2015-12-03 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
フランチャイズ研究会 社会保険労務士・人材育成トレーナー
安紗弥香 |
脱サラ起業希望者必見!退職に向けて知っておきたい手続き方法
このコラムのポイント
会社を辞めて独立しよう!そう思われたら読んでいただきたいコラムです。今の仕事を円滑に辞めるための手続きがわかります。コンビニ専門社会保険労務士の安氏が自身の体験ももとにして話が展開されていきますが、円満退職できるようにポイントをおさえましょう。
フランチャイズWEBリポート編集部
こんにちは、コンビニ社労士、人材育成トレーナーの安 紗弥香です。
今回より、コンビニオーナーやその希望者を対象としたコラムを隔週で書いていきます。第1回は、「脱サラ起業希望者必見!退職に向けて知っておきたい手続き」について触れていきます。
会社を辞めて独立…そのとき何をするのか?
今の会社に勤めて◯年…以前から自分で事業を興したいと思っていたが、いよいよ退職を決意した!よし、明日上司に言おう。
会社勤めをしていて、独立・起業に向けての決意が固まる瞬間は、例えばこのような思いになる方が多いのではないでしょうか。かくいう私も2012年の大みそかに、「よし、来年独立するぞ!年明けの1月中に上司に言おう」と決めて年を越し、実際に1月下旬、勇気を出して上司に言いました。
「自分で事業をやっていくって大変だよ…?」
と上司に言われましたが、決意が固まっていたので、そんな引き止めもなんのその。
最初は3月末で辞めます、と言っていたのですが、有休の残日数が1ヶ月分あったので、最終的に3月末まで出勤し、その後有休消化、そして5月15日付けで退職をしました。その間、独立に向けてやらなければならないことがいくつかあったので、有休を存分に消化させてもらえて本当に助かったことを覚えています。
さて、退職、独立・起業を決意したら、会社に在籍している間に、行っておくべきことについて見ていきます。
退職届(退職願)を出す
上司に伝えて、会社規定の退職届(退職の意志を届け出るもの)、あるいは退職願(申し出るもの)を出します。たとえ規定のものがなくても、書面により退職の意志を伝えた方が確実です。法律などではこうした書面の手続きを必須とはしていませんが、「立つ鳥後を濁さず」。会社にお世話になった感謝の気持ちとともに、最終的な意志表示として書面により届け出ましょう。
ちなみに退職届を出して受理された場合、退職を取り下げることはできませんので、注意が必要です。
退職金に関する手続き
退職金制度がある会社の場合、人事手続きを行っている部署や担当者に確認して、必要な手続きをとります。また、「退職所得の受給に関する申告書」を出す場合、所得税、住民税ともに計算し、天引きが行われます。そのため、確定申告をする必要はありません。逆に出さなかった場合においては、住民税は天引きですが、所得税を余分に払っていると確定申告の必要が出てきます。
ちなみに、退職金の手続きをして口座にお金が振り込まれるまで1〜数ヶ月かかる可能性があります。その場合、退職後すぐの生活費として期待はしづらいので、あらかじめ生活保障のための貯金は必須です。
雇用保険・社会保険関係の手続き
退職にあたり、資格喪失の手続きそのものは会社が行うことになります。
雇用保険はいわゆる失業手当がメインですが、会社を退職してすぐに独立・起業する場合には「失業」にあたらないため、失業手当はもらえません。失業とは「働く意思も能力もあるのに仕事に就けない状態」のことであり、退職後独立起業する、ということは仕事に就いた、と判断されてしまうのです。
すぐに独立する場合でなければ、しばらく失業手当をもらいながら独立の準備をしたり、就職活動をしたりすることになります。その場合は「離職票」が必要になりますので、会社にあらかじめ発行をしてもらうよう、申し出ておきましょう。
社会保険についてはいくつか方法があり、会社での被保険者資格喪失後、個人事業であれば国民健康保険に入ることになります。法人を作ってスタートする場合は、新たに健康保険・厚生年金保険を適用させて資格を取得します。
他にも、今の被保険者資格をそのまま保ちたい、という場合は「任意継続被保険者」という立場で、最大2年間被保険者資格を保つことができます。
配偶者や子供などの扶養家族がいる方で、個人事業で独立・起業される場合は、国民健康保険になると扶養の概念がなくなり、全員分の保険料を負担することになってしまうので、その場合は扶養の概念がある任意継続被保険者としてのメリットを実感できるでしょう。ただし、通常会社員であれば会社と自身で折半している保険料は、全額自分自身で負担しなければなりません。
会社に返却するものの整理
名札、社員証、社章、パソコン、その他会社から貸与されている備品を整理しておきます。それらを最終出勤日に返却することになるからです。あわてて最終日の前日に探そうとしても、バタバタして探しきれなかったり、なくなってしまったりしているものもあるかもしれません。これについては、早いうちに探して集めておくほうが絶対に良いです。
後任担当者との引き継ぎ
業務内容にもよりますが、通常1ヶ月ほどかかりますので、こちらも部署内に退職の意志を伝えたら、早めに準備し、すぐに取り掛かっていったほうがいいでしょう。引き継ぎをしないで有休消化しようとすると、残る社員や取引先などに迷惑がかかってしまうだけでなく、懲戒の対象になってしまうこともありますので、確実に責任をもって着手するようにします。
お世話になった方へのお礼準備
取引先、顔を合わせる機会の少ない社員などへ、退職とお世話になった感謝を伝える文章を作成します。メールでそのお礼を送る場合、社員はBCCで一斉送信にしてもいいかもしれませんが(私は一人一人に時間をかけてメールを送りました)、取引先については後任の報告も兼ねて、一人一人丁寧に連絡をしましょう。
開業届の準備・会社登記のための準備
個人事業の場合、開業日や屋号などを決めて、「個人事業の開廃業等届出書」や「所得税の青色申告承認申請書」に記載していきます。これ自体は開業してから1ヶ月以内など、早めに出すものです。給与を支払うスタッフがいる場合は源泉所得税に関する届出の準備もします。
また、法人を設立する場合は登記に向けた準備が必要です。自分自身ですべてを行うのでなければ、司法書士や行政書士への相談を早めにしておくと気持ちが楽になります。
事業の計画を練る
なかなかまとまった時間がないとできないことの一つかもしれません。
ですが、ある程度の売上や行動の計画は欲しいところ。コンビニエンスストア開業の場合は事業計画を本部の担当者と作り上げる場合もありますし、店舗の予測売上をある程度本部が弾きだしていますので、それを確認して作戦を練るのも一つの準備です。
円満退職が独立成功のスタートダッシュにつながる!
以上、退職時に行っておきたい手続きや、決めておきたいことについて見ていきましたが、今回のコラムはいかがだったでしょうか。細かく見ていけば、このほかにも決めておくべきことや実施することがありますが、準備は“早く・確実に”が、円満退職と新たな事業のスタートダッシュに大きくつながっていきます。ぼや〜っと退職を考えたときから準備をし始めても決して早すぎることはないので、どんどん積極的に動いていかれることをお勧めいたします。
さて、次回は最近話題沸騰中の「マイナンバー対策:コンビニエンスストア編」です。どうぞお楽しみに!