フランチャイズ研究会 社会保険労務士・人材育成トレーナー安紗弥香
2015-12-17 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
フランチャイズ研究会 社会保険労務士・人材育成トレーナー 安紗弥香

コンビニオーナー必見!自店で管理が問われるマイナンバー事情

 このコラムのポイント

皆さんのもとに届き始めているであろうマイナンバー。コンビニのフランチャイズオーナーもアルバイトや社員の管理を自店で行わなければいけないことご存知でしたか?従業員100人以上か100人以下かでも対応が違ってくるようなので、このコラムを見て今後のマイナンバー管理対策を考えていきましょう。

フランチャイズWEBリポート編集部


こんにちは、コンビニ社労士、人材育成トレーナーの安 紗弥香です。
隔週コラムの第2回は、大きな話題になっている「マイナンバー事情」について触れていきます。

配達遅れなど、混乱を極めるマイナンバー事情

マイナンバー。もう皆さまのお手元には届きましたか?
通知カードの配達の遅れや誤配などで、混乱状態が否めないマイナンバー事情ですが、そのような中でも企業やコンビニエンスストア店舗では、平成28年から運用開始できるよう、オーナーが中心となって対策を進めていかなければなりません。

この時点でマイナンバー制度やマイナンバーの制度や企業が取るべき対応の全体像についてよくわからない…という方は、このコラムの他に、一度こちらのコラムもご覧になってみてください。わかりやすく説明されています。

コンビニ業界ではどうなるのか

コンビニエンスストア業界の場合、本部と加盟店で行う対策が変わってきます。本部は大手の場合、数多くのマイナンバーを扱うことになるため、大規模事業者としての対応を迫られます。つまり、基本方針や取扱規程を作る、マイナンバー取得後の利用、廃棄などについて記録をつけるなど、法律に基づいたガチガチな対策をしなければなりません。

対して加盟店の場合は、中小規模事業者とされる「法人(事業所)全体で従業員数100人以下」のところも多く、その場合、大規模事業者のそれよりは多少軽減されたルールで対応することが可能です。ただし、100人を超えているところはもちろん、以下に該当してしまう場合は、大規模事業者と同じ対応が求められることになります。

・個人番号利用事務実施者(健康保険組合など)
・委託に基づいて個人番号関係事務または個人番号利用事務を業務として行う事業者(社労士事務所、税理士事務所など)
・金融分野の事業者
・個人情報取扱事業者(6ヶ月間で5,000件以上の個人情報を常時取り扱う事業者)

このうち、コンビニエンスストア加盟店で関係が出てきそうなものといえば、個人情報取扱事業者になるかどうか、というところでしょう。ただ、半年で5,000件というと相当な数です。

例えば、長い期間加盟している店舗で、個人情報を貯め続けて5,000件以上になっている場合や、相当な数のお客さま注文を取っている(お弁当や雑誌などの予約を定期的に&積極的に取っている)場合、クリスマスケーキなどをはじめとした予約商材を年間通して相当多く受注している場合でない限り該当はしにくいので、あまり気にしなくてもよいかと思います。

当然ながら、他の事業も並行して、合計で5,000件以上の個人情報を扱っている場合は大規模事業者に該当します。まず、自分自身の店舗(企業)がどちらにあたるのかを見極めて、それぞれの対策を立てていきましょう。

自店で管理が問われる!その場合の対策とは

本部やその関連会社がマイナンバーの対策講習会を開いたり、マイナンバー運用に関するマニュアルを作って加盟店に配付したりするなど、本部から加盟店へ働きかける動きがみられます。ただ、加盟店で働くスタッフのマイナンバー管理は、加盟店それぞれで対応しなければなりません。

平成28年1月から社会保障の分野、税の分野、災害対策の分野で運用がスタートするにあたり、今後は必要とされるタイミングでスタッフからマイナンバーを集め、利用・保存・廃棄をきっちり行っていく必要があります。

「今年の年末調整(所得税を正しく計算する作業)のタイミングで、給与所得者の扶養控除等申告書にマイナンバーを記載してもらい、集めるといいですよ」というアドバイスもあちこちで確認されていますが、マイナンバーが届いた人、届いていない人が混在している現在、それも現実的ではない模様です。

そうなると、平成28年になってから必要に応じて、ルールに基づきマイナンバーを収集することになると思われます。例えば、労災事故が発生した、雇用保険や社会保険に新たに加入するスタッフを採用したなど、マイナンバーの記載を必要とする手続きが発生したタイミングです。

そして、マイナンバーを収集後に保管する場所ですが、コンビニエンスストア店舗の場合、通常はバックルーム(事務所)の金庫か、デスクの鍵がかかる引き出しに、紙ベースで、履歴書など他の人事関連書類と一緒に保管をすることになるでしょう。

決して、デスクの上に放置したり、デスク上の鍵のない書棚に保管したりしないように注意が必要です。マイナンバーは今後、年金記録や医療記録、預金通帳などとも紐付いていくことから、厳格な管理が求められます。

そのため、保管場所がなく、管理に自信がもてない場合は、社会保険労務士(あるいは労働保険事務組合)や税理士などに相談した上で、委託先で集中的に管理をしてもらい、自店ではマイナンバー書類をもたない仕組みを検討してもいいかもしれません。もちろん、その場合であっても、自店に書類を置かないだけで、委託先の監督義務は発生しますので、丸投げと思わず、積極的に関わっていくようにしましょう。

複数店経営を行っている加盟店の場合

また、複数の店舗を経営している場合、おそらく各店長もしくは副店長が担当者となり、各店舗に在籍するスタッフのマイナンバーを収集することになるでしょう。その後、オーナーに渡す場合と、各店舗で管理する場合とが出てくると思われます。企業のどこで、あるいは誰が社会保障や税金関係の手続きを行うかによって、その方法は決まってきます。

万が一、各店舗で店長に保管させる場合は、管理体制をしっかりと構築し、教育を行っていく必要が出てきます。その場合は、ぜひ今のうちから、どのように収集するのか、収集後はどこに保管をするのか、どの分野で使われるものなのか、不要になった場合の廃棄の方法などを店長たちと相談・決定し、決めた方法に従って適切に運用してけるようにしましょう。

来年の運用に向けて。本部や委託先にも話を聞きつつ対策を!

以上、コンビニエンスストア業界でのマイナンバー管理について見てきましたが、いかがだったでしょうか。コンビニエンスストア店舗のバックルーム(事務所)は狭いところも多く、マイナンバーの管理にはあまり適していないこともあります。また、複数店経営加盟者の増加により、組織体制のあり方がマイナンバーを通して問われていくことになります。来年の運用に向けて、本部や委託先など、様々な人の知恵や助けを借りながら、余裕を持って適切に準備することが重要です。

さて、次回はガラッとテーマを変えて、起業家を助ける助成金について見ていきます。どうぞお楽しみに!

フランチャイズ研究会 社会保険労務士・人材育成トレーナー 安紗弥香

ディズニーで5年間、最高の接客と人材育成を経験した後、CVSチェーン本部へ転職。7年間、4,000人超の社員、加盟オーナーの研修に携わる。その中で、店舗の職場環境向上と労務管理支援に活路を見出し、2012年、社会保険労務士登録、翌年独立。労務管理、採用支援、スタッフ育成研修と幅広いサポートには定評がある。著書に「Q&Aでわかる 小売業店舗経営の極意と労務管理・人材育成・事業承継」(日本法令)がある。