需要の安定した訪問介護で開業!新規参入の多い業界で勝ち抜く秘訣とは

フランチャイズWEBリポート編集部 |2019年10月13日 公開 (2020年12月10日 最終更新)
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訪問介護は、訪問先で食事や入浴などの介助を行うサービスです。依頼者の自宅を訪問して行うサービスで大型の施設がいらないため、初期投資が少なく需要も高い業種です。

これから訪問介護事業をおこなおうと考えている人に向けて、ここでは訪問介護で開業するための資金や、開業後の収入、失敗しないためのポイントを紹介します。

施設のいらない訪問介護サービス

訪問介護サービスは、自宅やサービス付き高齢者住宅(サ高住)などに住む要介護者を対象としたサービスで、訪問であることから設備投資が少なく済むのが特徴です。住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続ける「地域包括ケアシステム」の推進が進んでおり、需要も高まっています。そんな訪問介護サービスとは、具体的にどのようなサービスなのでしょうか。

訪問介護サービスとは

訪問介護サービスとは、介護を必要とする人の住まいを訪問し、生活に必要な各種介護を行なうサービスのことです。入浴や排泄、食事などの身体介護と、掃除や洗濯などの家事を手伝う生活援助が主なサービス内容ですが、通院時の送迎や受診手続きをサポートする通院等乗降介助も行ないます。

介護サービスには、特別養護老人ホームなど入居する施設サービスや、デイサービスやリハビリテーション事業所に通う通所サービスなど、さまざまなものがありますが、中でも訪問介護は住み慣れた場所で介護を受けられるのがメリットです。家族や地域包括支援センターなどが連携して介護を行なう地域包括ケアシステムとも合致するサービスといえます。

訪問介護サービスの内容

訪問介護の、3つのサービス内容について解説します。概ね2時間以上の間隔を空けて1日に複数回訪問するパターンや、身体介護と生活援助を合わせてスケジュールを組むパターンなど、利用者の状況によってサービスの提供回数や時間数が決まるのが特徴です。

身体介護

入浴や食事・排せつなど、利用者の身体に直接接触して提供するサービスです。健康状況の確認から専門的配慮をもって行なう調理、洗面や口腔ケアといった清潔保持など多岐にわたります。生活の質(QOL)向上や介護度の重度化防止を目的とした見守りや行動促進も重要視される傾向です。

生活援助

掃除や洗濯・調理など、利用者の日常生活を援助するために提供するサービスです。利用者が一人暮らしの場合や、家族の障害や病気などにより家事が困難であることが、サービス提供の条件となります。

通院等乗降介助

訪問介護員が運転する車両への乗降を介助すると共に、通院先での受診手続き・移動のサポートを行ないます。サービス提供にあたっては、道路運送法による「一般乗用旅客運送事業許可(福祉輸送事業限定)」や「自家用自動車の有償運送事業許可」の申請が必要です。

訪問介護サービスの需要増加

令和2年度高齢社会白書によると、2016年時点での平均寿命は男性80.98歳・女性87.14歳と年々長寿化しています。それに伴い要介護者も増加しており、2017年時点では約628万人です。

また、ヘルパーなど介護サービスの人に介護を依頼したいと考える人が配偶者に次いで第2位、介護サービスへのニーズの高さがうかがえます。サービス付き高齢者住宅や有料老人ホームといった高齢者専用の住宅が増加も顕著で、訪問介護サービスの需要増加が予想されます。

有資格者の雇用が必要!訪問介護の開業に必要な資格とは

訪問介護でも「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」で人員基準が定められており、開業にあたっては3人以上の有資格者を揃える必要があります。内訳は、常勤の管理者(1人)、サービス提供責任者(利用者数に応じた人数)、訪問介護員(常勤換算で2.5人以上)の合計で3人以上です。管理者は管理業務に携わる時間帯以外であればサービス提供責任者と兼務できる他、訪問介護員にはサービス提供責任者を含むこととされています。人員配置基準や管理者が兼務できる業務の考え方は、自治体によって異なる場合があるので注意しましょう。

サービス提供責任者になることができる資格は、介護福祉士・看護師・准看護師・保健師・実務者研修・ホームヘルパー1級・介護職員基礎研修などです。介護職員初任者研修を受けて3年以上の実務経験を積んだ人も、サービス提供責任者になることが可能です。常勤換算とは常勤換算数のことで、従業者の勤務延べ時間数h÷常勤従事者の勤務時間数hの計算式で求められます。

サービス提供責任者の資格

サービス提供責任者は、訪問介護計画の作成やサービス担当者会議への出席、訪問介護員への技術指導・アドバイスが主な業務です。利用者数40名に対し常勤専従者1名以上の配置が必要ですが、常勤換算方法を用いて一部のサービス提供責任者を非常勤としても差し支えありません。 常勤換算とは、4週間あたりの非常勤職員の総労働時間が、常勤職員何人分にあたるかを計算する方法で、次の計算式で算出できます。常勤の労働時間は就業規則で定められている正社員の所定労働時間と同一です。

常勤換算=常勤職員の人数+(非常勤職員全員の労働時間合計÷常勤職員1名分の労働時間)

サービス提供責任者の資格要件は次のとおりです。

・介護福祉士
・介護職員実務者研修修了者
・旧訪問介護員1級課程・介護職員基礎研修の修了者

なお、2019年4月以降は、3年以上の実務経験がある介護職員初任者研修・旧訪問介護員2級修了者はサービス提供責任者になれないので要注意です。

訪問介護員の資格

訪問介護員は、訪問介護サービスの実務を担当します。利用者の住まいで単独あるいは2名1組でのサービス提供が基本で、一定の知識・技術が求められるため、全員が有資格者です。デイサービスや特別養護老人ホームとは違って、無資格では介護業務に就けないので要注意となります。資格要件は次のとおりです。

・介護職員初任者研修修了者
・サービス提供責任者になる資格を持っている人
・生活援助従事者研修または旧訪問介護員3級の修了

訪問介護の開業に必要な手続きについて

法人の設立と事務所の確保、そして介護事業所の指定申請が必須

訪問介護を開業するためには、各種手続きをする必要があります。個人事業主として訪問介護を開業できないので、訪問介護事業所の指定を受けるためには法人の設立が必須です。一言で法人といっても、種類は多岐にわたり、それぞれ法人設立までの期間が異なるので注意が必要です。

法人の種類と特徴

法人は、営利法人として株式会社と合同会社、非営利法人としてNPO法人と一般社団法人があります。株式会社や合同会社の設立には通常3週間程度、非営利法人であるNPO法人の設立には3~5カ月程度、一般社団法人の設立には1ヶ月程度かかります。書類の訂正を指示された場合はさらに日数がかかるため、余裕を持ったスケジュールを組んでおくことが大事です。  

非営利法人は資本金ゼロで設立でき、認知やすいものの、設立の手続きには資金が必要です。審査があるため時間がかかるという特徴があります。一方で、営利法人は登記申請をすればすぐに設立できるというのが特徴です。

営利・非営利 形態 書類制作期間 登記手続き 設立費用
営利 株式会社 約2週間 1~2週間 24万円程度
合同会社 1日~3日 1~2週間 6万円〜
非営利 NPO法人 3~4週間(その後の審査期間:約4ヶ月) 1~2週間 数千円〜
一般社団法人 1~2週間 1~2週間 15万円程度

事務所の確保

訪問介護の開業にあたっては、訪問介護員等の活動拠点となる事務室の設置が必要です。広さに関する規定はありませんが、少なくとも事務作業・打ち合わせを行なうスペースや手洗い設備(洗面台)が必要となります。利用申込みの受付や利用者・家族の相談スペースも必要ですが、パーティション等でプライバシーへの配慮が行えれば事務室と同じスペースでも問題ありません。

介護事業者指定申請と指定申請に関する研修の受講

介護事業者の指定申請を行なう場合、事業開始を希望する日の2~4ヶ月前に自治体との事前協議が必須です。相談日時を予約した上で、事務所の平面図や法人登記事項証明書など指示された書類を持参します。

東京都の場合、事前協議は希望者のみ対応ですが「新規指定前研修」の受講が必須です。開設希望日の4ヶ月前の末日までに申込みを済ませ、翌月15日前後に開催される研修を受講します。

その後、指定申請に必要な書類一式を提出しますが、審査手数料が有料の場合は期限までに納付しなければ審査が進まないので注意しましょう。書類審査後、事務所の現地確認を経て事業者指定の決定がなされます。

なお、愛知県や京都府のように、事業者指定の決定が出た後に各種手続きの案内を行なう「新規指定事業者説明会」への参加が必須となっている自治体もあります。

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訪問介護の開業にはいくら必要?

訪問介護の開業に必要な資金は、500万〜1000万円が相場といわれています。費用の内訳は、人件費や求人、運転資金や設備資金などとなっています。開業にあたって介護施設は必要ないので、施設に関する準備が必要なのは事務所程度になります。他の施設型の介護事業ほどには施設に費用がかかりません。  

もっとも資金がかかる可能性があるのは、人件費です。特に、欲しい人材がうまく集まらないと、求人のための費用がかかる場合があります。また、介護事業は介護保険によって国から報酬が払われる仕組みなので、実際に介護を行ってから後日報酬がまとめて支払われることになります。そのため、開業後しばらくは収入がない期間があるので、半年程度の運転費用を用意しておく必要がある点も注意が必要です。

開業資金の内訳

開業にあたっては人材を採用する費用や事務所の賃料だけでなく、人件費などに充当する運転資金が必要です。通院等乗降介助サービスを提供する場合は、車両費や二種免許取得費用も必要となります。

採用費・人件費

常勤のサービス提供責任者・介護職員を1名ずつ採用する場合、社会保険料の会社負担分を含めた人件費は50万円前後必要です。採用時に有料の求人媒体を利用した場合は1週間あたりの掲載料が3万円~9万円、人材紹介会社経由で採用する場合には1名あたり30万円~70万円の紹介手数料が発生します。

事務所の賃料

事務所設置の許可が得られる物件であれば、アパートやマンションの一室で事務所を開設できます。賃料は地域や立地によりさまざまで、1ヶ月あたり3万円~15万円が目安です。前家賃・敷金・仲介手数料等を考えると、月額賃料の1年分は確保しておきたいところです。

運転資金

介護報酬はサービス提供月の翌々月下旬に入金されるため、3か月~6ヶ月程度の運転資金を確保しておくのが賢明です。人件費を含む固定費を80万円と仮定すると、6ヶ月分の運転資金は480万円になります。開業に向けた備品の費用も考慮して、運転資金を多めに確保しておきましょう。

車両費や二種免許取得費用(通院等乗降介助を提供する場合)

通院等乗降介助サービスを提供するためには、一般乗用旅客自動車運送事業の許可手続きと、介護タクシーの運行に必要な車両を1台用意する必要があります。車イス1台が乗れる福祉車両を新車で用意する場合、軽自動車だと150万円~200万円、ミニバンタイプだと260万円~400万円前後かかります。介護タクシーを運営するために二種免許保有者を採用する方法もありますが、退職に伴う運行停止リスクを考慮すると、30万円~40万円ほどかかりますが開業者本人が二種免許を取得しておけば安心です。

開業資金の調達方法

開業資金を調達する場合、開業者本人が取引を行なっている金融機関で融資を受ける方法があります。取引先の金融機関で融資に難色を示された場合、事務所近くの信用金庫であれば地域密着型金融に取り組んでいることもあり、比較的柔軟な姿勢で相談に対応してもらえるようです。

政府系の金融機関である日本政策金融公庫からの融資を検討する方法もあります。事業計画や将来性を考慮した審査スタンスを取っているとされ、担保・保証人を付けない場合でも最大金利は2.8%(2020年11月2日現在)です。

融資の審査期間は2週間~1ヶ月前後が目安で、審査途上で開業者本人との面談が行なわれる場合もあります。

訪問介護サービス開業後の収益モデルは?

訪問介護を開業した場合、オーナーの年収は400万〜1300万円といわれていますが、地域や事業規模などによって大きく異なるのが現状です。利用者が多ければ収入も上がる一方、スタッフ数が多ければ人件費がかかります。厚生労働省が公表している訪問介護での利益率や、前述の開業資金約500万円~1,000万円の回収見込みについて解説します。

厚生労働省による介護事業経営概況調査

厚生労働省の「令和元年度介護事業経営概況調査結果」では、2018年度決算における訪問介護事業の利益率(税引き後の収支差率)は4.1%、月の平均利益は10万5千円でした。施設にかかる固定費が少ない分、人件費率は77.2%と高めです。

利用者への訪問1回あたりの収入は3,554円、東京都特別区で20~30分の身体介護に加え、20分~45分の生活援助を実施、すなわち最大1時間15分のサービス提供に相当する金額です。訪問介護員常勤換算1人当たり訪問回数は月105回、週休2日制と仮定して1日あたり4~5件訪問で6時間程度の稼働と推測されます。

収支イメージ

前述の「令和元年度介護事業経営概況調査結果」を踏まえて、収支をシミュレーションしてみましょう。

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収入 支出
訪問1回あたりの単価 3,554円 年間人件費 約2,393万円
年間延べ訪問回数 約8,716回 年間諸経費約566万円
年間収入 約3,098万円 年間総支出 約2,962万円

法人税を差し引く前の純利益は年間136万円の見込みです。運転資金を含む開業費用を1,500万円と仮定すると、回収まで11年かかります(1,500万円÷136万円=11.02年)もっとも、介護事業の売上のうち利用者の一部負担金は1割~3割、残額は保険者や自治体から国保連合会経由で支払われる「制度ビジネス」であり、売上金の回収不能リスクは総じて低めです。

訪問介護では、訪問介護員の3割以上を介護福祉士としたり、個別研修計画に基づく研修を実施したりするなど、一定の条件を満たせば介護報酬の最大20%が加算される「特定事業所加算」が用意されています。開業当初の費用はかかりますが、加算を取得し続けることでの収益増加も期待できそうです。

開業前に知っておきたい!訪問介護開業で想定できるトラブル

訪問介護の開業は、できるかぎりスムーズに行いたいものです。そのためには、発生しうるトラブルを予測した上で事前に対策を講じておくと安心です。

最難関の人材確保

想定されるトラブルとしては、人手が足りなくなるケースが挙げられます。設立時に訪問介護員を常勤換算で2.5人、管理者と訪問介護員を兼務するとしても2名以上採用しなければなりませんが、思うように人が集まらないために、開業や事業の継続を断念せざるを得ないケースも見受けられます。

保険報酬が遅く運転資金が足りない

資金調達がうまくいかずに資金繰りに困るケースもあります。訪問介護は介護事業の中では比較的少ない資金で開業できますが、それでも最低限の経費と当面の運転資金はかかります。資金が足りないと安定した事業継続ができないので、運転資金はできる限りしっかり用意しておきましょう。

訪問介護の開業で失敗しないために!おさえておきたいポイント

ここからは、訪問介護のトラブルを踏まえて、開業で失敗しないために押さえておきたいポイントについて紹介していきます。

利用者の集客

訪問介護の開業を成功させるためには、積極的な広報活動と差別化戦略による、利用者の集客と固定化が大切です。訪問介護のサービス内容は画一化しがちですが、利用者のニーズを先読みするなど「気の利いた対応」を実践できれば、法令を遵守しながら利用者本位のサービスを提供できるでしょう。

2018年9月28日からは、介護保険のサービスと保険外サービスを組み合わせて提供する「混合介護」のルールが明確化されました。利用者の負担額増加に対する是非はありますが、通院帰りの買い物や庭の手入れといった、暮らしを豊かにするサービスを提供できるチャンスが広がっています。

ケアマネージャーや訪問診療を手がける医療機関などへ事業所の情報を定期的に提供するなど、多職種との関係を良好に保つことも、事業所の信頼感を高める方法の一つです。地域で開催される在宅ケア連絡会・研修会に参加して情報提供を行なっても、業種間のつながりが深まります。

ホームページの定期更新やチラシのポスティングによる、地域住民への情報提供も集客効果を発揮します。「開かれた事業所」というイメージが相談のしやすさ・利用申込みのきっかけになることもあるようです。

働く人材の確保

働く人材の確保も、訪問介護の開業を成功させるためには大切です。 介護職員の確保が困難な状況が慢性化しており、訪問介護員に限れば全事業所の81.2%が人材不足を感じている状況です(公益財団法人介護労働安定センター「令和元年度介護労働実態調査」)。一方、現在の職場で働き続けたいと考える介護労働者が6割近くにのぼり、人材不足に拍車をかけています。

ハローワークや求人媒体での採用ができないため、人材紹介会社を利用せざるを得ない実態もみられます。紹介手数料は年収の15%~30%が相場であり、事業所の財務状況と良質な人材確保に悩む管理者も少なくありません。

人材不足による事業休止リスクを回避するため、自分自身はもちろん家族や知人も介護職員初任者研修を修了していれば安心材料となるでしょう。

人材確保と集客が重要!市場拡大が見込める訪問介護を開業しよう

訪問介護を開業し、運営を軌道に乗せるためには、優れた人材の確保と集客力・宣伝力といったブランディングが重要なポイントです。運転資金を含む開業費用だけでも1,500万円ほどが見込まれ、全額を個人が調達し、全額を回収するのは至難の業でしょう。介護福祉士・訪問介護員を最低でも1名ずつ確保する必要がありますが、人材を確保できなければ開業計画は頓挫します。

反面、フランチャイズなら人材の採用・教育に関するサポートがあったり、オーナー自身に介護系の資格がなくても管理者として事業所経営に専念できたりするスケールメリットがあります。一から自分で開業するよりも費用を抑えられるのも魅力です。訪問介護開業にはフランチャイズに加盟する選択肢もあることを知っておきましょう。

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