フランチャイズ研究会 中小企業診断士楊典子
2017-01-31 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
フランチャイズ研究会 中小企業診断士 楊典子

未就学児をもつママがきちんと起業するための知恵

 このコラムのポイント

ただでさえ大変な子育てママが「起業したい」と思うのですから、そのパワーを何に削がれることなく世に放ってほしい!それを果たすママ起業家が、沢山増えれば、社会は明るく大きく変わっていきます。このコラムでは、起業する女性の苦悩に寄り添ってきた著者が、家庭をもつ女性が起業の一歩を踏み出す時、大切にしたいこと、根本的なところでつまづかないために想定しておくべきポイントについて知ることができます。

フランチャイズWEBリポート編集部


こんにちは!女性のローリスク起業を支援する「一般社団法人キャリア35」理事、楊典子です。

今回は、未就学児を子育て中のママさんが起業する際にぜひ覚えておいて欲しい、2つのポイントについてお話しします。

私自身も自分で会社を運営しながら、3歳児を育てるママでもあります。自身の経験、そして創業支援の中でよく聞いた「あぁ、これ予め知っておけば(準備しておけば)良かった!」というポイントをまとめていますので、ぜひ覚えておいてくださいね。

激戦区で保育園に入れたいなら、オフィスと報酬に気をつけよう!

これはいわゆる「保育園激戦地域」に住む方向けの情報です。

自宅をオフィスに開業するか否か

起業すると決めたけど、自宅で作業できる内容での起業。

そのような場合には、経費を減らすために、オフィスを借りずにコストを減らそう!という方も多いですよね。もちろん事業にかかるコストを抑えることはとても大切。

ただ、保育園に入れたいという希望がある場合には、自分の地域の保育園の点数表で自宅勤務が不利にならないかをまずはチェックしてみてください。

多くの地域では、認可保育園への入園は「保育の必要性」を計るために項目毎の点数表を用意しており、その合計点が高い人から入園させるという仕組みを採用しています。

例えば、東京都江東区の場合、在宅ワーカーの自営業の方は「子どもを職場に同伴できる環境にある」とされ、外で働いている方よりもマイナス2点の減点となります。

激戦区で認可保育園に入園させたい!というのであれば、シェアオフィスなど、コストを抑えつつ、外で仕事が出来る環境を整えるようにしましょう。

役員報酬や収入の額にもハードルがある

そしてもう一つは「役員報酬」「収入」についての留意点です。

ちゃんと仕事をしているのか?ということを客観的に確認するために、「地域の最低賃金以上の収入を得ている」ということが確認されます。

291月時点での東京都の最低賃金は932円です。

ということは、月の収入が932×8時間×20日=149,120円以上あることが必要となります。

保育園申込み日の直近3ヶ月の収入を記載しますので、3ヶ月で447,360円以上の役員報酬や収入が必要ということになりますね。

特に、法人として起業した場合、役員報酬を事前に決定しておく必要がありますので要注意です。最初は稼げないからと無給や上記以下の報酬にした場合、この点が指摘される可能性がありますので、報酬の決定には保育園のことも頭に置くようにしましょう!

子どもの急病に備えよう!

会社員やパートとして働いているときには、お子さんが病気で急にお休みする必要ができても、電話一本でお休みできる環境の方が多かったと思います。

でも、自分が事業主となると話は別。「自分の仕事を代わりにこなしてくれる人」がいないことが一般的ですし、簡単に予定を変更もできないという状況が生まれます。

近くに祖父母や親戚など、いざというときの頼り先がある方はまだ良いのですが、そうでない方は起業準備と平行して、保育園や幼稚園に預けられない時の対策を用意しておくようにしましょう。

具体的には、病児保育にも対応しているベビーシッター会社へ事前に登録しておくことがお勧めです。

例えば地域は限定されますが「認定NPO法人フローレンス」では朝8時までに依頼があった病児保育は100%対応するということを掲げ、共済型の月会費制病児保育サービスを提供しています。

認定NPO法人 フローレンス http://byojihoiku.florence.or.jp/

ただし、人気が高すぎるため新規入会は抽選制になっていますので、起業前から申込みを始めるという対策が必要となっています。

他にも様々な事業者さんが病児保育やシッターサービスを提供していますので、ご自身の地域の会社に連絡し、体験をした上で2件ほど登録しておくと、いざという時に安心です。

家庭とのバランスが、輝く力になる。 

小さいお子さんを持つママさん起業家は、事業を軌道に乗せることだけでなく、お子さんを健やかに育てること、温かい家庭を維持することなど、多くの役割をこなさなくてはなりません。時には寝る時間を削ってこなしていく、ということもあるでしょう。

ただ、これだけは断言します。

役割のバランスがとれた起業家ママさんは、キラキラして本当に『輝いている』!!

キラキラ輝くママさんは、何よりお子さんにとっての誇りや憧れになるはず。

事業成功の知恵とあわせて、子育て両立の知恵もぜひ身につけて起業しましょう!

 

フランチャイズ研究会 中小企業診断士 楊典子

福島県出身、立教大学経済学部経済学科卒。新卒から一貫して経営コンサルティング業務に従事し、外資系コンサルティングファーム等を経て独立。五葉コンサルティング株式会社代表取締役。世界的企業から個人の創業まで、多数の支援実績を持つ。製造業の業務改革や各種FC本部構築などに関わる。主な著書にフランチャイズ入門(同友館)、フランチャイズ本部構築ガイブック(同友館)、好きを仕事に!―私らしいローリスク起業(BKC出版)など。