事業転換に該当する条件とは?利用できる補助金や日本企業の事例を紹介
近年では大手企業を筆頭に、1つの事業だけでなく複数の事業を手掛けている企業が増えています。既存事業とはまったく異なる業界のビジネスであっても、積極的に取り組むことで得られるメリットが豊富にあり、場合によっては経営が苦しい状態から立て直すことも可能です。
そこで今回は、事業転換がどのようなものかについてご紹介いたします。
事業転換とは?混同しやすい業態転換との違い
まずは事業転換がどのようなものか、事業転換と混同されやすい言葉との違いなどと併せてご紹介いたします。
事業転換とは
事業転換とは、企業がこれまで営んできた事業とはまったく異なる事業を行なうことで、主となる事業を変更することを指します。事業転換で注意しておきたいのが、変更するのは事業のみであり、業種は変更しないということです。この2つは間違われやすいため、再度確認しておきましょう。
業種とは
事業の種類を指した項目のことを指します。一般的には「業界」と同じ意味で使用されることもあり、「農業」「建設業」「卸売業」などがこれにあたります。
総務省においては、企業の売上高構成比率で主になる事業が属しており、日本標準産業分類において大分類に該当する産業のことを指します。
事業とは
営利目的で行なわれる経済活動のこと全般を指します。たとえば、コンビニで商品を売ったり、工場で物品を組みたて・製作することもすべて事業と呼びます。
総務省では、農業・建設業などの業種を細分化した項目に該当する産業のこととなります。
事業転換の具体例
日本において有名な企業の事業転換の例を3つ見ていきましょう。
任天堂
任天堂は子供から大人まで幅広い世代に支持される家庭用ゲームメーカーです。日本だけでなく世界各国で人気がありますが、元々は花札を製造するメーカーでした。次第にカードゲームが衰退し、新たに玩具類の開発を進めたことがきっかけで現在に至ります。
富士フイルム
富士フイルムは名前のとおり、写真用のフィルムを製造していたメーカーです。その後、世界初のデジタルカメラを製造し、社会にデジタルカメラの普及に貢献しました。しかし、カメラ機能付きの携帯電話の誕生を機に次第にカメラ関連の売上は減少してしまいます。
現在はフィルムに使われていたコラーゲンを活用した化粧品や医薬品の開発・販売事業を行なっています。
YouTube
有名な動画配信者の多くがプラットフォームとして活用しているYouTubeは、無料で多くの動画を視聴できる人気サービスです。しかし原型となっているのは動画によってデート相手を探すマッチングサービスでした。デートとは無関係の動画を投稿する人が増えたことで、次第に現代の動画共有サービスに移行していきました。
業態転換との違い
事業転換とよく混同されるものに「業態転換」があります。業態転換は文字のとおり、業態を転換することを指します。業態とはサービスや商品の提供方法などのことです。
たとえば同一商品を取り扱っていたとしても、オンライン販売と実店舗では販売方法が異なりますが、これを業態と指します。つまり、扱う商品やサービスによる違いではなく、どのように運営するのかという方法が業態です。
飲食店を例に挙げると、同一の商品を提供していても店内飲食からテイクアウトに変更する場合などが業態転換になります。
事業転換で利用できる助成金
事業転換を行なう場合「事業再構築補助金」を利用することができます。
事業再構築補助金とは
事業再構築補助金とはウィズコロナ・ポストコロナにおける経済環境に対応するため、中小企業が思い切った事業再構築に取り組むための補助金制度です。中小企業を対象にしているため、大企業は利用することができません。
2020年の第3次補正予算で1兆1,485億円もの予算が投入されたため、ご存じの方もおられるのではないでしょうか。事業再構築補助金は経済産業省が実施しており、コロナ禍で新たな挑戦が求められる中小企業にとって非常に注目されています。
事業再構築補助金を利用するための条件
事業再構築補助金を利用するには下記の3つの条件が求められます。
①2020年4月以降の連続する6ヶ月のうち、3ヶ月の売上高が前年比の-10%以上
②事業再構築に取り組む
③認定経営革新等支援機関と策定した事業計画がある
この3つの条件すべてに該当するだけでなく、審査委員による審査によって採択が決定します。
これら以外にも条件があるため、詳しい内容は経済産業省の事業再構築補助金ページをご確認ください。
個人事業主は助成金の対象になる?
事業再構築補助金はコロナ禍における経済社会の変化に対応するよう努める中小企業が主な対象ですが、中小企業だけでなく個人事業主やフリーランスでも利用することができる制度です。
事業再構築補助金には企業規模などによって細かな分類があり、個人事業主やフリーランスが利用しやすい枠に「緊急事態宣言特別枠」が設けられています。通常枠に比べると補助率が高く、緊急事態宣言にともなう休業要請対象ではなかった地域・業種でも要件に当てはまれば申請することができます。
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事業転換と認められる条件とは
上記でも簡単にご紹介したように、事業転換と認定されるには経済産業省の事業再構築指針の手引きで示されている条件に当てはまる必要があります。こちらで事業転換に該当する主な3つの条件をご紹介いたします。
製品などの新規性要件
製品などの新規性要件は3つの要件によって判断されます。
・過去に製造等した実績がないこと
・製造等に用いる主要な設備を変更すること
・定量的に性能又は効能が異なること
主要な設備の変更で注意したいのが、既存の設備を別の製品に使う場合や、同一商品を作るための設備の性能を上げた場合は該当しないという点です。 また、定量的に性能や効能の違いを計測できる場合は新たな製品であるという証明として説明が求められます。
市場の新規性要件
こちらの条件は「既存製品等と新製品等の代替性が低いこと」です。既製品でまかなえるような性質のものは新規性が認められません。
また、新規製品によって前年よりも既存製品の売上が減少することも認められません。既存製品と新規製品が相乗効果により、トータルの売上が上がることが重要です。
売上高構成比要件
上記の2つの要件を満たしたあとは売上高構成比要件について考えましょう。3~5年間の事業計画期間終了後に売上高がどうなるかで3つに分かれます。
①新分野展開…新規製品の売上高が総売上高の10%以上になる
②事業転換…新規製品の属する事業が売上高構成比のなかでもっとも高い事業になる
③業種転換…新規製品の属する業種が売上高構成比のもっとも高い業種になる
つまり事業転換として認められるには2に該当することが最終的な目標になります。この3つの分類は、上の章でご紹介した補助金の活用において重要な事項になりますので、間違えないよう気を付けてください。
事業転換が今後の企業を変える
新型コロナウイルスの影響により2020年以降、日本では新しい生活様式が求められるようになりました。それにともない、人々の経済活動にも変化が出ており、業種や企業によっては厳しい経営状態に陥りました。
事業転換はそのような企業が生き残るための手段であり、今後の命運を左右する存在でもあります。企業としての底力を上げるためにも、事業転換を考えてみてはどうでしょうか。
新規事業をイチから計画することが難しい場合は、フランチャイズに加盟するという方法もあります。フランチャイズを活用しての新規事業も事業再構築としての要件を満たせば補助金の申請もできるため、事業転換を考えている方はぜひ検討してみてください。
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