個人タクシーの開業に資格は必要?開業の方法・条件を解説

フランチャイズWEBリポート編集部 |2019年11月18日 公開 (2021年04月02日 最終更新)
個人タクシーになるには?

タクシー会社で勤務しながらタクシードライバーとしての経験を積んでいくうち、個人タクシーとして独立したいと考える人もいるでしょう。タクシー業界では過酷なノルマや、白タクなどの問題がありました。そこで、昭和34年に「永年の無事故・無違反の優良運転者に夢を与え、業界に新風を送る」との大臣声明があり、同年に個人タクシーが誕生しています。

個人タクシーを開業するには一定の勤務実績が必要で、年齢によって資格や条件が異なるなど、さまざまなことを考えて準備しなければなりません。そこで今回は、個人タクシーになる方法や必要な資格、資金などについて詳しく解説します。

個人タクシーと法人タクシーの違いとは

個人タクシーも法人タクシーも、お客様を目的地まで乗せて代金をもらうという仕事内容に違いはありません。また、歩合給という給与体系も同じですが、法人タクシーの歩合給は高くても60%程度です。一方で、個人タクシーの場合は歩合給が100%になります。燃料代などの必要経費はもちろん自分の負担になるものの、効率よく売上を上げることができれば法人タクシーよりも収入アップが見込めるのでしょう。

また、法人タクシーでは会社に出勤する必要があり、点呼や車両の整備を行なわなければなりません。また、拘束時間が長い場合があるほか、交代時間や休憩時間も決まっていることがあります。

しかし、個人タクシーでは基本的に勤務時間は自由です。好きな時間に働いて休むことができるなど、個人の都合やライフスタイルに合わせた働き方ができます。

加えて、個人タクシーは75歳まで現役で働けますし、健康診断の補助をはじめ、国民年基金や小規模企業共済、労災保険への加入など組合による福利厚生の利用も可能です。個人事業主として働くと補償がなくなる心配が付き物ですが、個人タクシーとしての働き方なら安心感は高いと言えるでしょう。

個人タクシーになる方法

個人タクシーになるには、自分が新規で許可を受けて事業をスタートする方法があります。また、個人タクシーを営んでいた親などから相続によって事業を継承することができるほか、譲渡譲受という方法を用いて個人タクシーの業務をはじめることも可能です。

そこで、この段落では、個人タクシーの新規許可と譲渡譲受の2つについて、それぞれ詳しく説明します。

新規許可

新規許可は文字通り、新たに個人タクシーの許可を受ける方法です。新規許可に関しては申請時期や処分時期などが定められているため、申請時期に合わせて手続きを進める必要があります。詳細は営業地域の地方運輸局で公開されており、東京都の場合は新規許可申請が9月です。

譲渡譲受

譲渡譲受の認可申請は、すでに個人タクシーの許可を得て営業している事業者から事業を譲ってもらう方法です。そのため、譲渡者と譲受者の間で「譲渡譲受契約」を結ぶ必要があります。譲渡譲受の認可申請については、新規許可のように年間で申請できる時期が決まっているわけではなく、通年申請が可能です。

ただし、個人タクシーになるためには試験に合格する必要があり、事前試験と申請後試験で手順が異なります。事前試験を受けた場合、合格後に発行される合格証の期限は2年間あります。もし、個人タクシーになりたいと考えた時点で譲渡者が見つかっていなくても、合格してから2年の期限内に譲渡者を見つけて契約し、認可を受ける営業区域の地方運輸局に譲渡譲受認可申請を提出すればいいのです。

一方、申請後試験制度では、先に譲渡譲受認可申請を行い、その後試験を受けて合格すれば認可されます。

譲渡の手続きや受験の申請に関しては個人タクシーの協同組合が対応してくれます。東京都の場合は「東京都個人タクシー協同組合」です。また、東京の一部については新規許可が事実上停止している点に注意しましょう。

個人タクシーになるために必要な資格や条件について

個人タクシーになるためには、全年齢で必要となる資格があるほか、年齢によって条件や求められる資格が異なる点もあります。そこで、この段落では、個人タクシーになるために必要な資格と条件について、年齢別に詳しく説明します。

全年齢共通の必要資格

タクシードライバーとして営業する場合、法人タクシーも個人タクシーも、二種免許が必要であることに変わりありません。ただし、二種免許を持っていれば誰でも簡単に個人タクシーの申請が通るわけではなく、過去に運転免許の取り消し処分がないことなど、いくつか条件があります。

ほかにも、申請日以前の3年間及び申請日以降に反則金の納付命令を受けていないことや、自動車運転代行業などを営んでいたことがあり営業停止や営業廃止などの命令を受けていないことなどの条件も満たしている必要があります。

年齢別の必要資格

個人タクシーの申請には年齢制限もあり、65歳未満でなければなりません。そのほかにも、年齢によって備えていなければならない条件が少しずつ異なります。そこで、ここからは年齢別の条件や必要資格について詳しく説明します。

ここで紹介する以外にも、資金計画や健康状態、自動車車庫などについても細かい資格が規定されているので、しっかりと確認しておきましょう。具体的内容は、以下の一般社団法人全国個人タクシー協会のページで紹介されています。

35歳未満の場合

個人タクシーの申請を行う時点で35歳未満の場合、申請日以前に、申請しようとする営業区域内の同一タクシーまたはハイヤー事業者に継続して10年以上雇用されていた経験が必要です。

「同一の」というのが条件ですから、タクシードライバーとしての経験が10年以上あったとしても、転職するなどひとつの事業者で勤めた経験が10年に満たなければ認められません。また、申請日以前10年間で無事故無違反であることも必要な条件です。

35~40歳未満の場合

35~40歳未満の場合は、個人タクシーの申請をしようとする営業区域内で、自動車の運転を専ら職業としていた(いわゆる職業ドライバー)期間が10年以上であることが必要です。

この条件に関しては、タクシードライバーだけではなく、トラックドライバーやバスドライバーとして働いた期間も換算されます。ただし、一般旅客自動車運送事業用自動車以外の職業は50%の換算であるため、タクシーやバスなどのように旅客運送ではないトラックドライバーなどの期間は、10年の勤務経験でも5年の換算です。

また、運転経歴のうちタクシーやハイヤーとしての運転経験が5年以上あり、なおかつ3年以上は継続して従事していた経験もなければなりません。なお、申請日以前の10年間が無事故無違反の場合は、40歳~65歳未満の要件で適用を受けることができます。

40~65歳未満の場合

40~65歳未満の場合は、申請日以前の25年間で職業ドライバーだった期間が10年以上であることが必要条件です。なお、一般旅客自動車運送事業用自動車以外の自動車の運転を職業としていた期間は、35~40歳未満の場合と同様に50%に換算されます。

また、申請しようとする営業区域内でタクシーやハイヤーの運転を職業としていた期間が申請日以前の3年以内に2年以上あることも必要です。

個人タクシーの収入は?

個人タクシーの平均年収は約342万円ですが、この数字は全国平均であり、都道府県別や年齢別で見ると大きな格差が生じています。とくに年収が上がりやすいのは、都市部や観光名所がある地域です。収入が最も高い地域と低い地域とでは200万円を超える差があります。ただ、収入を高めるためのポイントがあるので、この段落で詳しく見ていきましょう。

個人タクシーの収入の差が生まれる理由

個人タクシーのドライバーは、会社勤務のタクシードライバーよりも自由度が高い働き方です。収入を上げるための行動できれば、一定程度の収入アップは期待できます。そこで重要なのが「いつ・どこで・どのように」働くかという点です。

むやみに車を流して乗客に手を上げてもらうのを期待するのではなく、乗客を確保しやすい時間帯やエリアをリサーチしておけば効率よく乗客数を増やせます。心地よいサービスや対応だと乗客に思ってもらえるようになると、リピーターになってもらえる可能性があるでしょう。このような小さな積み重ねが収入の差に表れやすい仕事です。

個人タクシーで年収1000万越えはありえるのか

個人タクシーを開業してすぐに年収1000万円を超えるのは簡単ではないものの、経験を積み重ねていけば不可能ではありません。基本的に、しっかりと働けるように体調管理をすること、客商売なので車内や身だしなみの清潔さを保つことは必須です。

そのうえで、1000万円以上の収入を得る個人タクシーのドライバーの場合、タクシーの利用頻度が高い場所や、深夜帯に長距離利用される場所を把握しています。年収で頭一つ抜けるためには、ほかのタクシードライバーとは違う視点を持ちつつ、努力を継続していくことが大切です。

東京と地方では収入は違うの?

都市部ほどタクシードライバーの年収は高い傾向にあり、とくに東京都のタクシードライバーは約479万円と、2位の大阪府の410万円と比べても圧倒的な差があります。

一方、約274万円で最も低い年収となっているのは、青森県・秋田県・佐賀県・宮崎県・沖縄県の5県。300万円台後半となったのは神奈川県と愛知県で、それ以外の地域では300~350万円の範囲内です。

個人タクシーには組合があるの?

全国各地に個人タクシーの協同組合があります。個人タクシーを開業するには、まず試験に合格し、そのうえで各種申請手続きなども行なわなければなりません。協同組合に加入していると申請手続きのアドバイスを貰えるだけでなく、代行してもらうこともできます。

加えて、チケットやクーポン、無線配車など協同組合が提供するサービスの利用も可能になるので仕事の幅が広がるでしょう。協同組合の加入は任意ですが、すべてを一人で行ないながら収入を上げていくのは困難です。開業後に順調に売り上げを伸ばしていくためにも組合への加入を検討しましょう。

個人タクシーになるメリット、デメリット

個人タクシーを開業するメリットとして大きいのが勤務時間の短さです。タクシー会社に勤務していると決まった時間で働きますが、個人タクシーのドライバーは自分の裁量で働けるので、自由な時間を確保したい人には大きなメリットでしょう。労働時間を短くしても、働き方の工夫により大幅に収入を上げることは可能です。

ただし、収入が上がる一方で重い経費負担があるのはデメリットになります。ガソリン代や車両の維持費、駐車場代などを自身で工面する必要があるので、収入が上がったと実感できない人もいるかもしれません。タクシー会社に勤務している間は心配しなくても良かった諸経費の負担が重く感じられ、個人タクシー開業を後悔する人もいます。じっくりと検討したうえで開業に踏み切ることが大切です。

個人タクシーになるには試験を受ける必要がある

個人タクシーになるには、資格や条件を満たすこと以外に試験を受けて合格する必要もあります。試験には法令試験と地理試験があり、1回の出願で受験できる試験回数は1回だけで、再試験はありません。45問ある法令試験では41問の正解で合格、30問の地理試験では27問正解が合格の基準です。

なお、申請しようとする営業区域内で申請日以前継続して10年以上タクシーやハイヤー事業者に雇用され、申請日以前5年間無事故無違反であれば地理試験が免除になります。また、申請日以前継続して15年以上タクシーやハイヤー事業者に雇用されていれば、無事故無違反を問わず地理試験は免除です。

各地の個人タクシー協同組合では、個人タクシーの試験向けの勉強会が実施されています。

試験は語群選択式と〇×式になっており、文章で解答する設問はありません。実際に過去に出された試験問題は以下のような内容でした。

【法令試験の過去問】

次の記述のうち、適切なもの正しいものには〇を、適切でないもの誤っているものには×を、回答欄に記入して下さい


一般乗用旅客自動車運送事業の運送約款には、少なくとも運賃及び料金の収受並びに事業者の責任に関する事項が明確に定められていなければなりません。(正解は〇)

【地理試験の過去問】

3つの中から施設に最も近い駅名を選び、その記号を解答欄に記入しなさい。


昭和大学付属烏山病院


   1.千歳烏山駅     2.上北沢駅      3.千歳船橋駅

(正解は1)

個人タクシーになるために必要な資金について

個人タクシーの事業者になるためには、自分で車両を購入しなければならず、その費用に数百万かかります。事業として成り立たせるためには、ほかにも設備資金や運転資金などが必要です。設備資金としては原則80万円以上、運転資金にも80万円以上は用意しておかなければなりません。もちろん、商売道具である車両を適切に保管しておくための自動車車庫を確保するための資金があることも大切です。

そのほかに、万一、事故を起こしてしまったときに備え、自賠責保険料を支払うのはもちろん、任意保険や共済にも加入しておいたほうがいいでしょう。忘れないように保険の支払いにかかる年間額も計算に入れておくことが必要です。

以上のような点を考慮すると、個人タクシーになるためには総額で200万円以上の資金を用意することが一般的になっています。

事例に見る個人タクシーになるための資金

開業資金は車両が新車か中古車かで変わってきますが、相場は300万円ほどが最低限必要な金額と考えておくのが無難です。中古車なら200万円で開業できたケースもある一方で、新車で開業するなら1,000万円は必要だともいわれています。ただし、組合によっては貸し付けをしてくれる場合もあるので、自己資金を用意できなければ相談してみるのも良いでしょう。

個人タクシーになるには要件のクリアが必須!独立は計画的に

個人タクシーの事業者になるためには、タクシードライバーとしての経験が必要なほか、いくつかの条件も満たす必要があります。いざ、個人タクシーになりたいと思っても、必要な資格を持っていなかったり、条件を満たしていなかったりすれば夢は実現しません。

個人タクシーとして活躍するために、必要な資格や条件を確認し、早い時期から計画的に準備を進めて開業を目指しましょう。

Web上では、個人タクシーを目指す熱いメッセージも見られます。

「多くの法人タクシー乗務員にとって、個人タクシーを開業する事は「夢」であり「目標」でもあるのです。我々の世界の中で個人タクシーとは、「タクシーの中のタクシー」「キング・オブ・タクシー」なのであります。」(タクシーワーク

創意工夫により仕事の質を高め、収入アップも狙える個人タクシー。あなたも「キング・オブ・タクシー」を目指して一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。