フランチャイズ研究会 社会保険労務士・人材育成トレーナー安紗弥香
2015-07-10 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
フランチャイズ研究会 社会保険労務士・人材育成トレーナー 安紗弥香

本命本部の決定

 このコラムのポイント

本命のフランチャイズ本部を選ぶとなったときに、やはり実際の加盟店であったり本部との面談というのは必ず出てくるステップですよね。そうした大切なステップで気をつけたいポイントなどをまとめたコラムです。

フランチャイズWEBリポート編集部


はじめに

前回のコラムで、本部を絞り込むポイントについて触れましたが、本命のフランチャイ本部を決めるには、本部の話だけでは不十分です。

既に加盟している加盟者ヒアリングや、本部のトップ(社長や事業責任者)との面談から生の声に触れることで、加盟後や開店後の具体的なイメージや直面する問題・課題について事前に把握し、その準備や対策を行うことが可能になります。

ここでは本命本部決定に至るまでの流れと、そのポイントをお伝えします。

既存加盟店へのヒアリング(心構え)

事業説明会などで本部の情報を収集し、本部の絞り込みができたら、次に既存加盟店を訪問し、ヒアリングを行います。この既存加盟店は、本部からの紹介、本部紹介の加盟店による紹介、また、独自で調べてアポイントを取って訪問する場合があります。マナーやルールを意識した上で、少なくとも3店舗、積極的に行いましょう。

ヒアリングにあたっては、事前に訪問する加盟店の情報やスケジュールを確認し、訪問した際に質問する内容をまとめておきます。時間は限られていますから、質問の順番や時間配分にも配慮しましょう。

また、相手は忙しい合間をぬってヒアリングに応えてくださいます。感謝の気持ちを伝え、今後の関係をしっかり作っていくために手土産も用意しておきます。

既存加盟店へのヒアリング(内容)

下記の質問は、フランチャイズ加盟ワークブックの55ページに詳細を掲載していますが、すべての質問をヒアリングするのは時間の都合上難しいため、優先的に聞きたいことをまとめておきます。他にも聞きたい内容がある場合も、事前に準備しておきましょう。

既存加盟店へのヒアリング(当日)

当日は加盟店のスケジュールに合わせ、また、アポイントを確実にとった上で訪問しましょう。持ち物も忘れないように準備します。

・質問内容をまとめたもの(ワークブックがおすすめです)
・手土産
・腕時計(スマートフォン、携帯で時間を見るのは避ける)

時間厳守で訪問し、自己紹介は自ら行いましょう。質問に対する回答のメモは許可を得てから取るようにします。他にも客層、売れている商品、メニュー、業務の状況、トイレの

清掃状況、店舗事務所の壁面の掲示物などから様々な情報を得ることができます(ただし、ジロジロ見ないように注意)。

ここで大事なことは、訪問した加盟店の話と、本部の回答が食い違っていないか、ということです。この食い違いがあまりにある場合は、加盟候補として適切なのかを再度見直すことも検討しましょう。

さらに、他の加盟店を複数紹介してもらうようにし、訪問後は早めにお礼状(ハガキなど)を出しましょう。

本部のトップ面談

加盟店へのヒアリングとともに、本命本部決定の重要な判断材料として、本部トップ(社長や事業責任者)との面談があります。

トップ面談はチェーンの事業規模や組織体制によっては、社長ではなく部門責任者が携わる場合、あるいは実施されないケースもありますが、加盟者にとってはトップの人間性に触れ、本部への理解を深めるために、また本部にとっても加盟者の想いに触れ、ともに有益なパートナーシップが築けるかを見極めるよい機会です。

もし実施される場合は有効に活用しましょう。これまで本部担当者から聞いた内容でも、トップの口から改めて聞くことが大切です。

ここではまず、トップ面談にあたっての心構えについて見ていきます。

はじめに、スケジュールの確保はとても重要です。本部側からトップ面談の話が来るチェーンも多くありますが、本部からトップ面談の話が来ない場合は、ぜひ本部担当者を通じて自ら面談希望を申し入れてみましょう。

次に、加盟店へのヒアリングと同様、質問内容をしっかりまとめておきます。本部のホームページを見ると、トップの言葉が掲載されている場合があります。その思いには事前に触れておき、それに対する自分自身の思いを話せるよう準備しておくことも大切です。

いくら事業への意欲や情熱があっても、当日は緊張や時間の制約などから、うまく言葉に出来ない可能性があるからです。トップ面談は、加盟前の貴重な機会。ぜひ、以下のような項目に沿って、しっかりとまとめておくことをお勧めします。

<質問内容の例>

(1)経営理念
・貴社の経営理念を教えてください。
・貴社の経営理念は◯◯ですが、そこに込められた想いを教えてください。
・既存加盟店に対し、どのように理念を徹底していますか。

(2)フランチャイズチェーン展開に関する基本方針
・貴社の加盟店支援体制について教えてください。
・不振店対策はどのようにされていますか。

(3)フランチャイズチェーン展開における将来への展望
・複数店展開の可能性と、そのメリット・デメリットについて教えてください。

(4)トップの期待する、理想の加盟店像
・どのような店舗像が理想と考えていますか。
・現状の加盟店の一番の課題は何ですか。またそれに対する本部としての対策についても教えてください。

〈まとめておきたい自分自身の思い〉

1:事業の目的・目標
2:事業への思い、意欲
3:フランチャイズ契約を厳守し、本部方針に従えるか
4:この本部とパートナーシップを築けるか

本部のトップ面談(当日)

トップ面談当日を迎えたら、質問内容や思いをまとめたもの(ワークブックが手元にある場合はそちらがお勧めです)、腕時計を忘れずに準備し、トップのもとへ向かいます。手土産は必要ありませんが、トップも時間を割いて出迎えてくれます。感謝の気持ちを持って面談に臨みましょう。

本命本部の絞り込み

加盟店へのヒアリングや本部トップとの面談を経て、最終的にこれまでの要素を加味して本命本部を決定します。フランチャイズ加盟ワークブックの63ページにあるチェックリストを活用し、自分自身の思いがぶれていないかを確認しましょう。

(例)
・トップの想い
・チェーンが目指す将来のビジョン
・商品供給の安定度
・スーパーバイザーのスキル、行動

さて、本命本部が決まったら、次は加盟に向けて立地と売上予測について確認をしていくことになります。

お客様が店舗を訪れて商品購入やサービス利用を決める業種・業態は「立地産業」と呼ばれ、立地によって成功が大きく左右されます。次回は本部調査資料の確認ポイントや自分自身ができる立地評価方法、売上予測の具体的手法についてみていきます。どうぞお楽しみに!

フランチャイズ研究会 社会保険労務士・人材育成トレーナー 安紗弥香

ディズニーで5年間、最高の接客と人材育成を経験した後、CVSチェーン本部へ転職。7年間、4,000人超の社員、加盟オーナーの研修に携わる。その中で、店舗の職場環境向上と労務管理支援に活路を見出し、2012年、社会保険労務士登録、翌年独立。労務管理、採用支援、スタッフ育成研修と幅広いサポートには定評がある。著書に「Q&Aでわかる 小売業店舗経営の極意と労務管理・人材育成・事業承継」(日本法令)がある。