2016-09-29 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
一般社団法人キャリア35 代表理事 行政書士
尾久 陽子 |
女性の起業でも、知っておきたい「著作権」のルール
このコラムのポイント
事業をはじめると、チラシやホームページなどなんらかの形で、ユーザーや企業に向けて情報発信を行いますよね。そこで使用するイメージや文章がすべて自社のオリジナルであれば問題はないのですが、なかなかそうもいかないものです。今回のコラムでは、自社の情報発信をはじめる前に、必ず抑えておかなければならない「著作権」について学べます。
フランチャイズWEBリポート編集部
こんにちは。女性のローリスク起業を支援する一般社団法人キャリアの代表理事、尾久陽子です。
みなさんご存知ですか?
ホームページを自分でつくる際、検索サイトで画像をチェックして、
女性の起業でも、知っておきたい「著作権」について、まとめますね。
「著作権」とは?
一言でいうと、
「著作権」とは「著作物」の「著作者」に与えられた権利です。
※詳しくは、著作権法という法律に定められています。
「著作物」を創作した人を「著作者」といいます。
「著作物」って何?
次のようなものをさしています。
思い・考え・気持ちを(思想 または感情を)
クリエイティブに(創作的に)表現した
文芸、音楽、美術、映画、コンピュータプログラムなど
時代とともに、表現の幅は広がっていますから、ネット動画や、ダンスの振付なども、著作物ですね。ただ、なんでも創作物になるとは限らないのです。「クリエイティブ(創作的に)に表現した」、という条件に注目してください。
「料理のレシピ」や「ちょっとしたアイデア」「どこにでもある、ありふれた表現」「量産されている工業製品」などは、著作権法が保護する著作物ではないところがポイントです。
もっともこれらも、発明であれば「特許権」、工業製品のデザインなら「意匠権」、会社や商品の名前やマークなら「商標権」と、別の法律で保護される権利であるかもしれません。「特許権」などの権利は、登録をしないと権利が発生しませんが、なんと、著作権は、登録は不要。創作したら、自動的に権利が発生することに特徴があります。
ちなみに、©マーク(著作権表示)があってもなくても、著作権のあるなしには、まったく関係ありません。
「著作権登録制度」って、あるのでは?
はい、確かにあります。
ペンネームで創作した著作者の本名を登録するなど、権利関係をはっきりさせておくことを目的に、一定の内容を文化庁に登録する制度があります。ただし、あくまでもこれは補助的なもの。著作権の効力を発生させたり、保証する制度ではありません。
どのようなことをすると「著作権侵害」になる?
では、もともと「著作者」にはどのような権利が保障されているのでしょうか。以下に挙げる権利が、創作した時点から著作者の死後50年まで保護されます。
人権を守る権利
・作品の公表をするかしないかを決めること
・作者の名前を出すか出さないかを決めること
・自分の作品の内容を勝手に改変させないこと
財産を守る権利
・印刷、録画などコピーをすること
・上演したり演奏したりすること
・上映すること
・ネット配信すること
・朗読など口に出して伝えること
・展示すること
・販売したり貸したり、コピーを売ったり貸したりすること
・翻訳したり編曲したりして変えること
・自分が原作した作品を利用すること
この「著作者の権利」を侵害することが、「著作権侵害」。
だから、フリー素材ではないネット上の写真を無許可でコピペして使えば、著作権侵害となるわけです。
また、無断で作品の中身やタイトルを変えたり、作者が希望していないのに、勝手に本名で発行したりすれば、著作者人格権侵害となります。
著作権侵害をしたときの罰則は?
これらの著作権侵害があったときは、権利者は侵害した人に次のような「民事上の請求」をすることができます。当事者間で争いがあれば、最終的では裁判で闘うことになります。
著作権侵害は立派な犯罪。被害者の著作権者が告訴することで、侵害者を処罰できる「親告罪」です。
「著作権、出版権、著作隣接権の侵害」は、10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金。「著作者人格権、実演家人格権の侵害」などは、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金などが定められています。
また「法人などの著作権侵害」だと、3億円以下の罰金など、もっと厳しい罰則が定められています。
もっとも、多くの方がご存知のことかと思いますが、外出している家族があとで見られるようテレビドラマを録画しておく(私的使用のためのコピー)など、一定の理由があるときは、著作権の範囲が制限され、自由に利用することができます。
しかし、このような私的使用目的についても、ダウンロードする著作物等が有償で提供されていることを知っているのにもかかわらず、無断アップロードのサイトからデジタル録音・録画を行ったときは、2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金が科せられることも、知っておいてください。
実は身近!な「著作権侵害」
ここまで読まれて、著作権侵害の罰則の厳しさに、驚かれたのではないでしょうか。
でも、世界中無数にあるサイトの写真や、文章、いろいろな作品をちょっと使用したくらいでは、知れることはないのでは?
ニュースに書かれる事件は、悪質なコピー品の大量販売。まさか自分が訴えられることはない、と感じられるかもしれません。
しかし実は、パンフレットに使用された写真の無許可使用を争うようなことは、めずらしくないこと。
ある旅行パンフレットの使用で争われた件では、民事の訴訟に加えて、刑事でも起訴されました。
当然、大きい記事ではなくても、新聞沙汰になる事件。そんなつもりじゃなかったと言っても、その時はもう遅い。許可を取らずに使用したことが、会社の信用を損ねる重大事につながるのです。
また、ある小さな会社では、業務で使用するコンピュータソフトの一部が、コピー品だったことがありました。
最初は「私的使用」くらいの軽い気持ちで使用していたのかもしれません(もっとも事業で使用するなら、すでにそれは私的使用の範囲外ですから論外ですが)。いつしか、会社も大きくなるにつれ、あの会社はコピーソフトを使っていると、風のうわさを耳にするようになりました。その後、お勤めされていた方や関係者からの内部通報があったのかもしれません。
うわさを聞いてから何年もたってから、会社にソフトウェア権利保護団体から通知・調査が入り、今までの不正が暴露されました。
もちろん今までのソフト使用料を払うこととなり、会社は莫大な出費を余儀なくされました。
誰も見ていないから大丈夫。
いいえ、著作者、関係者は黙って、見ています。あなたの行いを…。
いくら本業で頑張って誠実な姿勢を見せていても、著作物を不正使用していたら、周囲からの信用も台無しです。著作権の最低限のルール、ぜひ頭に入れておいてくださいね。
著作権についての情報を知りたいときは
公益社団法人著作権情報センターのサイトが詳しいので、お勧めです (著作権電話相談室もあります) http://www.cric.or.jp/index.html
編集部より
2020年 東京オリンピックのロゴでも記憶に新しい、この「著作権」問題。
自作したもの以外は、すべて「ほかの誰かが作ったもの」であるという認識を常に持っておくことが大切です。
ホームページに画像一つ貼り付けるにも、その画像があることで「ユーザーに良い印象を与えられる」という利益を得るわけですから、その著作者にはなんらかの対価を払う必要がありますよね。
起業の一つの手段としてのフランチャイズ。フランチャイズというシステムはその商標やビジネスの成功モデルを利用できる代わりに、加盟金や月々のロイヤリティなどを支払う仕組みになっています。本部が作ったもの、つまり「著作物」をビジネスパッケージとして販売するライセンスビジネスという見方もできますね。