2015-07-13 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
エール労務サービス代表 社会保険労務士
兼峯 大輔 |
独立時に役立つ社会保障制度の恩恵
このコラムのポイント
このコラムでは脱サラ時に知っておきたい保険や年金制度のポイントについて書かれています。知っておくとお得な制度もあるのでチェックしておきましょう。
フランチャイズWEBリポート編集部
脱サラしてから知っておきたいのは社会保障の知識。ここで解説する社会保障とは勤めていた時に保障されていたであろう、雇用保険、健康保険、厚生年金制度に絞って解説します。
雇用保険で特に知っておきたいのは再就職手当
まずは雇用保険です。雇用保険とは民間の会社で働く人が、何らかの理由で働けなくなり失業状態となった場合に、再就職するまでの一定期間、一定額のお金を受け取ることができる保険のことです。また失業保険と呼ばれることもあります。
「失業した時にもらえるお金の金額」や「お金をもらえる期間」は、働いていた時の給料金額額や、どの位の期間働いていたか、どんな理由で失業したか、といった様々な理由によって変わってきます。
基本的に働いていた時の給料が高いほど、金額も高くなり、働いていた期間が長いほど、もらえる期間も長くなります。
ところで、これは「失業」というだけに独立をする場合は受給できないのでしょうか?
実はもらえる給付があるのです。それを再就職手当といいます。
これは早期に安定した職業に就き、又は事業を開始した場合に支給することにより、より早期の再就職を促進するための制度です。就職等をする前日までの失業の認定を受けた後の基本手当の支給残日数により給付率が異なります。
例えば、支給日数を所定給付日数の3分の2以上残して早期に再就職した場合は基本手当の支給残日数の60%の額が受給でき、3分の1以上残して早期に再就職した場合は基本手当の支給残日数の50%の額が受給できるのです。再スタートのお祝い金だと思って頑張れそうですね。
健康保険では、国民健康保険の制度の特性を理解しておきたい
次に金銭的なものではないものの社会保障の重要なウェイトを占めるのが健康保険です。
今までは勤めていた会社で保険証がありましたが、会社を辞めるとその保障が使えなくなります。よって国民健康保険に加入することになるのが通常です。しかし、一般的な会社で加入している健康保険のほうが国民健康保険より優遇されている制度があるのです。
まずは傷病手当金。健康保険には、治療のために仕事を休んだ場合は、4日目から最大1年半の間、給料の6割が支給されます。国民健康保険は自営業のための保険と言う建前なので、給料の補償はありません。
そして出産手当金。健康保険には、出産のために仕事を休んだ場合は、予定日の6週前から出産日の8週後まで、給料の6割が支給されます。国民健康保険にはやはりこの補償はありません。あとは家族が一定の条件を満たせば扶養に入れることができます。
では、会社を辞めたらすぐに、この保険を喪失しないといけないのでしょうか?
実は引き続き加入することができるのです。この制度を任意継続被保険者といいます。
これは退職しても元の勤務先の健康保険に、最長で2年間そのまま加入できる制度です。
退職して、転職先を探しているのになかなか再就職できなかったり、家族の加入している健康保険の被扶養者に、なれなかったときに利用できます。
加入条件は退職前まで、2カ月以上継続して勤務先の健康保険に加入していることが必要で、手続きの期限は退職の翌日から20日以内です。
これを過ぎると、正当な理由がない限り申請を受付けてくれませんので、十分注意しなければなりません。
気になる保険料は本人が退職時に支払っていた保険料と、健康保険組合全員の平均の保険料を比べて、どちらか安い方の保険料を支払います。
ただし保険料は、在職中は勤務先と本人がそれぞれ、50%づつの負担でしたが、任意継続被保険者になると本人が全額負担となります。それでも、国民健康保険に加入するより、保険料が安くなる場合が多くなっています。
また、雑所得や不動産所得など別の所得があったときも、保険料が高くなることはありませんが、一度決まった保険料は、任意継続被保険者に加入している期間は変わりません。
ただし、注意事項としては任意継続被保険者に加入できるのは最長2年間で、その後は他の健康保険に加入することになります。また、いったん加入すると、再就職や死亡以外の理由で、途中でやめることはできません。
それと保険料の支払いが遅れると、すぐに脱退になる場合がありますので、気をつけなければいけません。
しかし、いつ病気になるかわからないので扶養家族がいらっしゃる場合はそのことも考慮して選択することが大事でしょう。
年金制度は、保険料免除のことも知っておきたい
そして最後に年金制度です。こちらも一般的には会社の場合、厚生年金に加入しています。
会社を辞めると国民年金を自分で支払うことになります。しかし、独立前は収入がありません。そんな時申請できるのが免除制度です。所得が少なく本人・世帯主・配偶者の前年所得(1月から6月までに申請される場合は前々年所得)が一定額以下の場合や失業した場合など、国民年金保険料を納めることが経済的に困難な場合は、保険料の納付が免除になります。
免除される額は、全額、4分の3、半額、4分の1の4種類があります。
いかがでしょうか?これらの社会保障制度の給付の種類を押さえておくと費用の負担減をしながらも保証は受けられることになるのです。
一般的には社会保障制度は学校で教えてもらうことではありません。よって知らないとこの恩恵を受けられないのが今の現状です。独立したらより多くの情報収集力が問われます。
社会保障の知識だけでなく幅広いアンテナを張り、情報格差をなくしていくことが事業の成功へとつながるでしょう。そういった意味でもFCビジネスに加盟するというのは本部という情報インフラを活用できるので恵まれているかもしれません。