撤退する時代であることの証明のようです。
『人口減少』『少子高齢化』『競争激化』『消費飽和』等企業側として多数2016年も課題としては山積みではありますが、『時代の変化』に併せたマーケティング戦略を立案する。
ここが、フランチャイズチェーン本部も加盟店も、そして起業を志している方も重要であると思います。
『時代の変化』は『ビックデータ』を活用するだけでなく、『消費者目線・消費者心理』が欠かせないものです。2016年の年頭に当たり、再度『時代の変化』を検証し、自社の『マーケティング戦略』に変革を起こす必要があると考えます。