2016-01-28 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
フランチャイズ研究会 社会保険労務士・人材育成トレーナー
安紗弥香 |
コンビ二社労士が語る!就業規則を定めるタイミングと記載事項
このコラムのポイント
例えば店舗ビジネスなどで人材雇用をするとき。経営者として、就業規則をどのタイミングで作成しなくてはいけないのか。そもそも何を記載しておけばいいのか。労務面の基本は知っておくことが必須です。今回は「就業規則」の基本にフォーカスした内容をコンビ二専門の社会保険労務士として活動されている安紗弥香氏に解説いただきます。
フランチャイズWEBリポート編集部
こんにちは、コンビニ社労士、人材育成トレーナーの安紗弥香です。
隔週コラムの第5回は、「就業規則を定めるタイミングと記載事項」について触れていきます。
就業規則は働く上でのルールブック
皆さんは、就業規則をご覧になったことはありますか?
言葉は聞いたことがある、けれど本物を見たことはない…という方も多いのではないでしょうか。
就業規則とは、スタッフが職場で働く上で必要なルールをまとめたものです。
例えば、「勤務時間」「労働日や休日」「給料の締め日や支払日」「仕事をする上でのルールやマナー」「定年」などの決まりごとが具体的に書かれています。いわば、働く方に向けたルールブックと言えます。第4回でお伝えした雇用契約書がスタッフの個別の就業条件が書かれているのに対し、就業規則は職場全体の就業条件が書かれています。
それでは、就業規則はどのタイミングで、どのような手順を踏み作成するのか、またその内容には何を盛り込む必要があるのか、について、主にオーナー目線で見て行きます。
就業規則を作るタイミングとは?「10名以上」がポイント
就業規則作成のタイミングは、スタッフを雇う瞬間に訪れます。
少し固い話になりますが、労働基準法では、従業員が10人以上の事業場は就業規則を作成し、従業員に周知したのち、事業場を管轄する労働基準監督署に届け出なければならない、という決まりがあります。
ただ、それは法律上の決まりであり、開業される方が自身の企業・店舗を理想の状態にしていくためには欠かせないものです。私も社会保険労務士として、オーナーの皆さまには、スタッフを一人でも雇用した場合には、勤務する上で守ってもらいたいことを書面でルール化し、スタッフと共有することをお勧めしています。
では、いざ作ろう、となるとどのようにすればいいのでしょうか。
まずは自分の経営する企業・店舗で、スタッフを雇う際にどのような条件で雇うかを決めるのですが、それがまさに就業規則の元になります。例えば、このような例があるでしょう。
雇用契約は正社員?それともアルバイトで?どうしようか…。
そもそも正社員とアルバイトの違いってなんだろう…。
時間や日はどれくらい働いてもらおうか…。
給料はいくらにしようか…。手当はどうしようか…。ボーナスは…。
辞めるときにはどれくらい前に言ってもらおうか…。
定年は何歳にしようか…。
これやったら処罰の対象にしよう…。
あくまでこれは一部ですので、就業規則に実際に書くべき内容については次のテーマで見ていきますが、上記のような内容を盛り込んでいくのです。
最近はインターネット上で「就業規則 雛形」と検索すると、たくさんの就業規則モデルが出てきますので、ベースにしたり参考にしたりしながら、自身の企業・店舗に即したものを作っていきます。
間違ってもインターネットから引っ張ってきて、そのまま終わり、としないようにしましょう。過去には、インターネットで見つけた就業規則の雛形をほぼそのまま使っていたら、払うつもりのなかった退職金に関する規定が入っており、アルバイトスタッフが退職時に「退職金ください」と言ってきてトラブルになった事例もありました。
フランチャイズの店舗ビジネスでも「就業規則」の定めは重要
また、フランチャイズでは店舗の形態を取る業種も多いです。
特にコンビニや飲食店では24時間、あるいはそれに近い営業時間で、多くのスタッフを雇用して店舗経営を行います。そのようなときに就業ルールがなかったら…きっと、その店舗は無法地帯となってしまうでしょう。
最悪の場合、レジのお金、商品や備品を盗るといったスタッフの不正行為が発生したり、給料や残業代をちゃんと払っていないとして訴えられたりすることもあるのです。
逆に、ルールがあれば、そうした不正行為の抑止効果につながり、オーナーは経営しやすい、スタッフは働きやすい、といった職場環境を作れるようになります。
つまりは、それをしっかりカバーしているのが、就業規則なのです。
ただし、「作って終わり」ではなく、その後にしっかりスタッフと共有しないと意味がありません。さらに10人以上のスタッフがいるところは店舗・事業所単位で労働基準監督署への届出が重要です。
いかに就業規則を定めることが重要か、そして定めるだけでなく周知することが重要か、想像できましたでしょうか。それでは、次は実際に就業規則に定める内容を見ていきます。
就業規則作成時に定めるべき内容
就業規則に定めるべき内容は、絶対に定めるべきもの、必要がある場合に定めるべきものがあります。
絶対に定める必要があるのは、以下の内容です。
・就業、終業の時刻
・休憩時間
・休日
・休暇(年次有給休暇、育児休暇など)
・交替勤務(シフト制)について
・賃金の決定方法、計算方法
・賃金の支払方法
・賃金の締切日と支払の時期
・昇給について
・退職、解雇、定年の事由と手続き
次に、企業・店舗で決まりを作った場合に、就業規則に盛り込まなくてはならない内容は以下の通りです。
・退職金が支払われるスタッフの範囲
・退職金の決定方法、計算方法
・退職金の支払方法
・退職金の支払時期
・賞与について
・最低賃金額について
・臨時に支払われる賃金について
・スタッフの負担となる食費、作業用品などについて
・安全と衛生に関する事項
・職業訓練に関する事項
・災害補償および業務外の傷病扶助に関する事項
・表彰や制裁の種類、程度に関する事項
・その他労働者のすべてに適用される事項
その他の内容は、原則自由に記載ができます。
一般的な就業規則というと、堅苦しい言葉が並んでおり、理解が難しいことからつい敬遠しがちです。しかし、使われなければ意味がないため、簡単な言葉で、全員がわかる表現を使って作成してもOKです。
上記の内容を踏まえながら、全員が「使える」就業規則を作りましょう。
「マイナンバー適用」を意識した文言を就業規則に盛り込むこと
2016年からマイナンバー制度の運用がスタートしています。
スタッフなどからマイナンバーを集め、適正に保管をするにあたり、マイナンバーを含む個人情報の保護も、就業規則に盛り込む必要があります。例えば、情報を適正に管理すること、第三者に対し不正に情報を渡してはならないこと、万が一第三者に情報が漏洩したときには処罰の対象となることなどを入れておきます。
もちろん、安全管理措置の一環で別に取扱規程を作り、就業規則本体と連携を持たせることも可能です。
「マイナンバー制度」が就業規則を作る機会にもなっている
今回は、スタッフが勤務するにあたり大事なルールである就業規則にフォーカスをしてきましたが、いかがでしたか?2016年からマイナンバーの運用も始まり、求められる情報セキュリティがますます厳しくなっています。
それを機に就業規則を作成する企業・店舗も増えており、ますます就業規則への意識が高まっていると言えるでしょう。
今回もコラムをお読みくださり、ありがとうございました。