フランチャイズ研究会 中小企業診断士高橋 利忠
2015-07-24 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
フランチャイズ研究会 中小企業診断士 高橋 利忠

立地と売上予測

 このコラムのポイント

店舗の命運を決めると言っても過言ではない立地、そしてシミュレーションのための売上予測。このふたつが一度にわかるコラムです。

フランチャイズWEBリポート編集部


店舗ビジネスは、「立地産業」とも呼ばれます。

同じ商品を、同じ方法・同じ価格・同じサービスで売ったとしても、立地によって売上が変わるからです。そこで立地選定、すなわち「店をどこに出すか」という視点が重要になります。

立地条件を判断して、その立地の将来性をどのように予測するかがポイントであり、とくに有利な立地を選ぶことが事業を成功へ導く鍵となります。

ここでは、物件探しから立地評価のポイント、売上予測の方法について解説します。

物件探しのポイント

業種・業態によって、出店場所や店舗面積などの目安があります。

例えば、ラーメン店を出す場合、こってり味のラーメンであれば学生や若年世代が多いエリアが理想的です。駅から離れた場所であれば駐車場の確保も考慮する必要があります。座席数30席用意するのであれば店舗面積は15坪程度必要です。

こうした目安をもとに、物件探しを始めます。物件は本部があっせんしてくれる場合と加盟者自身が探す場合があります。加盟者自身が物件を探す場合には、店舗物件にふさわしい条件を記した基準書等の資料が本部から提示されます。

情報取集においては、いかに多くの情報を確保するかも大切ですが、いかに早く情報をつかむかという点も重要です。いい物件はすぐに成約になるからです。流通に出る前の貴重な情報をつかむため、候補エリアを自ら見て回り空き物件をチェックすることも有効です。仲介業者に依頼する場合は、事前に条件を提示しておくと無駄がないでしょう。

物件には、1.スケルトン(建物躯体のみで店舗の内装設備がなく、電気配線や水道のレイアウトから計画する)、2.居抜き(店舗の内装設備が残っている)、3.テナント(ビルやショッピングセンターの一部区画を借り受ける)の3タイプがあり、それぞれメリット・デメリットがあります。

本部調査資料のチェックポイント

「立地評価は加盟希望者自らが行うべき」が大原則です。しかし、加盟希望者は多忙なことから、なかなか時間を割くことができません。そこで、本部が調査した立地評価資料を参考にするケースが多いと思います。

本部の立地評価資料を見る際、以下の点をチェックしましょう。

1.商圏範囲:マップに示された予想商圏の範囲は妥当か
交通量の多い幹線道路では、反対車線からの来店が困難なケースもあります。来店が見込めないような地域が商圏に含まれていませんか。

2.データ:使われているデータは最新のものか
人口などの統計データは何年前のものか確認しましょう。現在までに大きく変わっている場合もあります。

3.定義・出所:内部データや業界データの定義や出所が示されているか
定義や出所が明らかにされていないデータは信用できません。

4.競合:競合店調査はしっかり行われているか
競合店の存在が店舗の売上に影響します。どのような競合店があるのか、それぞれの強みや弱みは何か、確認しましょう。

5.地域特性:出店予定地域の特性が把握されているか
オフィス街などは、人口統計よりも昼間人口が多くなります。また、道路の交通量や歩行者数がどうか、確認しましょう。ショッピングセンターなど、人が集まってくる場所の存在によっても影響があります。

6.予測売上:予測売上を計算する手順は理に適っているか
売上予測の根拠を確認します。直営店の実績値をもとに売上予測している場合は、いつの実績値なのか、立地条件は出店候補地と似通っているかどうか確認しましょう。また、売上予測通りに利益が出たとして、最初の投資が回収されるまでに何年かかるのか、確認します。

立地評価のポイント

立地を評価する際、まずは、既存店の立地状況を比較してみることから始めます。
オープンしようと考えている店舗に合致する立地の店舗を選び、必ず自分の目で調査することが重要です。最低5店舗は既存店舗を見て比較するとともに、表などにまとめてチェックすると比較しやすくなります。

立地評価は客観的に、お客様の視点で行うことが最も重要であり、実査の最大のポイントは、地域住民になりきってよく観察することです。
立地評価は、面(商圏)⇒線(動線)⇒点(地点)の順で、市場から店舗へと評価を進めます。

実際に、ワークシートを使って比較してみましょう。

このように、候補店舗と比較店舗を比べ、数値化して比較します。数値化することで、数店舗を比較する場合に順位づけしやすくなります。

売上予測

売上を予測する主な方法はいろいろあります。机上の計算で予測する方法と、既存店舗の実績をもとに算出する方法があります。本部によっては売上予測値を示してくれる場合と示してくれない場合があります。

机上の計算で予測する方法(既存実績がなく新たに事業計画を作成する場合)

家計調査年報(総務省)とシェアで算出

売上高=費目支出金額×世帯数×予想シェア

客数と客単価で算出

売上高=見込み客数×予想客単価

座席数と回転率で算出

売上高=座席数×予想単価×1日の予想回転数×30日×12か月

こうした机上の計算を行うと、座席の埋まり具合やお客様の滞在時間(食事時間)、店員の配置人数などをイメージしやすく、対策も立てやすくなります。

売上が足りないと思った場合、座席数を増やしたり、持ち帰り客を検討することもできます。単価を上げるためにサブメニューを充実させることも考えられます。回転数を上げるためには、営業時間を見直すこともあります。

既存店舗の実績をもとに予測する方法

既存店舗の実績をベースとして、既存店舗と新規店舗の立地条件などの違い等を数値に反映させて算出します。フランチャイズ本部が提示する売上予測値は、既存店舗の実績をもとに予測しているケースが多くなっています。

既存店舗の実績数値の根拠を確認し、候補店舗との立地条件の違いなどを十分考慮して、売上予測することが重要です。

出店場所が決まったら、次は資金調達です。

ビジネスを始めるためには、まず元手である資金を用意しなければなりません。この創業時の資金を誰からいくら調達するかということは、その後のビジネスに大きく影響を与えます。

次回は、ビジネスで成功するために自己資金をいくら用意すれば良いのか、そして、資金調達方法についてみていきます。どうぞお楽しみに!

フランチャイズ研究会 中小企業診断士 高橋 利忠

名古屋大学経済学部卒業。都市銀行に16年間勤務後、転職して現在に至る。事業再生中の企業数社への出向など、ゼネコン、メーカーからサービス、飲食店まで幅広い実務経験あり。得意分野は事業計画作成、ファイナンス。主な著書に「よくわかる!フランチャイズ入門」(同友館、共著)、「フランチャイズ本部構築ガイドブック」(同友館、共著)、「中小企業のための経営承継マニュアル」(月刊税理、臨時増刊号、共著)など。