フランチャイズ研究会 社会保険労務士・人材育成トレーナー安紗弥香
2015-12-31 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
フランチャイズ研究会 社会保険労務士・人材育成トレーナー 安紗弥香

コンビ二社労士が語る!起業家の身を助けるお得な補助金・助成金まとめ

 このコラムのポイント

起業を考える皆さん、助成金と補助金の違いは説明できますか?独立するとなると自己資金を貯める、もしくは融資を受けることが必須ですが、助成金や補助金はそんなときにあなたの身を助けます。コンビ二専門に社会保険労務士として活動している安紗弥香氏に「補助金」・「助成金」の定義についてイチから解説してもらいました。

フランチャイズWEBリポート編集部


こんにちは、コンビニ社労士、人材育成トレーナーの安紗弥香です。
隔週コラムの第3回は、「起業家の身を助ける!お得な補助金・助成金まとめ」について触れていきます。

起業時のお金は自分で用意しなければならない

起業には、「お金」が必須です。業種によって必要になる金額は違いますが、一般的にフランチャイズビジネスに参入する場合は一定額のまとまった加盟金などを用意することになります。例えば、コンビニエンスストアの加盟店オーナーになる場合は、契約形態にもよりますが数百万〜1,000万円ほどかかります。

起業時にかかる資金は、自分で貯金をして集めるか、もしくは融資を受けるなどして、何とかして手元に用意しなければなりません。

今回ご紹介する助成金や補助金は、融資とは違い、すぐにお金は入ってきません。一定の条件を満たした場合などに、後から入ってくるものです。種類によっては1年先など忘れた頃に支給決定の通知が届くものもあります。

事業の継続、発展のためにはどのタイミングでもお金は必要ですし、助成金や補助金の制度を通じて商品やサービス、あるいは従業員への還元を行うことで、より事業としてのレベルも上がっていきます。条件が合うのであれば、ぜひチャレンジしていただきたいと思います。
まずはご自身が活用できる助成金・補助金にはどんなものがあるのか知っておきましょう。

補助金は計画が認められて、助成金は一定の条件を満たせば受け取ることができる

実は助成金と補助金は意味合いが違う、というのはご存知でしょうか?
助成金というのは、一般的に、厚生労働省管轄の雇用関係で一定の条件を満たした企業が受け取れるものです。対して補助金とは、一般的に厚生労働省以外(例:経済産業省、各自治体など)で、例えば創業やモノづくりなどに関連した事業計画を立て、その計画が助成対象として認められる場合に初めて受け取ることができます。

助成金と補助金に共通するものは、返済が不要であることです。いわゆる「融資」は、申し込みをし、その審査に通ればお金を得ることはできますが、将来必ず返さなければならないお金です。それに対し助成金は、要件を満たし受給できたら、その使い道は企業の自由です。

具体的な補助金・助成金の例

ここでは、3つをご紹介します。(内容は2015年12月時点のものです)

1.創業・第二創業促進補助金

管轄:中小企業庁
対象者:個人、中・小規模事業者
補助率:補助対象経費の3分の2

★補助上限額
創業:200万円
第二創業:1,000万円

いわゆる創業時、第二創業時に発生する店舗借入費や設備費、人件費、広報費など(第二創業で既存事業を廃業する場合は廃業登記や法手続き費、在庫処分費も含みます)が支援の対象になるものです。しかし、申請期間が限定されているため、タイミングを逃さないように情報を確認し続けることが大切です。

2.小規模事業者持続化補助金

管轄:中小企業庁
対象者:製造業その他の業種に属する事業を主たる事業として営む個人、法人の小規模事業者。常時使用する従業員数が20名以下(卸売業、小売業、サービス業(宿泊業、娯楽業を除く)の場合は5人以下)の事業者
補助率:補助対象経費の3分の2以内

★補助上限額
50万円
100万円(雇用増加、処遇改善、買い物弱者対策)
500万円(連携する小規模事業者数による)

この補助金は商工会議所と一体となり、販路開拓に取り組む費用を支援する補助金です。連携して複数の事業者が取り組む場合は事業者数に応じて補助上限額を引き上げるとともに、雇用増加や従業員の処遇改善の取り組み、移動販売などによる買い物弱者対策に取り組む事業者についても重点的に支援することが主な内容です。
こちらは比較的新しい補助金で、ここ2〜3年で注目を浴びているため、多くの事業者が申し込みをしてきます。春頃に募集がかかりますが、期限が限られているため、注意が必要です。

不明点があれば、中小企業診断士や中小企業庁、もしくは商工会議所・商工会などに聞いてみましょう。

3.キャリアアップ助成金

管轄:厚生労働省
対象者:個人、中小企業、大企業(定義は以下を参照)
助成額:各コースにより異なる

期間の定めのある雇用契約を結んでいる従業員のキャリアアップを支援する事業者に対し助成されるものです。全部で6つのコースがあり、多様な雇用形態、就業環境に対応したものになっています。また、中小企業か大企業かによって、助成額も変わってきます。その定義は以下の通りです。

  資本金の額・出資の総額 または




常時雇用する労働者数
小売業(飲食店含む) 5,000万円以下 50人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
その他の業種 3億円以下 300人以下

 

1.正規雇用等転換コース(アルバイトや契約社員、派遣社員→正社員へ転換)
2.多様な正社員コース(職務限定社員、勤務地限定社員などへ転換)
3.人材育成コース(対象者への研修・訓練を実施)
4.処遇改善コース(基本給の賃金テーブルを2%以上増額改定)
5.健康管理コース(有期労働契約者等に法定外の健康診断制度を規定、4人以上に実施)
6.短時間労働者の週所定労働時間延長コース(週所定労働時間を25時間未満から30時間以上に延長し社会保険を適用)

厚生労働省関連は、ほとんどが従業員の雇用を伴う助成金であり、その働き方や提出する書類も労働基準法など法律に基づいたものを要求されます。

そのため、助成金を検討される場合は、現状の労務管理がどうなっているか(タイムカードや出勤簿があるか、賃金支払いの実績はちゃんと残しているか、雇用契約書や労働条件通知書はあるか、残業代は適正に支払っているかなど)をしっかりと確認した上で、取り組むようにしないと、支給申請の段階で不足資料の嵐になり、結果不支給を招いてしまうこともありますので注意が必要です。 詳細は厚生労働省のホームページで確認するか、お近くの社会保険労務士に相談してみてください。

補助金・助成金はタイミングが重要!まずは情報収集から

以上、補助金と助成金について見てきましたが、いかがだったでしょうか。補助金・助成金は星の数ほど存在しますし、その種類も一定ではありません。これらは常に見直しがかけられ、1年のうちに新設や終了、改定などを繰り返しているため、まさにタイミングが重要なのです。

それだけに、こうした情報はなかなか自分の力では得にくいものです。広告があるわけではなく、国や自治体のホームページにたどり着けても文字数が多く難解な表現も多いため、途中で諦めてしまう方が多いのも事実です。

そのため、中小企業診断士や社会保険労務士など、補助金、助成金を扱っている方の特設サイトを確認して理解を進める、あるいは実際に相談、依頼するほうが早く、確実な場合もあります。補助金や助成金も計画性が大事です。もしご検討であれば、早めに情報収集から始めてみてはいかがでしょうか。

さて、今回もコラムをお読みくださり、ありがとうございました。
今後も起業家やコンビニオーナーの皆さまにお役立ちの情報をお伝えしてまいります。
どうぞお楽しみに!

フランチャイズ研究会 社会保険労務士・人材育成トレーナー 安紗弥香

ディズニーで5年間、最高の接客と人材育成を経験した後、CVSチェーン本部へ転職。7年間、4,000人超の社員、加盟オーナーの研修に携わる。その中で、店舗の職場環境向上と労務管理支援に活路を見出し、2012年、社会保険労務士登録、翌年独立。労務管理、採用支援、スタッフ育成研修と幅広いサポートには定評がある。著書に「Q&Aでわかる 小売業店舗経営の極意と労務管理・人材育成・事業承継」(日本法令)がある。