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2016-09-18 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役
松下 雅憲 |
作業効率を上げるために「マクドナルド」が徹底していること
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このコラムのポイント
近年、飲食チェーンでの異物混入やスタッフの調理場でのモラルを欠いた行動などのニュースが大きく取り上げられ、本部企業の存続をも揺るがす問題にも発展しています。 飲食店のチェーン化が進み、調理場に職人を必要としない業態が増えている昨今。中食事業やコンビニの充実で、家庭でもほとんど調理をしない単身世帯も多くなり、飲食チェーンで働くスタッフにも、食品取扱い方や調理場での作法の常識を持たない人が増えています。 このコラムでは、マクドナルドでの意外なエピソードに触れながら、飲食業界のスタッフ教育にとって今後ますます重要な意味をもってくる「調理場での基本」ついて知ることができます。
フランチャイズWEBリポート編集部
調理場の基本を大切にすること
「この包丁は使い終わったら必ずここに戻してください。フライパンはここ、鍋はここです。ちなみにスポンジはここね」
あるホテルのレストランの料理長は、新人スタッフに対して、「道具を使ったら元の場所に戻す」と言う基本中の基本から指導しています。
料理人にとって「料理に使う道具を丁寧に扱う」ことは、当たり前のことです。
ところが、その「丁寧に扱う」ことの意味を十分に理解していないスタッフも多いのです。
そのひとつが「元あった場所に戻す」という基本です。
元あった場所に戻す
これが当たり前であることは、腕の良い料理人でしたら誰もが知っています。
しかし、なぜかこんなあたりまえをきちんと出来ないスタッフもたくさんいるのです。
和食でも、洋食でも、中華でも、この基本は全く同じです。
飲食チェーン店に代表される「ファーストフード」でも「カフェ」でも、実は同じなのです。
「あるべき場所」に、道具が準備される理由
道具をいつもあるべき所にあるようにすると、作業効率が高まります。
あるべき所にないと、いちいち探さなくてはならない為に、作業効率・作業スピードが落ちるのです。
それが原因で、料理が冷めて味を損ねてしまうかも知れませんよね。
元ある場所に戻すこだわりを徹底しているキッチンでは、最も作業効率の良い場所に「あるべき場所」は指定されています。
そう言うことを気にしていないお店のスタッフは、作業効率が「味」に影響することを意識していません。つまり、極論すれば「味について関心が無い」とも言えるのです。
道具を大切に扱う
いつもあるべき場所に戻すと、必要な道具が揃っているかどうかが一目瞭然です。
数の不足・不必要な分があることも、道具のメンテナンス状態まで、把握することが出来ます。
マクドナルドの意外なこだわり
例えば、マクドナルドでは、ハンバーガーのミートを焼くときに使う「グリルスパチュラ」というステンレスの小手のような調理器具があります。
このスパチュラは、一日の作業が終わると、翌日使いやすいように、刃を研いでから元の指定の場所に戻すようになっています。
これが、いい加減な手入れをしていると、美味しいミートを焼くことが出来ないのです。
また、ポテトをすくって紙バックに入れる「バギングスクープ」というアルミ製の道具があります。
これは、アルミ製なので、使っていると少し曲がってしまうことがあります。
しかし、閉店後に洗浄した後、指定場所に戻す際に必ず、正しい形に形を整えているのです。
マクドナルドのスタッフ達が、大量の注文を「高い品質」で「素早く」こなし続けることが出来るのは、調理器具をきちんとメンテナンスし、いつもあるべき所にきちんと戻す習慣が出来ているからなのです。
お客様の立場や新聞記事だけではなかなかわからない彼らのこだわりですが、こう言う細かなこだわりを持つことで、商品に対する品質維持や衛生管理などを徹底することが出来るのです。
食の安心・安全のために
マクドナルドに限らず、多くの店を運営しているチェーン店では、店内で使う道具の管理に非常に気を使っています。彼らはそのことの大切さを理解しているからです。しかし、時折その大切さを忘れてしまうようなお店が出てきます。
例えば、最近のニュースでは…
・消毒用のアルコールをドリンクに入れてしまった
・揚げ物用の油に洗剤を入れてしまった
ビックリするような事故が発生しています。
これらは「道具を大切に扱う」「元ある場所に戻す」という、ごく基本的なことが徹底されていないお店で起こっています。
こうした事故の多くは、こだわりがない・基本を徹底していない為に起こる「ヒューマンエラー」なのです。
料理は「味」だけではなく「安全」も大切な要素です。
新人スタッフの時から、当たり前のことを徹底させるよう厳しく指導しておきましょう。それが、事故を未然防ぎ、美味しい料理を提供し続けることが出来る、最も大切で効果的な方法なんですよ。