フランチャイズ研究会 中小企業診断士山崎泰央
2015-05-15 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
フランチャイズ研究会 中小企業診断士 山崎泰央

独立の決意と自己分析

 このコラムのポイント

独立の一手段であるフランチャイズを考え始めた時に読みたいコラム。自身を俯瞰して、自分がどうなりたいかを元に棚卸しをしてみることを提案しています。具体的にどのように棚卸しをしていけばいいのかも触れられているので自身を客観視してみながら見てみましょう。

フランチャイズWEBリポート編集部


はじめに~加盟プロセス~

「会社を辞めて、フランチャイズで独立しようかな…」

そう思いついたとき、まずは何から始めればよいのでしょうか。

私たちフランチャイズ研究会は、毎年全国各地で開催されているフランチャイズの展示会にブース出展し、加盟希望者に無料加盟相談を行っています。驚くことに、展示会場で相談に来る人のほとんど全員が、フランチャイズに加盟するまでのプロセスを知らず、意識すらしていません。

そして、多くの人が、情報収集やフランチャイズ本部の比較・検討等をしっかりと行わずにフランチャイズ加盟をしてしまいます。

安易な気持ちで加盟した結果、人生を棒に振ってしまった人を、私たちは数えきれないほど見てきました。その中には自己破産をする人や、借金返済のために家庭が崩壊してしまった人も大勢います。

フランチャイズは、自力で開業するよりは失敗リスクは低いものの、それでも成功する人より失敗する人の方がはるかに多いことは、しっかりと肝に銘じておいてください。

フランチャイズ加盟で失敗しないためには、まずは加盟までのプロセスを理解することが大切です。加盟プロセスを理解しないということは、フランチャイズ加盟という未知の大海原に対して、海図も必要な道具も持たずに着の身着のままで漕ぎ出すようなものです。

人はそれを無謀といいます。まずは成功までの道のり(加盟プロセス)をしっかりと確認してから進むようにしましょう。

加盟プロセスは、大きく分けると図のように5つのフェーズに分かれます。
今回はこのプロセスのうち、フランチャイズ加盟ワークブックにある「1.自己分析とフランチャイズの正しい理解」の自己分析についてみていきましょう。

独立を成功させるために必要な資質と条件

この記事を読んでいる人の中には、「いずれは独立して一国一城の主に」と考えている人も多いでしょう。

独立して事業を立ち上げ、その事業を成功に導くためには、自身が持って生まれた資質や、その資質を向上させるための絶え間ない努力、また家族や親といった周囲の関係者たちの協力得ること、などがとても重要になります。当然、フランチャイズ加盟で独立する場合も全く同じことだと考えてください。

「フランチャイズ加盟したからには、フランチャイズ本部が何とかしてくれるだろう」といった甘い考えでは事業を成功させることなど到底できません。まずは最低限、次から説明する3つの心構えは理解しましょう。

1.主体性を持とう

事業を成功させるのも、残念ながら失敗させてしまうのも、結局は本人次第だということをまずは理解しましょう。フランチャイズ加盟もビジネスである以上、自己責任が基本になります。

フランチャイズ本部への依存心は、事業の成功を妨げる危険な障害物と言えるでしょう。フランチャイズ本部からの指示を待っているだけではなく、主体性をもって行動しましょう。事業を成功に導くことができるのは、加盟者本人だけなのです。

2.素直さや謙虚さを持とう

一方で、フランチャイズ本部からのアドバイスを素直に受け入れることも大切です。「自分には自分のやり方がある」という考えで、フランチャイズ本部のアドバイスを受け入れないようでは、そもそもフランチャイズに加盟する意味がありません。

フランチャイズ本部は、今までの経営経験から様々なノウハウを持っています。そのノウハウを加盟者が利用できるのは、フランチャイズのメリットの一つです。アドバイスは素直に受け止め、自分が足りていない部分を補ってもらっているのだという謙虚さを持つようにしましょう。

また、事業を成功させるために、利用できるものは何でも利用するという貪欲な姿勢も時には必要です。

3.惜しまず努力しよう

とはいえ、初めからすべてを完璧にこなせる人などいません。多くの人は大なり小なり失敗を繰り返しながら成長をしているのです。身もふたもない言い方ですが、事業を成功させる秘訣は、「地道に一歩一歩努力しながら前進する」、「成功するまであきらめずにやり抜く」ということしかありません。

以前、企業の経営者が、「判断に迷ったときは、あえて面倒そうで、やりたくない選択肢の方を選ぶ」と言っていたのを聞いたことがあります。そうした方が、結果的にかえって良い結果になることが多いからです。成功には近道がないと考え、努力することをいとわないようにしましょう。

さて、事業を成功させるための3つの心構えを説明しましたが、いまの段階で自分に足りていないからと言ってあきらめる必要はありません。足りていないとわかったのなら、あとは自分の心がけ次第で少しずつでも身に着けることができるでしょう。

また、フランチャイズ加盟ワークブックでは、事業を成功させるために必要な資質と条件について、「性格編」と「経営者編」に分けてチェックリストを作成しています。より深く自分の資質・条件について知りたい人は、ぜひこのチェックリストをご活用ください。

10年後のビジョンを描く

フランチャイズ本部選びは、しばしば結婚にたとえられます。相手のことを知る前に、まずは自分のことについて、じっくりと見つめなおすことが大切です。自分がフランチャイズ加盟に何を求めているのか、自分が大切にしている価値観はどのようなものか、などについてしっかりと考えて、自分の棚卸をしてみましょう。

例えば、自分のアイデアや意見をどんどん発信して、フランチャイズ本部と一緒に成長したいと考えている人はベンチャーのフランチャイズ本部に加盟する方が性に合っているかもしれませんし、それよりも実績やしっかりとしたノウハウを求めている人は老舗のフランチャイズ本部を選んだ方が良い結果が出せるかもしれません。

フランチャイズ加盟ありきではなく、まずは自分が何を求めているのかを明確にしましょう。

具体的には、「今までの経験」、「今自分が持っている資源」、「自分が興味や関心を持っていること」を書きだすことや、「自分の価値観(行動指針)」について優先順位をつけることで自分の棚卸をしていきます。自分に最もふさわしい相手(フランチャイズ本部)を見つけるために、まずは自分自身を理解しておきましょう。

フランチャイズ加盟ワークブックでは、この自分の棚卸ワークに加えて、自分の10年後の姿を思い描くワークを行うことによって、自分のビジョンを明確にしていきます。

このワークで明確にしたビジョンは、今後の事業を営んでいく上での羅針盤の役目をはたすことになるでしょう。ぜひ取り組んでみてください。

事業をスタートさせてから「本当に自分がやりたかったことと違う」、「こんなはずじゃなかった…」と後悔するようなことにならないために、しっかりと時間をかけて自己分析を行いましょう。

自己分析が終わったら、次はフランチャイズの仕組みについて学びます。そもそもフランチャイズとはどんなビジネスモデルなのか、しっかりと説明することはできますか?

なんとなく知っているという程度では不十分です。少なくない時間や労力、お金をかけてフランチャイズ加盟をするのですから、自分以外の人にも説明できるくらいフランチャイズの仕組みについて理解を深めましょう。詳しくは、次回以降でまたお話ししていきます。

フランチャイズ研究会 中小企業診断士 山崎泰央

中央大学文学部卒。大手ベーカリーチェーンにて、商品開発、販売促進、広報PR、店舗開発などの業務を幅広く担当。独立後は、食品×店舗の切り口で、創業、業態開発、商品開発、多店舗展開、FC本部構築などの支援を実施。直近の支援実績は、洋菓子チェーン、喫茶チェーン、ドーナッツチェーン、ベーカリーチェーン、たい焼きチェーン等。中小機構アドバイザー。日経FCショー講師、FC専門書や専門誌の執筆も実績多数。