フランチャイズ研究会 中小企業診断士山崎泰央
2015-10-23 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
フランチャイズ研究会 中小企業診断士 山崎泰央

プロトタイプの確立~まぐれ当たりでも本部の立ち上げは可能か?【第二回】

 このコラムのポイント

フランチャイズ本部構築をお考えの企業様に是非ご一読いただきたいコラムです。フランチャイズ展開を開始するにはプロトタイプ確立が必須になります。確立に必要な要素についてもまとめてあるので確認してみてください。

フランチャイズWEBリポート編集部


加盟希望者が本部に求めているもの

加盟希望者がフランチャイズに加盟する理由は、本部のブランドとノウハウを利用することで自分のビジネスを成功に導くことです。ですので、加盟希望者にとってブランドやノウハウが無い本部には加盟する意味がありません。本部には確固としたブランドとノウハウがあることが、まず求められるのです。

私たちフランチャイズ研究会のもとには、フランチャイズ本部を立ち上げたいという相談が数多く寄せられますが、例えば次のような場合は本部を立ち上げることができるでしょうか。


ラーメン店を開業したところ業績が非常に好調で、開業後1カ月目から黒字を達成。現在は開業から6カ月経過しているが売上は右肩上がりである。

いかがでしょうか?

業績は好調のようですが、この段階で本部を立ち上げるのは時期尚早でしょう。理由としては以下のようなことが考えられます。

・開業してからまだ6カ月しか経過していないため、このままの業績を維持できるかが不明であること
・業績が好調な理由が、流行など一過性の要因や、地域性などその店特有の要因に起因している可能性があること
・店主やスタッフの強烈な個性などによって繁盛している可能性があること

業績好調の理由がこういった特殊な要因による場合は、その後の出店でも同じように繁盛する保証はありません。これでは単なるまぐれ当たりの可能性を否定できないのです。「確固としたブランドとノウハウがある」と言うためには、もっとしっかりと成功要因を検証する必要があるでしょう。

プロトタイプを確立するためのプロセス

本部を立ち上げるためには、まぐれ当たりではNG。再現性が求められます。決してまぐれ当たりではないということを実証するために、同じ業態で3店舗以上の出店をし、2年以上の運営実績を持つことを「3ショップ・2イヤーズ・ルール」といいます。このルールが達成されるとフランチャイズ展開の成功に一歩近づいたと言えるでしょう。

しかし、近年では業態の流行廃りが激しくなってきており、業態の寿命は短縮化傾向にあるため、必ずしもこのルールに従う必要はありません。最低2店舗で1年程度の実証とする場合もあります。

こういった今後の出店の基本形となる店舗モデルのことをプロトタイプモデルと呼びます。プロトタイプモデルの確立とは、つまり「成功パターンの型」をつくることに他なりません。このプロトタイプモデルを確立するには、以下のプロセスに沿って進めると良いでしょう。

1. コンセプトの確立

業態のコンセプトを、「誰に、何を、どのように」の視点で検討します。「誰に」はターゲット顧客、「何を」は提供する商品やサービス、「どのように」は提供方法などのことです。

2. 立地タイプと適正商圏の明確化

自店のコンセプトがどのような立地に適性があるのかを見極めます。立地タイプには駅前型、住宅地型、ロードサイド型などがあります。また商圏とはターゲット顧客を自店に呼び込むことができる地理的な範囲のことです。取り扱う商品やサービス、交通の便などによってその範囲の広さは異なるため、自店の適正な範囲を明確にする必要があります。

3. 商品・サービスの開発

フランチャイズ展開にふさわしい商品やサービスは、売れている理由がしっかりと分析できている商品です。まぐれ当たりのヒット商品はふさわしくありません。

4. 店舗オペレーションの標準化

フランチャイズで多店舗展開を行う際には、短期間の研修で店舗運営に必要なスキルを加盟者に身につけさせることが求められます。また、チェーン全体のブランド価値を維持するためにも、オペレーションを標準化し、お客様がどの店舗に行っても同じ商品やサービスが提供され、同じ接客が受けられるようにしなければなりません。

5. 効果的な販売促進策の検証

本部は加盟者に対して「売り上げをつくる」ノウハウの提供が求められます。そのため、直営店舗で販売促進策を実践し、何が効果的で、何がそうでないか、ノウハウを蓄積する必要があります。

6. 経営管理システムの開発

経営管理システムとは、仕事の流れや情報を把握するための仕組みのことです。フランチャイズ本部は店舗数が増えるほど取り扱う情報量が増えるため、それを整理し、いつでも取り出せる状況にしておくことが望まれます。

7. 業態のブラッシュアップ

プロトタイプを構築したら、これをより良いものにブラッシュアップする(磨き上げる)必要があります。プロトタイプは一度構築すればそれで終わりというわけではなく、環境の変化に伴い常により良いものへと変化させていく必要があるのです。

終わりに

さて、次回は商標登録です。これをおろそかにするとトラブルになるケースも多いため、注意が必要です。楽しみにお待ちください。

フランチャイズ研究会 中小企業診断士 山崎泰央

中央大学文学部卒。大手ベーカリーチェーンにて、商品開発、販売促進、広報PR、店舗開発などの業務を幅広く担当。独立後は、食品×店舗の切り口で、創業、業態開発、商品開発、多店舗展開、FC本部構築などの支援を実施。直近の支援実績は、洋菓子チェーン、喫茶チェーン、ドーナッツチェーン、ベーカリーチェーン、たい焼きチェーン等。中小機構アドバイザー。日経FCショー講師、FC専門書や専門誌の執筆も実績多数。